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2026-04-06 DX
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年間500超の試合日程を自動生成、SVリーグ×NSSOLで“世界最高峰”に向け集客力の高い試合運営を可能に

バレーボールの国内最高峰リーグ「大同生命SV.LEAGUE」の運営組織である公益社団法人 SVリーグは、“世界最高峰のバレーボールリーグ”を目標に、制度改定や地域密着での人材育成などに取り組んでいる。そのためには、よりファンに喜ばれる試合日程の実現が不可欠だ。その年間計画の策定に2025年5月から、日鉄ソリューションズ(NSSOL)が開発した試合日程作成システム「SV.CardPlanner(SVリーグでの呼称)」の利用を始めている。試合日程案の作成にかかる時間が数秒に短縮され、公平性の高い試合日程が来場者の増加といった効果として表れている。SV.CardPlannerの導入の狙いや開発時の思い、今後の期待などをプロジェクト担当者が語った。(本文敬称略)

――バレーボール競技の強化に向け、これまでの「V.LEAGUE(旧Vリーグ)」を発展させるかたちで新たに「大同生命SV.LEAGUE(大同生命SVリーグ)」と「V.LEAGUE(Vリーグ)」を発足させました。

野村 周一朗(以下、野村):SVリーグ 競技運営グループの野村 周一朗です。1994年からの約30年にわたり国内バレーボールでは実業団を主体とした旧「Vリーグ」が運営されてきました。それを世界最高峰のリーグを目指し2024年、運営組織としてのSVリーグが設立されました。SVリーグの「S」には「Strong(強く)」「Spread(広く)」「Society(社会)」の3つの意味が込められています。

SVリーグ 競技運営グループ 野村 周一朗氏

竹内 真(以下、竹内):ジャパンバレーボールリーグ 事務局の竹内 真です。2024年10月に開幕したVリーグは、大同生命SVリーグに次ぐ位置付けのリーグです。大同生命SVリーグは世界最高峰リーグの実現を、Vリーグは地域密着型リーグとして競技人口の拡大や若手/アマチュア選手の育成を、それぞれが目指し活動しています。しかし、Vリーグは2025-26シーズンをもって開催を終了いたします。2026-27シーズンからは新たに将来的な大同生命SVリーグへの参入、さらに、その先の世界最高峰へと大きく“成長・発展(GROWTH)”することを志すクラブから成る「SV.LEAGUE GROWTH(SVグロース)」が開催されることが決まっています。

ジャパンバレーボールリーグ 事務局 竹内 真氏

――立ち上がったばかりの大同生命SVリーグの運営には苦労が多そうです。

野村:とにかく多忙です(笑)。今後の成長に向けて組織の垣根を超えた運営方法の議論が始まるなど、やるべきことが山積しています。誰もが、いくつもの仕事を掛け持ちしており、業務が固まるのはこれからです。その中で懸案事項の1つになっていたのが、開幕した大同生命SVリーグの試合日程の決定に関するものでした。

対戦条件の変更で年間計画の策定が一気に困難に

野村:大同生命SVリーグ、Vリーグともに、レギュラーシーズンのリーグ戦の試合は連続した2日の「節」単位で開催します。ただシーズンを通した対戦カードの決定では考慮すべき点がありますが、リーグ体制の変更に伴って、試合日程作成の制約条件にいくつもの変更が生じました。

その1つが、試合と興行の公平性を担保するために「完全ホーム&アウェー制」の厳密化が規約で定められたことです。さらに、レギュラーシーズンの年間試合数が1クラブ当たり44試合と旧Vリーグより8試合増え、近い将来には男⼦クラブ数の増加も予定されています。

旧Vリーグでは、クラブに10パターンほどの日程案を提示し、各クラブの希望を聞いた後に、開催スケジュールを人手で埋めるというやり方で試合日程を作っていました。ですが、大同生命SVリーグにおける試合数の増加や規約の追加、それに伴う試合日程に関するクラブからの要望も多様化・流動化する中、これまでのやり方では通用しないことは明白でした。

対戦カードを決めるカーディング業務に携わってきた私や竹内などのスタッフは、この状況に危機感を覚えました。これまで手間暇をかけて人手で作成した試合日程でも、どこか偏りがあるとの印象は拭いきれていなかったのですが、それを、より厳しい条件下で作成しなければならない。最初の試合日程案を組むことさえ困難で、複数の案を作成し、どれが良いのかを検討するようなやり方は「とてもできない」と予想できました。

クラブに不利な試合日程はファンの期待に反する

野村:公平・公正な試合日程は、大同生命SVリーグを支えてくれるファンにとっても重要です。応援するクラブが不利な日程で試合を組まれていたらどう感じるか。ファンの期待に反する試合日程は何としても避けたい。この思いから、試合日程作成のシステム化、自動化を考え始めました。

そうした際に思い出したのが以前、動画サイトで見かけた日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が運用している試合日程自動作成システムです。

「これは使える」と直感し、開発元の日鉄ソリューションズ(NSSOL)に2024年の夏頃、相談を持ち掛けました。NSSOLにデモを実施してもらい、解が出る速さに驚きました。多様な制約条件を柔軟に設定できる画面も用意されており「使える」と確信しました。その後の意見交換と開発・導入作業を経て、2025年5月からシステムを本番稼働させています。

樋川 暁(以下、樋川):NSSOL 技術本部 システム研究開発センターの樋川 暁です。当社では長年にわたり、多数の選択肢の中から、制約条件を満たしつつ評価点が最も良くなる組み合わせを見つける「組合せ最適化問題」に取り組んできました。製鉄業における生産計画の立案を対象に培ってきた技術ですが、試合日程自動立案システムも、この組合せ最適化問題を解く技術を用いて開発しています。

NSSOL 技術本部 システム研究開発センター デジタルツイン研究部 主務研究員 樋川 暁氏

樋川:最適化システムでは、業務要件を数理モデルに置き換え、計算結果から最適な組み合わせを導き出します。重要なのは、モデル化そのものではなく、実務で使える計画案となるように、本番業務での利用場面を想定しながら条件を適切に整理し設定として落とし込むプロセスです。

SVリーグから試合日程作成を相談された際も、打ち合わせを通じて、規約に基づく条件を1つひとつ確認していきました。同時に、それまで条件として明確に認識されていなかったルールも洗い出し、SVリーグ向け試合日程自動作成システム「SV.CardPlanner」を作り上げました。

野村:先にお話ししたように将来的なクラブ数は固まっていません。一方で、年間のレギュラーシーズンは1クラブ22節44試合で決まっています。そのため相手クラブによって対戦数に違いが生じます。ほかにも、システムの仕様検討時点では「東西カンファレンス制」や「交流戦」の開催など未確定要素が多い中で、どのような開催方式になっても試合日程が作成できるように、SVリーグ独自の対応を依頼しました。

試合日程が組めない原因を特定・通知する機能を用意

――システムを使っての試合日程決定までの流れを教えてください。

野村:最初にSV.LEAGUE WOMEN、SV.LEAGUE MENなど大同生命SVリーグに参加するクラブ、年間の試合開催スケジュール、開催方式のデータを入力します。その後、各クラブへのアンケート結果に基づく試合会場の確保状況や個別の試合要望のデータをシステム上で設定し、SV.CardPlannerに取り込みます。ただ制約条件が増えるほど、条件間の矛盾も生じやすく、解が出ない、つまり試合日程が成立しないケースが増えてしまいます。

竹内:端的な例が、シーズン開閉幕時の会場です。原則として開閉幕カードはホームとアウェーが交互になるように組みますが、ホーム会場の多くは自治体の公共施設です。他団体のイベントがあれば会場を押さえられず、ホームゲームを開催できません。その場合は、あえて例外を認めることで試合日程を組むようにしています。

酒向 亮(以下、酒向):NSSOL 技術本部 システム研究開発センターの酒向 亮です。大同生命SVリーグは、1クラブ22節44試合と試合数が多く、考え得る対戦カードの組み合わせの数も、男子は10の約70乗、女子は10の約100乗と膨大です。さまざまな制約条件を全て満たそうとすると解が出ない場合もあり、その際は試合日程の、どの部分で、どの条件のために解が出ないかを特定する必要があります。

NSSOL 技術本部 システム研究開発センター デジタルツイン研究部 研究員 酒向 亮氏

酒向:この点を踏まえSV.CardPlannerでは、条件を満たす解が存在しない場合は、矛盾する条件を特定し通知する機能を用意しました。解が出ない原因になっている条件を計算し、どの条件を調整すれば解が求められるのかを提示します。ただ、システムでは、どの条件を調整すればよいかを特定するにとどめ、実際にどの条件を調整するかは、クラブと直接交渉する担当者が決める仕組みにしています。

野村:制約条件を緩めることで解、つまり試合日程を導き出せるのですが、それで終わりではありません。条件の中にも優先順位の高低もあれば、同一チームとの対戦間隔は、できる限り長い方が望ましいなど、興行としての面白さなども考慮しなければなりません。それらを勘案しつつ、試合日程の公平性のバランスが最大限に取れるよう、緩める条件を変えながら最終決定に至るまで調整と確認を繰り返していきます。

人手では試合日程が組めず“作り直した”無駄も一掃

――実際に利用して業務は改善されましたか?

野村:初めてシステムを試したのは半分ほど出来上がったころでしたが、その時点で結果が出るまでの速さには驚かされました。わずか数秒で制約条件を満たす試合日程が出力されたのです。試合日程が組めないケースもありますが、解が出ない時の原因も数秒ほどで表示されました。人手で試合日程を組んでいた頃は、ほぼ組み上がった状態までこぎつけても、最終的に条件の一部が成立せず「最初から作り直し」といった苦い経験をしていましたが、その無駄は今回のシステム化で抜本的に解消できました。

樋川:自動立案や画面などの基本機能はすでに存在していたので、それらに手を加える形での開発は、比較的困難なく進められました。ただ、SVリーグに固有の新たな要件も少なくなく、試合日程成立の複雑さは増しています。

そこで、考慮事項と実行時間のバランスが取れるよう、SV.CardPlannerでの試合日程作成は段階的に進めるフローにしました。まず大同生命SVリーグ男子の試合日程を決め、その結果で確定する会場の制約条件などを前提に、大同生命SVリーグ女子、SVグロースと順に試合日程を作成していきます。

本番業務で解が出ない場合は、条件の緩め方を野村氏と相談しながら、試合日程の最終確定までに各クラブの要望をできる限り多く取り込めるよう、知恵を絞りました。

米川 峻矢(以下、米川):NSSOL 技術本部 システム研究開発センターの米川 峻矢です。SV.CardPlanner ではUI(User Interface)周りを主に担当しました。

NSSOL 技術本部 システム研究開発センター デジタルツイン研究部 研究員 米川 峻矢氏

米川:試合日程作成の過程は試行錯誤の連続です。解が出たとしても、その良し悪しを文字情報だけから見つけるのは困難です。

例えば今回は「同一対戦カードの試合間隔を基準値以上確保する」というルールがありました。システムは条件を満たす解を見つけますが、対戦カードごとに公平に確保されているかまでは分かりません。そこで、試合間隔などを視覚的に把握できるよう、試合日程の確認画面では対戦カードごとに色分けして表示するようにしています(図)。広報業務などの支援に向け、策定結果を広報用フォーマットに整えて出力する機能なども実装しました。

図:SV.CardPlannerの画面例。色分けによって同一カードの対戦間隔や制約が満たされない原因が直感的に把握できるように工夫した

楽しみ、喜んでもらえる試合日程作成の必須ツールに

――導入効果をどう捉えていますか。

野村:2025-26シーズンの試合日程作成から利用を開始していますが、もっと前から使いたかったというのが実感です。最終的に考慮する制約条件は当初の想定よりも複雑化しましたが、回答が出るまでに数秒、厳しい条件でも2分ほどで回答が得られます。条件設定を変えることで5パターンほどの試合日程候補が容易に得られ、どれを選ぶかを逆に悩むほどです。

例年4月に次のシーズンに参加するクラブが決まります。その最終決定から試合日程確定までの期間は以前と大きくは変わっていませんが、労力は8~9割は削減できています。結果、プロスポーツとしてテレビ放映の有無なども考慮した、ファンにより楽しんでもらうための試合日程案の検討に時間を割けるようになりました。人力で組んでいたころに味わった「何とか埋まった」という経験は、もう懲り懲りです(笑)。

竹内:昨シーズンに比べて、大同生命SVリーグの試合で満席になる会場が増えたと感じています。注目されるカーディングのための試合日程の検討に多くの手間をかけられるようになったことも、その一因だと思います。観客が多ければ当然、クラブの収益にも確実に寄与します。

今後、試合日程をより早く出せるようになれば、クラブが仮押さえしていた会場のキャンセル料の抑制にも貢献するはずです。ホームゲームでのイベントの段取りも立てやすくなります。そうしたシステム化のメリットが今、参加クラブの間にも伝わっているところです。

野村:現状のシステムは10点満点で10点と十分に満足しています。ただ、取り巻く環境は変わり続けます。参加クラブの増加はもちろん、バレーボールの国際スケジュールが変更になる可能性もあります。そうなればリーグのシーズンの考え方も変わります。NSSOLには、そうした新たな要望への対応を引き続きお願いしたい。より高いレベルで応えてもらえると確信しています。

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