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複雑な生産計画に数理最適化を応用 70%の効率化と柔軟なリスケを実現

日本製鉄株式会社様

プロジェクト概要

背景

製鉄の製鋼工程では、多品種小ロットの注文を大ロットにまとめて生産しているが、注文の組み合わせ方は膨大な数になる。従来は熟練者が数時間かけて週次生産計画を作成していた。

ソリューション

数理最適化技術を応用して週次生産計画を立案する出鋼スケジューリングシステムを構築。熟練者と同等かそれ以上の生産計画を数秒から数分で作成できるようにした。

成果

出鋼スケジューリングシステムにより、計画作成業務が70%以上削減された。生産計画を柔軟にリスケジュールできるようになり、計画業務の高度化も実現した。

複雑ゆえに時間がかかる生産計画

日本最大の鉄鋼メーカーである日本製鉄は、2021年から推進している生産計画DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、同社東日本製鉄所君津地区で出鋼スケジューリングシステムを構築した。このシステムは、製鋼工程の生産計画業務を数理最適化技術によって大幅に効率化するものだ。
東日本製鉄所工程業務部工程企画室長の河井田 博昭氏は、出鋼スケジューリングシステムを導入した背景について次のように語る。「製鋼工程では、高炉から取り出した銑鉄の不純物を除去して成分を調整し、最終製品の形に合わせて板状や棒状の中間製品を連続鋳造しています。1度に数千トンの大ロットで製造していますが、一方、お客様からの注文は10トン単位の多品種小ロットで、それぞれ求められる鉄の成分や納期が異なります。ジャスト・イン・タイムを満たしながら、これらの注文を大ロットにまとめ、いかに安いコストで製造するかが重要になります。このスケジュールをうまく最適化できないと、大きなコストデメリットが発生します」。
しかし、製鋼工程の週次計画を最適化する業務は、極めて複雑だった。「多様な注文を大ロットにまとめる際の組み合わせは、理論上、10の300乗という膨大な数に上ります。そのため、熟練者であっても試行錯誤しながら数時間かけて翌週分の計画を作成するような状況にあり、作業が深夜にまで及ぶことも少なくありませんでした」と情報システム部東日本システム室の富岡 駿氏は振り返る。

日本製鉄株式会社 東日本製鉄所 工程業務部 工程企画室長 河井田 博昭氏
日本製鉄株式会社 東日本製鉄所 工程業務部 工程企画室長
河井田 博昭氏

数理最適化技術で抜本的に改革

この課題に対して日本製鉄は、数学的な手法で最適解を求める「数理最適化技術」を応用した計算エンジンを日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)と共同開発し、週次計画業務を抜本的に改革する出鋼スケジューリングシステムを構築することにした。
NSSOLをパートナーに選んだ理由は、「当社の業務に精通しており、これまでのプロジェクトにおける技術的な信頼性の高さなどを評価しました。今回のシステムはアジャイル型で開発しましたが、当社の要望に柔軟かつスピーディーに対応してくれたので、予定通り開発を進められました」と河井田氏は話す。
出鋼スケジューリングシステムは、東日本製鉄所君津地区への先行導入が決定された。同システムはほかの製鉄所にも極力変更なしで横展開できるよう、汎用的に利用できるシステムであることが要件として求められた。
また、週次計画の前提条件が変化した場合でも、柔軟かつ迅速にリスケジューリングできるようにすることも目指した。24時間365日稼働する生産現場や後続業務への影響を最小限に抑えるためだ。

日本製鉄株式会社 デジタル改革推進部 主幹 情報システム部 情報システム企画第二室(兼務)主幹 森田 幾太郎氏
日本製鉄株式会社 デジタル改革推進部 主幹 情報システム部 情報システム企画第二室(兼務)主幹
森田 幾太郎氏

複雑な週次生産計画を瞬時に計算

2023年10月に稼働した出鋼スケジューリングシステムは、生産計画の週次計画業務に大きなインパクトをもたらした。
デジタル改革推進部主幹、情報システム部情報システム企画第二室(兼務)主幹の森田 幾太郎氏は、「熟練者が何時間もかけて作成してきた生産計画と同等かそれ以上のものを、わずか数秒から数分で作成できるようになりました。システムで作成する生産計画の品質が低いと、計画の一部を修正するだけで全体のバランスを崩してしまうことがありますが、出鋼スケジューリングシステムが作成する生産計画にそうした心配はありません」と語る。
品質の高い生産計画を瞬時に作成できるようになったことで、週次計画業務は70%以上削減された。計画担当者は、生産計画の全体方針策定や計画品質の改善に多くの時間を割けるようになった。また、さまざまな状況変化に対してタイムリーに週次計画をリスケジュールできるようになり、特に後続業務の事情を考慮した計画の調整やリスケジュールが可能になるなど、計画業務の高度化も実現している。
日本製鉄は今後、出鋼スケジューリングシステムをほかの製鉄所に横展開するほか、同システムの導入によって高度化した君津地区の業務プロセスを、システムと一緒に展開していく予定だ。「NSSOLには、今後とも当社の良きパートナーとしてアドバイスや技術開発での協力をしてほしい」と河井田氏は期待する。

日本製鉄株式会社 情報システム部 東日本システム室 富岡 駿氏
日本製鉄株式会社 情報システム部 東日本システム室
富岡 駿氏

コアテクノロジー

●数理最適化技術、製鉄事業に関する知見、アジャイル開発

システム概要

●出鋼スケジューリングシステム

関連SDGs

SDGs 9

生産の高度化によるゼロエミッションの実現を目指す

SDGs 12

経営の最重要課題としてカーボンニュートラルを推進

出鋼スケジューリングシステムの概要

・NS(ロゴ)、NSSOL、NS Solutionsは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。
・その他本文及び図表内に記載の会社名及び製品名は、それぞれ各社の商標又は登録商標です。

日本製鉄株式会社様

本社: 東京都千代田区丸の内2-6-1
資本金: 4195億円
売上高: 連結7兆9755億円(2023年3月期)
従業員数: 連結10万6068名(2023年3月31日現在)

※ユーザー事例の記事内容は掲載当時のものとなっております。

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