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2017-09-20 サステナビリティ イベント
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消費電力あたりの性能を評価する「Green500」で8位

国家プロジェクトを支える、環境負荷の少ないスーパーコンピュータを開発

環境省と国立環境研究所(以下「環境研」という。)、宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」という。)がタッグを組んで取り組んでいる「GOSAT-2プロジェクト」。今後の地球環境保全のあり方に影響を与えるインパクトを秘めているとあって、現在、世界中から注目を集めています。

そのGOSAT-2プロジェクトのアルゴリズム研究・開発を支えるスーパーコンピュータ「※RCF2」の開発を担当したのがNSSOLです。このRCF2は、2017年6月にスーパーコンピュータ消費電力あたりの性能を評価する世界的なランキング「Green500」で8位にランクインしました。

事業を通して地球環境の保全に貢献するNSSOLの技術について迫っていきます。

※ RCF2:「Research Computation Facility for GOSAT-2」の略で、国立環境研究所内のスーパーコンピュータの名称です。

プロジェクトメンバー(写真左から)
兼松 龍之介さん(社会公共ソリューション事業部)
大塚 登志男さん(社会公共ソリューション事業部)
山地 正倫さん(社会公共ソリューション事業部)

いかに低い消費電力で高い性能が出せるかを競う「Green500」

―― 「Green500」で8位入賞はNSSOLにとっても嬉しいニュースでした。

本システムの運営者でありユーザでもある環境研の担当者の方とともに、私たちもドイツでの発表に立ち会い、お互いに喜びを分かち合うことができました。

2010年にも前プロジェクトの「GOSAT RCF」で10位を獲得していましたので、今回はその上をいく8位をとることができて安堵しています。

―― そもそも「Green 500」とは、どのようなランキングなのでしょうか。

「Green500」は、スーパーコンピュータの性能を消費電力あたりの性能でみる、世界的なランキングです。6月はドイツでISC(International Super Computing)、11月はアメリカでSC(Super Computing)という世界的なカンファレンスがあり、そこで発表されるランキングになります。
計算機の性能を競うTop500にランキングされたスーパーコンピュータの中で、消費電力あたりの性能を競うのが「Green500」です。

GOSAT-2プロジェクトとスーパーコンピュータ

―― 入賞したのは「GOSAT-2プロジェクト」のスーパーコンピュータ「RCF2」とのことですが、まず、「GOSAT-2プロジェクト」とはどのようなプロジェクトなのでしょうか。

温室効果ガスの排出量分布などを明らかにしていくGOSAT(温室効果ガス観測技術衛星、Greenhouse gases Observing SATellite)プロジェクトの後続プロジェクトになります。人工衛星で観測したデータを解析することによって、二酸化炭素とメタンの地球全体での分布や、これらの温室効果ガスが地球上のどの地域で排出され、吸収されているかといった収支について知ることができ、将来の気候変動予測の高度化や炭素排出削減施策などの温暖化対策の基礎データとして活用を期待されています。また、PM2.5やブラックカーボン(黒色炭素。煤などを指します)の大気中濃度を推定することにより、大気汚染監視への貢献も目指しています。

この人工衛星「GOSAT」とは愛称「いぶき」のことですが、こちらの方がみなさんはよくご存知かと思います。

―― なるほど、「いぶき」のことなのですね。

そうです。現行機の「いぶき」は2009年に打ち上げられていて、現在開発されているのは「GOSAT-2(いぶき2号)」と呼ばれる二号機です。2018年度中の打上げを目指し、環境省、環境研、JAXAの3者で開発が進められています。

―― 「いぶき2号」とスーパーコンピュータは、どのように結びついてくるのですか。

「いぶき2号」で観測されたデータは、JAXAにて受信・一次処理をされ、環境研に設置された処理設備に送られてきます。「いぶき2号」が地球をグルグル回りながら撮影したデータはそのままでは人間の目で認識できる形にはなっておらず、これを人間の目で認識できるようにしたり、温暖化対策等を検討するのに意味のあるデータに加工する必要がありますが、日々取得されるデータは非常に膨大な量になります。この膨大なデータを処理するためのアルゴリズム(方法)やソフトウェアの研究・開発でスーパーコンピュータを利用しています。従来のシステム(GOSAT RCF)では1年分の全球観測データの温室効果ガス濃度分布推定に1ヶ月程度かかっていた処理時間が、今回のシステム(RCF2)では6.5日程度と1週間かからずに行うことができるようになり、高度なアルゴリズム検討、ソフトウェア開発において大幅な時間短縮を実現できます。ここで開発されたソフトウェアによって、普段私たちが目にするような衛星画像に加工され速やかに公表することが可能となるのです。

―― スーパーコンピュータというと、大きな筐体のコンピュータというイメージですが。

おっしゃるように、昔は1つの大きな箱で計算能力がすごく高いコンピュータをスーパーコンピュータと言っていましたが、現在のスーパーコンピュータは、サーバーをいくつも組み合わせて、あたかも1台のスーパーコンピュータのように見せて、大きな計算能力を発揮させているものが主流です。また、スーパーコンピュータのサーバー部分だけでなく、ストレージやネットワーク部分も組み合わせて、システム全体で性能を出すことが求められます。

―― サーバーやストレージ、ネットワークの組み合わせというとSIerであるNSSOLが昔からやってきた、いわば得意技ですよね。

はい、その技術が今、スーパーコンピュータと呼ばれるような性能を発揮できるシステムにまで応用できるようになってきています。

今回のRCF2も、我々がSIerとしてサーバーやストレージといった構成要素を選定し、望まれる計算性能を実現しました。

NSSOLが開発したスーパーコンピュータ「RCF2」

―― どれくらいの性能を実現したのでしょうか。

今回、システムを利用される環境研の皆様と共に目指したのは、は、1PFLOPS(1ペタフロップス)の計算性能になります。FLOPSとは、コンピュータの処理能力の単位で、1秒間に浮動小数点演算を何回できるかという能力を表します。P(ペタ)は、1,000兆を表す国際単位基準に基づく接頭辞のため、1PFLOPSとは、1秒間に1,000兆回の計算を行えるということを表しています。

―― なるほど。そうした高い性能を出すためにサーバーを連携していくと、消費電力も上がると思うのですが、今回、8位に入賞できた一番のポイントはなんだったのでしょうか。

「目標値を達成するために、どの部品をどう組み合わせれば、性能と低消費電力を両立させられるか」という基本構成の部分だと思います。最新の製品を導入するほど、性能も上がりますし、消費電力も抑えられますが、その組み合わせが重要になります。
私たちは、各製品ベンダーと密な関係を構築するなど、普段から製品の最新情報をいち早くキャッチし、それを検証した上でシステムへ実装・安定稼動させることができる体制を整えています。

―― その他にも消費電力を抑える方法はありますか。

ひとつにはサーバーやストレージなどの各構成要素の並べ方やラック内での配置の仕方です。単に並べ方と侮るなかれ、これが結構重要になります。

―― 並べ方ですか?

そうです。処理量が多いサーバーやストレージからはかなり高い熱が出ます。あまり熱がたまりすぎると機器が壊れてしまうほどです。こうした余分な熱を取り除いて効率よく冷気を送り込めるようなサーバーなどの配置が大きなポイントになります。

その他にも、空調シミュレーションにより無駄な空調を置かないといったことや、サーバーの稼働状況を常に監視し、使用しないサーバーを停止する仕組みを入れたりしています。

重要性を増す環境保全に事業を通して貢献

―― そうした努力が「Green 500」で8位という結果にも結びついていくのですね。お客様からNSSOLに対する期待はどういったものになりますでしょうか。

われわれは、前プロジェクトである「いぶき」の時からスーパーコンピュータの開発、運用に携わらせていただいています。

今、日本の「いぶき」は、NASAが運用している温室効果ガスを観測する衛星や、ヨーロッパで打上げを予定している衛星などと連携し、世界的な枠組みで温室効果ガスを観測していこうとしています。「いぶき」で観測されるデータの役割は、日々高まっており、お客様からは、「いぶき」に引き続き、後続プロジェクトである「いぶき2号」で使用するRCF2も支えて欲しいというお言葉を頂戴していますし、我々はその期待に応えていきたいと思っています。

―― 地球環境保全活動にNSSOLの技術が貢献しているというのは誇りに感じます。ありがとうございました。

【参考】
(プレスリリース)NSSOLが国立環境研究所に導入したスーパーコンピュータが省エネランキングで世界第8位に
(参考情報)新日鉄ソリューションズが導入した、国立環境研究所衛星データ研究解析用システムがGreen500 Top10にランクイン

広報・IR室 プロフェッショナル 鹿島 亜紀彦

当社のビジネスを通じて地球環境問題に貢献できることを嬉しく思います。

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