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2021-10-01 IoT DX データ活用
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システム研究開発センター 研究成果発表会を実施【前編】

~DX推進に資する技術とは~(データ活用分野)

NSSOLシステム研究開発センターは「研究成果が実用的であること」をポリシーとし、3年後のビジネス化に向けて最先端技術の研究開発を行っています。2021年春実施の研究成果発表会では、研究成果とともに実際のビジネス現場での適用事例を発表しました。本コラムでは、前編・後編に分け、その内容をお届けします。
前編では、南所長による全体概要および「データ活用分野」の研究テーマ内容を紹介します。

【全体概要】

はじめに、NSSOLのDXの取り組みとそれを技術面から支えるシステム研究開発センターの紹介、今回の成果発表の内容について、技術本部システム研究開発センター所長の南悦郎から説明がありました。

【発表動画】全体概要はこちら

【データ活用分野】

NSSOLでは、データ活用を通したDX推進において、データの収集⇒分析⇒活用⇒改善のサイクルの継続的繰り返しを通して、データ活用の高度化や適用領域を広げていくことが重要と考えています。今回紹介する「デジタルツイン」「最適化」「データマネジメント」はこのデータ活用ライフサイクルを支え、データ活用によるDXを実現するための取り組みです。

テーマ1.現場が見える、触れる デジタルツイン

鈴木 博喜 システム研究開発センター 統括研究員
井上 和佳 IoXソリューション事業推進部 専門部長

デジタルツインとは、現実世界のモノをデジタル世界の中に忠実に再現する技術であり、デジタル世界の中で現実に即したデータの俯瞰やシミュレーションによる活用が期待できます。私たちはこの技術を製造現場に適用するための研究開発に2015年から取り組んでいます。

製造現場では、作業員、エンジニア、あるいは経営層といった役割ごとに見ている範囲が異なるため、それぞれの立場によって現場認識が違うという問題が依然として生じています。こうした問題に対しデジタルツインを導入することにより、全員が製造現場のリアルな状況を共有できるようになります。

NSSOLではこのデジタルツインの技術を、広大な敷地を持つ屋外での製造現場で働く作業員の安全管理に適用することで作業員の安全を現場全体で見守る仕組み「安全見守りくん」として実現しています。

安全管理では作業員が今どこにいるのかといった位置情報は重要です。その測位技術として、屋外においてはGPSが一般的な技術として適用が進んでいます。一方屋内においてはスタンダードな測位技術は未だ確立されていません。そうした中で私たちはNFC(近距離無線通信)による絶対位置測位技術とAR(拡張現実)技術による相対位置測位技術を組み合わせることで、好条件下であれば測定誤差1m以内という高精度で屋内位置測位可能な技術を開発しました。この技術はスマートフォンとNFCカードさえあれば導入でき、事前学習不要で運用コストも抑えられるため手軽に利用できます。私たちはARを用いた測定手法について2020年度に日本製鉄の一部の現場での効果検証を行い、2021年度からは各製鉄所に導入する安全見守りくんへの随時適用を予定しています。安全見守りくんは環境の見守りや設備の見守りなど安全以外の目的でも導入実績を増やしています。

今後は、現場ごとのデジタルツインを高速に構築するためのプラットフォームや、デジタルツイン上で最適化、AI技術によるシミュレーションを行うことでデジタル世界上の未来予測を可能にする技術開発に取り組んでまいります。

【発表動画】デジタルツインはこちら

テーマ2.人と協調できるAI 最適化技術

塩見 雄佑 システム研究開発センター 統括研究員
永井 秀稔 DX&イノベーションセンター プロフェッショナル

最適化技術は、計画やスケジュールなど今後どうするかを決める際に役立ちます。システム研究開発センターの最適化の研究開発は、日本製鉄の製造現場における多種多様な計画業務の支援を起源とし、すでに30年の歴史があります。現在ではその知見・経験を活かして、様々なお客様へ最適化ソリューションを展開しています。

アルゴリズムや計算機の進化により実用的な時間で最適な解が得られる最適化問題は増えています。しかし製造業の計画やスケジュールではコストや納期など複数の指標があり、どの指標を重視するかは市況の変化とともに変わるだけでなく在庫や注文など足元の状況によっても変わるため、最適化システムから得られた最適解は業務における最適ではない場合があります。最適化システムを用いた計画業務では、計画担当者が得られた解から業務における最適解に調整できる必要があり、そのためには解の納得感・説明性が重要になります。解の納得感・説明性が担保されていない従来にありがちな仕組みでは、計画担当者が得られた解のどこをどのように修正するべきか判断できない、あるいは計画を一から作るよりも苦労することがあるため、使えない、使い続けられないシステムとなってしまいます。

使い続けられる最適化システムという観点では解の納得感・説明性の他にも、最適化モデルを継続的にメンテナンスして適正な状態に保ち続ける必要があります。一方で、実用化後も最適化モデルをメンテナンスできる専門家が常に対応できる体制を作ることは簡単ではありません。これに対しては、データ活用によって解決することが世の中から期待されています。例えば、機械学習のようなAI技術を活用することで計画担当者のノウハウを学習し、最適化モデルを持続的に自動チューニングする仕組みが出てきています。しかしAI技術は計画立案業務ではまだ万能ではなく間違ったモデルになる可能性があります。また環境変化への追随は即時性を求められますが、AI技術による学習では即時対応ができません。したがって最終的には人が確認・修正を行い、意思決定する必要があります。

こうした状況に対し、システム研究開発センターでは、人が最終的な意思決定者であることを前提に「人とシステムが共存した形」での解決を考えました。計画担当者自身が理解可能なホワイトボックスな最適化モデルによって解の説明性を担保すること、またモデルに問題点があればそれを特定し改善する手助けをする仕組みを提供することで、計画担当者による持続的な最適化モデル改善が実現できると考えています。現在はこの仕組みを実現するための分析ツールにフォーカスをあてて研究開発を行っています。

【発表動画】最適化はこちら

テーマ3.必要なデータを届ける データマネジメント

福冨 正弘 システム研究開発センター 主務研究員
蒋 偉 DX&イノベーションセンター エキスパート

データ活用ライフサイクルを円滑に回すために重要となる、ユーザーに必要なデータを届けるための取り組みである「データマネジメント」についてご紹介します。近年のデータ活用の現場では、サービス・組織横断での全体最適化や、ビジネススピードの向上に合わせた短期間でのデータ活用プロトタイプ作成といったニーズが高まっています。そのため、ユーザーが必要とするタイミングで、継続的に、利用しやすい形に整備してデータを提供することの重要性が高まっています。これらの取り組みや仕組みづくりのことを「データマネジメント」といい、多くの企業で取り組みが始まっています。

しかし、データマネジメントを成功させることは簡単ではありません。その原因として、例えばデータマネジメントに必要な体制検討が十分なされていないこと、作業の自動化・省力化ができていないことなどがあげられます。よってNSSOLでは「プロセス」と「技術」の両輪からの支援が必要だと考えています。

「プロセス」においては、DX&イノベーションセンターや各事業部が中心となり、お客様側のデータ利用者や情シスなどのデータ提供者、部門マネージャーや場合によっては経営層とも複数回にわたって議論し、それを通してステークホルダー間での課題共有と共通のゴールの形成を図っていきます。加えて、具体的な実施プラン検討においても、人、ポリシー、プロセス、IT技術の観点での実現手段の検討や、ユーザーの協力を得られるような理解度向上施策やメリットを実感してもらう取り組みなどの検討を実行しています。

「技術」においては、システム研究開発センターが中心となり技術開発に取り組んでいます。技術開発の対象となる課題は多岐にわたりますが、例えばデータの前処理に時間が掛かる、個人情報や機微情報を含むため活用できる用途に制限がある、データの意味を把握するのに時間が掛かるなどといった課題があります。本発表では、この中から「自然言語処理と機械学習による、データ前処理の自動化・省力化」と「安全なデータ流通のためのデータセキュリティー」について具体的な事例をあげながら紹介します。

【発表動画】データマネジメントはこちら

後編では、「アジリティ分野」の研究テーマを紹介します。

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