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2018-05-23 DX
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【事例編】「デザインシンキング」でお客様が求める真のシステムを提供

~Beyond Experience Design Center(BXDC)~

Beyond Experience Design Center(BXDC)UXデザイナー 惠島 之維さん

前回は「デザインシンキング」の解説とNSSOLの取り組みを紹介しました。今回はNSSOLのお客様事例を中心に紹介していきます。

<参照>
「デザインシンキング」でお客様が求める真のシステムを提供 ~Beyond Experience Design Center(BXDC)~

大学病院をデザインシンキングのフィールドワークに
~エスノグラフィー効果事例~

―― デザインシンキングの事例をいくつか教えていただけますか?

はい、ではデザインシンキングの特徴である「エスノグラフィー」で効果があった事例と、「アジャイルプロトタイピング」で効果があった事例を紹介したいと思います。

―― 「エスノグラフィー」というとユーザーの行動観察でしたね。

はい、そうです。BXDCは筑波大学と、筑波大学附属病院における業務改革にデザインシンキングを適用する共同研究を行いました。その時の事例になります。

―― どのような共同研究になりますか。

筑波大学附属病院には入院患者や入院予定者のベッド割り当てを1週間先まで計画するベッドコントロール業務というものがあります。その業務は「ベッドコントロール会議」で決められた計画に基づいて遂行されています。ただこの会議が週1回3時間かけて行われていたため病院長は医師や看護師が毎週3時間も会議に拘束されるのは病院経営上の課題だとお考えでした。最初のヒアリングの時にこの業務をシステム化して会議そのものをなくしてほしいというお話でした。ただ、本当にこの会議を廃止してもいいのかどうかを見極めるためにエスノグラフィーを実施しました。

―― 週に1度3時間もある会議ですか。何人くらいの会議なのでしょうか。

出席者は全体で50人くらいですが、いくつかのグループに分かれて話し合いがされます。

―― そんなにたくさんの方が参加されるのですね。

私たちも会議に同席してみると、病院長からのヒアリングだけでは把握できなかったいくつかの重要なことがわかったのです。

―― どのようなことでしょうか。

例えば会議では医師と看護師がベッドコントロール以外の情報交換を頻繁に行っていました。つまり、出席者はこの会議をさまざまな情報交換の場として利用していたんです。

―― 会議を廃止してしまうと情報交換の場がなくなってしまいますね。

そうです。結果的には、会議はなくさずにベッドコントロール業務の効率を上げる方針に転換しました。このような潜在ニーズに気づけば実現すべきソリューションが大きく変わってきます。
この時は、直感で使えるUIをデザインしたタブレットのシステムを開発して看護師の新業務の実証実験をしました。

―― 最初の病院長のヒアリングだけで全面的にベッドコントロール業務がシステム化さてしまっていたら医師や看護師のみなさんは不便を感じたかもしれませんね。

そうです。このような潜在ニーズに気づけば実現すべきソリューションが大きく変わってきます。また、問題に気付いた時点で手戻りや追加開発が発生していただろうと思います。

看護師の新業務のためのタブレットのシステムはこちらの動画でご覧いただけます(2分20秒)

大手小売業のビジュアル・マーチャンダイジングシステム開発にアジャイルプロトタイピングを適用。ユーザーにフィットするITシステムを短期間に実現

―― もうひとつの事例は「アジャイルプロトタイピング」でしたね?

この事例は、大手小売業のお客様の事例ですが、お客様はビジュアル・マーチャンダイジング(VMD)システムの導入を検討していました。

図1 BXDCプロセス

―― VMDとは?

消費者の欲しい商品を、適切な数量、適切な価格、適切なタイミングで提供する企業活動のことをマーチャンダイジングといいますが、さらに、その商品を特定のシーンやストーリーといったあるコンセプトに基づいて、視覚的に統一したイメージにしてお客様の感性に訴えようという手法です。

―― 確かにただ商品が並べてあるよりも、こういうシーンでこう使えるんだとか、こう使ったらクールだと想起できるように商品が並べられているとつい買いたくなりますよね。

そうですよね。お客様は売り上げを増やすための業務改革として、このVMDに着目して専門組織も編成しました。ところがVMDは新しく取り組む業務であることや、さまざまな部署の業務を統廃合しなければならないことなどから業務フローを決めるのに難航しました。システム開発も当初はウォータフォール型で要件定義を進めていたのですが、こちらもなかなか進捗しませんでした。

―― そこでアジャイルプロトタイピングを導入したのですね?

はい。まず、当社のSEとBXDCのメンバーが顧客分析をして徹底的にお客様について考えました。これによりSEはどちらかというとシステムの作り手目線だったのが、お客様目線を意識するようになりました。次の1か月間はお客様と方向性を見極めるためにデザインスプリントを行いました。

―― デザインスプリントとはなんでしょうか?

デザイン上の問題を、短期間でプロトタイピングと検証を行うフレームワークのことです。

―― 今回の事例では具体的にはどのようなことをしたのでしょうか。

VMD業務は店舗レイアウト設計や棚への商品配置計画を試行錯誤しながら決めていく業務のため文書や絵だけでは細部までは伝えにくいという問題がありました。特にレイアウト計画のビジュアル表示の情報設計やマウスを使ったドラッグ&ドロップの操作性を、お客様と認識合わせすることが従来のITシステム開発より難しかったのです。そこで、2週間スプリントのアジャイル開発でプロトタイプアプリを開発して、お客様に新業務を体感していただきました。お客様は実際にシステムに触ると業務のあるべき形をイメージしやすくなりますし、意見を出しやすくなります。こうした低コストのプロトタイピングで早く体感し、改良していく方法の方がお客様に本当に合うITシステムを短期間でつくることができます。

―― お客様からの感想はどのようなものですか?

ストレスなくVMDのレイアウト計画業務ができているとおっしゃっていただけています。ウォータフォール開発に比べて大幅な工期短縮と顧客満足度を高められたと思っています。

―― ありがとうございました。

BXDCホームページ

BXDC内でのディスカッションの様子。メンバー全員で活発な議論がなされる。

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