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2019-01-25 DX 働き方改革
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「くまのぬいぐるみ」が会議をファシリテート

~今ある課題を既存のテクノロジーでどう解決するか~

NSSOLのシステム研究開発センター(以後、シス研)では、最先端の技術を研究することで、数年先のビジネスに活かす取り組みを行っています。その中のひとつがロボットです。オフィスでロボットが人と働くとはどういうことか。システム研究開発センター 笹尾 和宏さんに話を聞きました。

「くまのぬいぐるみ」が会議をファシリテート

―― 笹尾さんが開発された会議を進行してくれる「くまのぬいぐるみ」が、話題になっているようです。

笹尾:ありがとうございます。まだ正式にはリリースをしていないのですが引き合いはたくさんいただいています。

―― ファシリテートしてくれるくまのぬいぐるみとはどういうものでしょうか。

笹尾:こちらの動画で簡単に紹介していますので、ご覧いただけるとイメージがつかめると思います。

実験会議室の動画(1分13秒)

―― クマが会議の進行をしています。かわいいですね!これはどういう仕組みになっているのでしょうか。

笹尾:くま自体は、スピーカーがついた市販のぬいぐるみを使っています。このくまとパソコンをつなげることで出席者の名前を読み上げたり、議題や目的を提示したり、会議時間のタイムキープなどをしたりする他に、音声認識や位置を測定することで、出席者の発話量の測定や発話している人の位置を特定して誰がどれくらい発言しているかを把握して会議が効率よく進むようにします。

―― すごいですね。ぬいぐるみ以外は笹尾さんが開発したのですか?

笹尾:はい。アプリケーションはもちろんですが、位置の測定や音声を認識する仕組みも市販のセンサーなどを組み合わせて組み込んでいます。

―― そうしたハードウェアの部分も手掛けたのですね。いつ頃開発したのですか?

笹尾:この動画のくまは2017年に、当社の営業職の女性(以下、営女)が『新世代エイジョカレッジ 2017』(主催:ChangeWAVE社)に参加したときに開発しました。

―― 「新世代エイジョカレッジ」とは?

笹尾:さまざまな企業から選出された営女たちが、具体的な働き方改革案を提言して順位を競うものです。そこに当社の営女たちが参加するにあたり、働き方を変えるようないいアイデアはないかと相談されたときに、私がいろいろとアイデアを出した中から「これがいい!」と選ばれました。

―― このくまで働き方改革ができますか?

笹尾:実は実証済みです。エイジョカレッジで提案する働き方改革案というのは実証実験などを経て実効性のあるものでなければならないので、私たちも効果を測るために実際に会議室にくまを置いて、その会議室を利用する社員に使ってもらい、使ってみてのアンケートをとりました。その結果、会議が効率的に進められるということが実証されました。


アンビエントな社会に向けた研究から営女くまを発想

―― なるほど!ところで、このくまはなんと呼ばれているのでしょうか。

笹尾:システム全体は「くま会議」と呼んだりしていますが、くまのぬいぐるみはエイジョカレッジに参加したので「営女くま」と呼んでいます(笑)。

―― (笑)では、わかりやすく「営女くま」と呼びましょう。笹尾さんはなぜ営女くまを発想したのでしょうか。

笹尾:営女くまをいきなり思いついたのではなく、私の研究テーマを進めていくうちにアイデアが出てきました。

―― 笹尾さんの研究はどのようなものでしょうか。

笹尾:近い将来やってくるアンビエントな社会(コンピュータがあらゆるところに存在し人間が意識せずともその恩恵に与れる)では、適切なタイミングで適切な情報をコンピュータが人に提供することが重要だと考えていて、これを大きな研究テーマとしています。

―― 具体的な研究例はどのようなことですか?

笹尾:10年ほど前からスマートグラスを使って製造業の工場で働く作業者をサポートするようなARの研究をしてきました。スマートグラスはほかのIT機器とは違い手に持たなくていいので作業者の両手をフリーにしてくれるという点に注目しました。スマートグラスのレンズには文字や動画を表示できるので例えば中央管理室のようなところから作業者に作業指示を与えることができますし、スピーカーを通じて音声でも伝えることができます。更にスマートグラスをかけているだけで作業記録を自動化でできたら便利だろうなと思って始めました。これは現在では当社のIoXソリューションとしてビジネス化されています。

IoXソリューション

―― なるほど。ここから営女くまにつながる?

笹尾:いや、もう少し説明が必要です(笑)スマートグラスの話に戻ると、例えば工場には危険な場所がたくさんありますが、作業者が知らないうちに危険なエリアに近づいたときに「危険だ」と音声で知らせてくれたらそれ以上進むのをやめますよね。このように適切なタイミングで適切な情報を提示してあげると人は行動を変える、つまり、コンピュータが人の行動を変えているということなんです。実はこれは今後普及していくであろうロボットと人との良い関係につながっていくと思っています。

―― ロボットですか?それはなぜ?

笹尾:例えば、おそうじロボットを使うときには、おそうじロボットが掃除しやすいように人間が部屋を片付けなければならない。おかしな話ですが、でも、おそうじロボットが人に普段やらない片づけをさせている。ほかの例でいうとPepperって、飲食店の順番待ちの案内とかで活躍していますよね。順番がきたときにお客さんがその場にいなければお客さんはキャンセルということになります。この仕事を人がすると、お客さんによっては不満を口にする場合がありますが、ロボットだと波風が立たないんです。こうしたことから、オフィスでロボットを導入すると人の立ち居振る舞いがどう変わるかということメインに研究しています。

―― そこから営女くまにつながる?

笹尾:そうです。営女くまがいることで会議をうまくまわせないかという発想です。わざとこういう変なものを置くことで、人の行動がより円滑に回るような方向に持っていけないかと考えています。

―― 営女くまが会議を円滑に回すとは?

笹尾:営女くまを悪者にするという言い方をするんですが、こういうものがあることによって、誰かがずっと話し続けていて、いい加減話をやめてもらいたいと周りが思っているときに、営女くまがそれを察してその人の話を打ち切って、発言してない人に話を振る。そういう役割を素朴にアルゴリズムで機械にやらせる。ぬいぐるみに文句を言う人はあまりいないでしょうから。そうすると会議がうまくいくんじゃないかという仮説をたてています。

―― なるほど。出席者に上下関係があると言い出せないこともありますからね。

笹尾:そうですね。人が指摘すればカチンときてしまうことを機械にさせることで、問題がスッと解決できればもっと深い議論ができるし、時間も効率的に使えます。そういう効果を狙っています。


やりたいことは「今ある課題を半歩先のテクノロジーでどう解決するか」

―― 営女くまの今後は?

笹尾:動画の営女くまは最低限の機能しか搭載していませんでした。今はチームメンバーの力でパワーアップを図っています。

―― どのように進化していくのでしょうか?

笹尾:例えば、画像認識や音声の周波数を解析して誰が発言しているかを正確にわかるようにしたり、クラウドにつないで会議のログをとったり。また、日本語解析により出席者の発言内容を理解させてファシリテーションの精度を高めようかと思っています。あと、機械学習させることでファシリテーションのスキルを磨かせようと思っています。

―― すごい!スキルアップしていくクマのぬいぐるみ

笹尾:そうです。ただ、これらの機能のうちどのレベルまで搭載するかはお客様のご要望に応じてになります。

―― 笹尾さんは最終的にはロボットをつくりたいのでしょうか?

笹尾:ロボットをつくりたいという表現は、ちょっとちがうんです。私も大学時代にサークルでロボットをつくっていたので、ロボットをつくる大変さはよくわかっています。私が興味のあるところは「今ある課題を半歩先のテクノロジーでどう解決するか」ということですのでロボットに限定はしていません。

―― なるほど!それならこれからもいろいろなモノを組み合わせることで、いろいろな問題を解決していけそうですね。本日はありがとうございました。

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