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2020-05-19 DX データ活用 イベント
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研究所×事業部の混成チーム 祝!PWS Cup 2019総合2位&匿名加工賞をダブル受賞

左から、大谷裕昭さん、松藤ちひろさん、中川拓麻さん、大関晃一さん

組織や分野をまたいだビッグデータ活用のニーズが高まる中、プライバシー保護とデータの有用性確保の両立を実現する「匿名加工技術」が注目されています。2014年からこの分野の研究を進めているシステム研究開発センターは、社会公共ソリューション事業部とともに7人のメンバーで「PWS Cup(匿名加工・再識別コンテスト)2019」に挑み、見事入賞。メンバーの社会公共ソリューション事業部の大関晃一さん、松藤ちひろさん、大谷裕昭さん、システム研究開発センターの中川拓麻さんに、大会に挑んだ経緯、実案件やソリューション企画でも発揮した組織横断のチームワークなどを振り返ってもらいました。

有用性と安全性の両立を追求

――まずはダブル受賞、おめでとうございます!

中川:ありがとうございます。匿名加工技術を競い合う「PWS Cup(https://www.iwsec.org/pws/2019/index.html)」は、2019年で5回目の開催を迎えました。シス研は第2回大会から毎年参加していますが、事業部との混成チームで挑んだのは初めてだったので嬉しいです。今回は国内外から21チームが参加していましたね。

大谷:大会では、まず本部から提供されたデータに各チームが匿名加工を施し(匿名加工フェーズ)、次に、その加工されたデータからどの程度情報の復元が成功するか(ID識別・トレース推定フェーズ)を、同じく参加全チームで競います。加工が堅牢であっても、有用性が失われていてはデータとしての価値は毀損しますから、そのあたりのさじ加減が技術の見せ所です。

大関:これまでの最高順位は3位だったので、今回、何とか今までの最高位の結果を出したいと意気込んでいました。結果は、総合2位と匿名加工賞を受賞。優勝こそ逃しましたが、貢献できたのではと満足しています。

新領域に挑んだ社会公共SOL

中川拓麻さん

――今回はなぜ、混成メンバーで臨んだのですか?

中川:実案件でのつながりからの流れでしたよね。

大谷:そうでしたね。社会公共SOLは、官公庁のインフラ構築をメイン事業としていますが、新たな領域に踏み出し、お客様と一緒にイノベーティブなビジネスに取り組んでいこうとチャレンジしています。デジタル領域の新規事業を開拓していこうと、ソリューション企画開発部という新しい組織もできました。

大関:そんな時、国レベルで官民データ活用推進基本法の施工や個人情報保護法の改正など、個人データ活用の領域が動き始めたことを受けて新しいビジネスを興せないかという話になりました。ただ私たちにとってはデータに関するテクニカルな深い領域は未経験でしたから、同分野に強いシス研のメンバーに声をかけた、というのがそもそもの始まりです。

中川:シス研の使命は「3年後に実際のビジネス現場に役立つ技術」の実証研究です。ビッグデータに関しては、第一人者である大坪さんが2009年頃から「Hadoop」の研究を開始するなど知見を蓄積していました(※)が、一方で、シス研だけの力では現場に適用できる技術開発には限界があることにも気付いていました。

※技術動向)データ流通時代を支える匿名加工技術

大谷:そうしてタッグを組んで挑んだのが、全国の医療機関や自治体から集めた医療情報の第三者提供を行うための基盤構築の案件(※)です。Hadoopベースの大規模データベースを構築し、提供先のニーズに合わせて個別に匿名加工を施せるエンジン「匿丸(とくまる)」を導入しました。

※事例)医療情報の安心安全な研究利用を目指し 匿名化技術とHadoopで基盤を構築

大谷裕昭さん

――そのようなチャレンジをされていることに驚きました!

大関:そうですよね。これまでとは異なり、お客様は官公庁ではなく、事業会社。しかも、医療情報のビッグデータ活用を進める官民共同プロジェクト。シス研との連携プロジェクトもこれまであまり経験がなく、どれもこれも新しいことばかりでした。

中川:そうして無事基盤が完成し、PWS Cupも一緒に挑もうと、自然な流れでお誘いしたのでしたね。

大関晃一さん

あくまで、お客様が喜ぶものを

中川:大会では、ID識別・トレース推定フェーズの前に、匿名加工フェーズで作成したいくつもの加工データの中から、最終的な提出データを1つに決めなくてはいけません。そこで私たちは、相手チームからのあらゆる攻撃(復元)手法を予測して何度もテストを行い、結果、いくつかの優れた加工手法を絞り込むことができました。ただ、最後の候補が高い水準で拮抗していて…決め手が難しかったんです。

大谷:その時、「お客様が喜ぶ、最も現場で活用してもらえそうなデータで挑もう」と、私たちはシス研のメンバーに提案しました。大会で勝つことも当然大事ですが、やはり社会に役立ってこその技術です。それが、いつも仕事で心がけていることでもあり、当社が大事にすべきスタンスではないかと思ったのです。

中川:プレゼンでもその意図はしっかりアピールしましたね。それが評価されたかは分かりませんが、だからこその結果だと誇りに思います。

――素敵です!今回は新入社員もチームメンバーに加わってくれたのですよね。

大関:チームメンバーをどうしようと思っていたら、部内の新人に数学的思考力を持った子がいるなと。実は事業部内の研修期間中だったのですが、無理を言って調整してもらったんです。お試しで1週間ほど参加してもらったのですが、それが思っていた以上の才能の持ち主で。あまり大きな声では言えませんが、結局最後まで大会に参加してもらうことになりました(笑)。

松藤:数学専攻だった学生時代の知見は匿名化技術で活かせると言ってくれたものの、全くの素人ですし、実務も未経験だったので、最初はとても不安でした。

中川:新人ならではの率直な意見がとても助かりましたし、斬新なアイデアをたくさんもらえて、正直、驚きました。

松藤:チームの雰囲気が和やかで、意見を言いやすかったことが大きいと思います。実務に入る前にこれから一緒に仕事するメンバーとこうした経験ができたことは、これから仕事を進める上でもとても良い経験でした。

松藤ちひろさん

様々な領域への展開を目指すNSDDD

――今後はどのようなことを予定されているのでしょうか?

大関:構想は結構前からあったのですが、シス研と共同で開発したデータ流通に必要な要素をパッケージングしたサービスの展開を進めようとしています。それが2019年の9月にリリースした「匿名加工データ流通ソリューションNSDDD(エヌエスディースリー)」です(※)。

中川:NSDDDは、データ提供者と利用者をつなぎ、匿丸に加えて、秘密分散ファイルシステム「秘衛門(ひえもん)」や事前に入手可能なデータを確認できるカタログなど、それぞれが必要な機能を提供するプラットフォームです。

大谷:データ流通はどの業界でも注目されています。今後は、金融、流通など様々なBUと連携し、ビジネス展開できればと考えています。

研究所×官公庁担当部門が未来のために集まり生み出した、NSSOLの匿名加工データ流通ソリューション「NSDDD」(エヌエスディースリー)

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