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2017-07-12 DX 働き方改革
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「KAMONOHASHI」が世界を変える

――画像認識プラットフォームが導く未来――

NSSOLはDeep Learning(ディープラーニング)と呼ばれる、AIを活用したアプリケーション開発を容易にする画像認識プラットフォーム「KAMONOHASHI(カモノハシ)」を開発したことを発表しました。
今回は、この「KAMONOHASHI」の開発リーダーであるシステム研究開発センター 小林大悟さんに、「KAMONOHASHI」はもちろん、画像認識の未来について話を伺いました。

不可能が可能になる近未来を作る技術

―― そもそも「画像認識」とは、どのような技術なのでしょうか?

画像認識は、「人工知能」と呼ばれるAI技術の一部です。AIというといろいろなイメージがあると思いますが、Amazonの商品レコメンデーション機能やiPhoneの音声認識機能「Siri」など、すでに身近なところでAI技術が使われています。そうした中のひとつに「画像認識」があります。

―― 例えばどういうものがありますか?

クルマの自動運転が分かりやすいと思うのですが、自動運転するクルマはカメラに映ったものが人なのか信号なのか車線なのか、あるいは壁なのかを認識しながら走ります。このように機械が画像を識別する技術が画像認識になります。

―― 「人」なのか「電柱」なのか、はっきりと識別しているということですか?

そうです。クルマの自動運転ができるようになった大きな理由が画像認識の進歩と言われています。
画像認識自体は昔から研究されてきましたが、以前はカメラ画像から何がそこに写っているのか、人間と同じ精度では認識できなかったんですね。それが劇的に変わったのが2012年にDeep Learningを使った手法が取り入れられてからです。

―― 画像認識技術の活用で、世の中は変わりそうですね。

まさに、その通りです。現在、自動運転以外にも、幅広い分野で画像認識技術の活用が検討されています。例えば、医療現場では、患者さんから採取した細胞画像から癌化しているかどうかをAIが判別するような研究が盛んにおこなわれています。また、防犯カメラに応用すれば、不審者を早期発見ができるようになり犯罪の抑止に繋がるでしょう。

―― NSSOLは製造業に強いと言われていますが、製造の現場ではどのようにつかわれているのでしょうか。

例えば、品質を管理する工程ではまだ熟練の方が目視して製品を検査するという工程が多く残っています。その人間がする目視の工程をシステムが補助していく、もしくは人間ではできない全件検査をAIにさせるなどが期待されています。

「KAMONOHASHI」が切り拓く、大きな可能性

―― KAMONOHASHIはDeep Learningを用いた画像認識プラットフォームとのことですが、どのようなものなのでしょうか。

まず、KAMONOHASHIを開発した経緯からお話しすると、自分自身の経験からDeep Learningを使ってアプリケーションを開発しようとすると、いつも同じ問題に直面していたんですね。そうした問題を解決するためにつくろうと思ったのがKAMONOHASHIです。

―― 「直面する問題」とはどういうものでしょうか?

いくつかポイントがあります。まず1つめは、Deep Learningを利用するには、非常にたくさんの計算リソースを使います。通常、GPUというDeep Learningに適した演算機をいくつも並べて計算させるのですが、その管理がとても大変なんです。KAMONOHASHIには、GPUやストレージのシステムを組み込んでいますが、それらの管理が簡単にできるようにしています。

2つ目は、トレーサビリティの問題です。Deep Learningで画像認識のシステムを開発しようとすると大量の画像を集めてくることになります。例えば製造現場の熟練工の知識をAIに教えこもうとすると、そのデータ量は膨大になります。その知識データを、私たち技術者がどうやってコンピュータに教えるかを試行錯誤していくのですが、10パターン、20パターンと、いくつもパターンを繰り返していくと、どのパターンで、どういう試行錯誤をしたのかだんだんわからなくなってしまいます。
KAMONOHASHIではそういったどのデータに対してどういう試行錯誤をしたのかを自動的に管理できるようにしました。

―― 複雑な管理が容易になるということですね。その他のポイントはどのようなものでしょう?

3つ目としては、Deep Learningの仕組みをシームレスに実機運用につなげていくことを目指しています。実はここはまだ開発途上で、ある程度標準化したパターンが確立したら提供していきたいと思っています。

4つ目は、例えば製造業などは典型的なんですけれど、製品のパターンが変わってしまって、今までにはなかったようなパターンが出てくるケースがあります。そうした変化にシステムをいかに対応させていくかといった問題です。

―― 先ほどご自身の経験からKAMONOHASHIをつくったということですが。

そうですね。私たちが過去に画像認識システムを開発して必要だと思ったことを、案件を通じたベストプラクティスから抽出してKAMONOHASHIに実装しています。それと、ある程度画像認識に特化していますので、画像認識の効率は高められると思っています。

私たちが現在手掛けている案件もKAMONOHASHIを使って開発しています。それと同時にKAMONOHASHIも育てていますので、KAMONOHASHIはどんどん進化し続けているといっていいと思います。

―― 小林さんが経験した問題点というのは他の技術者も感じていることなのでしょうか?

はい、誰もが直面するものだと思っています。KAMONOHASHIを導入いただければNSSOLが解消した問題についてはもう悩むことはないでしょう。

実際、5月に私たちがマイクロソフト社が主催するイベント『de:code 2017』に参加し、KAMONOHASHIの展示ブースを出展した時のことなのですが、そこに来場された方々のうち、2~3割がすでに画像認識の開発をされてたんですね。そうした方々はやはり同じような悩みを抱えていると話されていていましたし、KAMONOHASHIを導入してみたいというポジティブなご意見を頂戴しました。

―― なるほど、同じ問題をお持ちの方はぜひKAMONOHASHIを導入いただきたいですね。ところで画像認識を取り入れていたのは来場者の2~3割合とのことですが、企業が画像認識に取り組むのはこれからということでしょうか。

はい、まだまだこの分野は適応が進んでいません。『de:code (decode) 2017』にいらした7~8割はこれから適用していこうという方々でした。そうした方々はまだ具体的な悩みを抱えてらっしゃらないのでKAMONOHASHIが便利かどうかの判断はつかなかったと思います。ただ、そうした方々には、業務にAIや画像認識を活用していくコンサルティングを提供していますのでぜひ、お声掛けいただければと思います。

KAMONOHASHIを世界で評価されるサービスに育てたい

―― 「KAMONOHASHI」というネーミーングは変わっていますね。

KAMONOHASHIは動物の「カモノハシ」からとりました。ご存じのようにカモノハシは、哺乳類なのに卵を産んだり、爬虫類のように毒を持っていたり、ヘラの部分で電気信号を感知できたりと、すごくおもしろい動物です。
私たちのKAMONOHASHIは多くの人たちの協力を得て開発してきましたので「多様性」という意味と、「分類が難しいものを見分ける画像認識アプリケーション」という意味を込めてこの名前にしました。敢えて、日本語の名詞を英語表記にし、「日本発の世界共通の技術を作っていきたい」といった思いも込めています。

―― 世界も視野に入れているのですね。

はい。私はシリコンバレーにある、NSSOLの米国現地法人でスタートアップ企業が提供する技術の調査や、日本に向けてその技術を紹介する仕事をしていました。シリコンバレーは新しい技術をどうやってビジネスとして育て上げていくかという研究や文化が進んでいて、それを肌で感じてきましたので、いつか自分でも実践してみたいと思っていました。

また、シリコンバレーでは、AIがすごい価値を生んでいることやAIに巨額の投資がなされているのを目の当たりにしました。これまでAIは何度かブームがありましたが、今度は単なるブームでは終わらない、必ず役に立つ技術になると確信しました。

そのAI技術を支えるKAMONOHASHIを世界中で評価されるサービスに育てていきたいというのが、今の夢ですね。

―― 「KAMONOHASHI」が、とても大きな可能性を秘めていることが分かりました。本日は、ありがとうございました。

KAMONOHASHI開発メンバー

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