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2016-02-23 イベント
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沖縄オープンラボラトリでの「ネットワークテスト自動化システム構築」プロジェクト

「Okinawa Open Days 2015」の概要

「Okinawa Open Days 2015」は、SDN(Software-Defined Networking)とクラウドの技術を融合した利用価値の創出と発信を行うカンファレンス&展示会のイベントです。3回目の開催となった今回は、2015年12月14日(月)から18日(金)まで沖縄県那覇市で開催されました。主催は、一般社団法人沖縄オープンラボラトリです。

このイベントは、沖縄からの情報発信と意見交換の場をつくる国際会議です。今回は3年間にわたる沖縄オープンラボラトリの活動の集大成という意味もあり、オープンソースを中心としたSDN技術と、国内とアジア各国のネットワーキングの接点を持てる場が設けられました。

当社は沖縄オープンラボラトリの賛助会員としてラボの研究開発プロジェクトのうちのひとつを担当しており、「Okinawa Open Days 2015」ではシステム研究開発センター システム基盤技術研究部の萩原学さんが「OpenFlowを使ったネットワークテスト自動化システムの構築」というテーマで講演を行ないました。

今回は、萩原さんに沖縄オープンラボラトリに参画した経緯や、2015年に行ったプロジェクトを中心にお話を伺いました。

「ネットワークテスト自動化システムの構築」プロジェクト

―― まず、沖縄オープンラボラトリに参画した経緯を教えてください。

 沖縄オープンラボラトリ(以下、ラボ)は、次世代のICT基盤技術の実用化や普及を目的に2013年5月に設立された一般社団法人です。クラウドとSDNをキーワードに、いろいろな研究活動を行っていると聞いて、第1回目のカンファレンスに参加しました。

この時感じたのは、「おもしろそうな話ができそう」と同時に「我々のチャンスが広がりそう」ということでした。というのも、ラボの賛助会員はメーカーや通信事業者が中心で、当社のようなSI事業者はほとんどいませんでした。もし、ラボに我々のユースケースを出すことができれば、当社とは違う立場の人たちと意見交換ができるだろうし、共同で研究開発したりすることもできるかもしれないと思ったからです。

―― 萩原さんが、ラボにプロジェクトを持ち込まれた経緯を教えてください。

 ネットワークテストの自動化については、社内で取り組むつもりでいましたが、ふと「ラボに持ち込んだらどうだろう」と思いつきました。ラボの会員と共通する課題を検討したり、一緒に開発・検証してくれる仲間を集めることができるかもしれないと期待したからです。

そこで、2015年のはじめ頃に企画書を書いて、ラボに提出しました。当社のネットワーク系の事業は、規模が大きいわけでもなく、SDNに関しても人が多いわけでもありません。いろいろな人から話を聞いてみたい、とラボ側にお願いをして、賛助会員に声をかけてもらい、最終的に興味のある8社が集まりました。

―― 今回のプロジェクトは、ラボにとってどのような意義があったのでしょうか?

それまでラボでは、メーカーやベンダーが自社製品を持ち込んで検証するケースが多かったようです。ラボの本来の目的は、ラボに参加している会社・エンジニアが、ラボを使って研究開発・交流・コラボレーションをすることです。また、ラボの設備や人材を、会員にもっと活用してもらいたいという思いもあったようです。ラボ側からは、今回私が持ち込んだ企画によって、「共同でプロジェクトができてよかった」と言っていただきました。

―― プロジェクトの具体的な内容について教えてください。

情報系のシステムは、ネットワークがつながっていれば、どの場所からでも操作することができます。しかし、ネットワークを作る部分では、そうはいきません。そもそも、正しくネットワークにつながっているのかを確かめるために、その場に行って機械を触る必要があります。人や機材の移動や設置にはコストがかかります。このようにテストを行う以前の問題もあるのです。そこで、プロジェクトの参加者に対して、ネットワークテストの課題についてヒアリングを行い、課題設定から始めました。次に、ヒアリングで出てきた課題を改善するための自動化システムの施策をいくつか立てています。
遠隔地のデバイスを手作業で操作するためには、エンジニアがわざわざ現地まで行かなければなりません。今回のプロジェクトでは、人が現地に出向いて作業していたことを吸収するような仕掛けを作って、実際に動いたところまでを行いました。2015年4月から企画や検討を始めて、7~9月でシステム開発と実験を行い、報告書の取りまとめが10月くらいでした。

プロジェクトの内容は、プロジェクトに参加している企業向けには発表していましたが、それ以外では発表をする機会がなかったので、12月のカンファレンスに合わせて公開していこうと11月に調整しました。今回のカンファレンスで20分くらいの講演をしましたが、プロジェクトの内容を公にしたのは初めてです。講演の模様は、YouTubeにラボから公開される予定になっています。

PoCターゲットの設定に苦労

―― プロジェクトに参加した企業ごと、検証ポイントに違いはありましたか?

それぞれの企業による違いはありましたね。メーカーは「機械が動くこと」にフォーカスし、当社のようなSIerは、「さまざまな機械をつないだときに、動かしたいサービスが成立するかどうか」というところにフォーカスしたので、どこをターゲットにするかが難しかったです。最終的には、私の方で、PoCターゲットの範囲を決めました。

※PoC;Proof Of Conceptの略(概念実証のこと)

―― 複数の企業が集まると、意見の取りまとめが大変だったかと想像します。萩原さんとしては想定内の範囲でしたか?

考え方がみなさん違いますので、正直なところ、実証範囲をまとめるのに手間取りました。話を広げると焦点が絞れませんし、全てをやりきることができません。しかし、狭すぎると使いどころがなくなるので、どのあたりまで実証するかを議論しました。ラボ側のプロジェクトマネージャと相談して、企画者側で線引きをしました。

―― 今回のプロジェクトは終わったばかりですが、今後のロードマップを考えていますか?

ラボとしてどうするのかは、まだ決まっていません。現在は、社内の事業部にて、プロジェクトで開発したシステムに興味のありそうな人に声をかけています。実際にシステムをどこかで試してみたいとも思っています。

―― 萩原さんは、普段どのような業務をしているのですか?

私は、もともとネットワークエンジニアです。ネットワーク技術の情報収集を行い、最近では研究企画にも携わっています。研究センターには、「ソリューションテーマ」と「領域テーマ」という2つのテーマがあります。領域テーマは技術寄りです。一方のソリューションテーマは、ビジネスとして何ができるのかを具体的に考えるところです。ソリューションやビジネスについて、こうあるべきという議論をします。
ソリューションテーマは、4つに分かれているんです。その中の一つに、「サービスデリバリーインテグレーションプラットフォーム」というグループがあり、そのリーダーを任されています。研究所の中には、インフラ部隊、データ解析系の部隊、ソフトウェア部隊があります。それぞれの部隊から3人ずつ人を出してリーダーチームを作り、当社のサービスを考えていきます。研究員からアイデアを募集することと、将来どのような方向に向かうのかを検討するという2つのことをしています。

―― 「サービスデリバリーインテグレーションプラットフォーム」とは何ですか?

当社のソリューションやサービスを、研究開発の立場で考えるところです。最近、インフラやソフトウェアだけでは、サービスが成り立たなくなっています。新しいソリューションやサービス提供するときに、いろいろな技術を集める必要があるのです。そのため、研究所の各部隊を横断した活動が必要になってきました。

―― 萩原さんご自身の、今後の展望を教えてください。

私自身は、ラボで今回のプロジェクトの続きをしてみたいと思っています。Okinawa Open Daysの期間中は、次のフェーズに関するミーティングを行う時間がありませんでした。これから一度、ミーティングを行うことになるかと思います。

―― 引き続き、萩原さんがプロジェクトの進行役なのでしょうか?

そのつもりではいます。今年のテーマは、一度クローズしました。ただ、やりたかったことが全部できたわけではありません。今回は、最低ラインのデモンストレーションができるようになった程度です。ここから先、当初検討していた本題、つまり「ネットワークのテストとしてどういうことができると嬉しいか?」という実際の具体的なユースケースの実証に入るところなので、継続させていきたいと思います。

―― ありがとうございました。

関連リンク

一般社団法人 沖縄オープンラボラトリ

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