プロジェクト概要
背景
三井住友信託銀行では、事業損益管理や経費予算管理などに表計算ソフトを利用していたが、多数の部署から集まるスプレッドシートの集計や分析の作業負荷が大きかった。
ソリューション
シナリオプランニング及び分析プラットフォーム「Anaplan」を導入し、財務企画部と不動産ファイナンス部で新システムを構築。ローコード開発環境を使って、システムの内製化にも取り組んだ。
成果
新システムの稼働により、事業損益管理の効率化や高い精度の収益シミュレーションを実現した。多様な分析ニーズにも応えられるようになった。
データのバケツリレーに課題
国内最大級の信託銀行である三井住友信託銀行は、中期経営計画でDX戦略を推進するなか、財務企画部と不動産ファイナンス部にシナリオプランニング及び分析プラットフォームの「Anaplan(アナプラン)」を導入した。膨大なデータの集計と分析業務を支援するためだ。
財務企画部では、事業損益管理業務を効率化するため、2022年にAnaplanを導入。日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)がシステムを開発した。従来、行内の各部署から事業損益データをスプレッドシートで提出してもらい、財務企画部が全社の事業損益計画と実績を集計していた。しかし、「多数のスプレッドシートをバケツリレーするような形で集約していたため、転記ミスのリスクがありました。また、スプレッドシートの修正版が送られてくることも多く、最新データがどれか分かりにくいという課題もありました」と財務企画部企画チーム調査役の鎌田 潤氏は説明する。
そこで、事業損益関連のデータをAnaplan上で一元管理し、そこに各部署がデータを直接入力する形に業務フローを変えた。一元化したデータを蓄積することで、さまざまな分析もできるようになった。
不動産ファイナンス部では2023年に自部門の事業計画策定に向けた収益シミュレーションシステムの構築をNSSOLに依頼した。「毎年、年末から1月にかけて、短期集中でシミュレーションする必要がありますが、表計算ソフトで計算をするのは大変でした。これを効率化し、計算をより精緻にするため、Anaplanを導入しました」と不動産ファイナンス部企画チーム調査役の渡辺 颯太郎氏(肩書は当時)は振り返る。
NSSOLは金融業界の知見が豊富だったため、スムーズにプロジェクトを進められたという。システムの開発中、渡辺氏がAnaplanの出力値に違和感をおぼえたときも、「それをNSSOLに伝えるとすぐに原因を発見し、修正してくれました」と述べ、金融業務に対するNSSOLの理解力の高さを評価する。

鎌田 潤氏
ロジック変更の柔軟さ求め内製化へ
Anaplanではローコードでシステムを構築できるため、財務企画部は2023年からAnaplanによる経費予算管理システムの「内製化」にも取り組んでいる。鎌田氏は、「社内のルール変更などによってシステムに必要なデータや処理ロジックが変わることがあり、それに対応したシステム変更を部内で迅速に進められるようにしたかった」と内製化の理由について語る。
財務企画部の内製化を支援するため、NSSOLはAnaplanの基本構造やデータ処理の頻出テクニックを解説するスキルトランスファー・プログラムを提供した。さらに、システムの一部を財務企画部とNSSOLが共同開発することで、着実にスキルトランスファーを進めている。

渡辺 颯太郎氏(肩書は当時)
2~3日かかった作業が数時間に
順次開発した新システムの導入効果は大きい。財務企画部では、「複数の部署が関わる複雑な業務フローがAnaplanの導入によって整理されつつあり、誰でも最新の数値を把握できるようになりました。また、過去のデータをまとめて時系列で分析するなど、多様な分析ニーズにも応えられるようになりました」と鎌田氏は語る。
経費予算管理業務についても、作業負荷の削減効果は著しい。これまで2~3日かかっていたような集計作業が、わずか数時間で終了するようになった。
渡辺氏もAnaplanの導入効果について次のように話す。「不動産ファイナンスにおける収益のシミュレーションは表計算ソフトでも可能でしたが、以前はシミュレーションの精度を上げようとするほど手間が増えてしまいました。しかし、Anaplanで多くの手作業を自動化したところ、より精緻でありながら短時間で計算できました。これにより、上流工程の戦略立案により多くの時間を割けるようになりました」。
今後について鎌田氏は、「今は別のシステムで管理している業務も、いずれAnaplan上に統合していきたいと考えています。また、関係する部門にもAnaplanを横展開していければと考えています。そのためには今後とも、NSSOLからの支援を期待しています」と語る。
コアテクノロジー
●金融に関する業務知見、シナリオプランニング及び分析プラットフォーム「Anaplan」の導入・活用ノウハウ
システム概要
●シナリオプランニング及び分析プラットフォーム「Anaplan」
関連SDGs

高齢者支援を目的とした信託商品により、住みよい社会を実現

公益信託を通じて自然保護活動を支援
三井住友信託銀行がAnaplanで構築したシステムの概要

不動産ファイナンス部B/S・P/Lイメージ

・NS(ロゴ)、NSSOL、NS Solutionsは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。
・その他本文及び図表内に記載の会社名及び製品名は、それぞれ各社の商標又は登録商標です。


三井住友信託銀行株式会社様
本店:
東京都千代田区丸の内1-4-1
設立:
1925年
資本金:
3420億円
総資金量:
102兆8616億円(2025年3月31日現在)
従業員数:
1万3947名(2025年3月31日現在)