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2019-11-01 DX
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<対談>経営とITを強くする「デザイン」の力

~デザイナーがリードする顧客中心の解決アプローチ~

著名なグローバル企業の経営会議には、腕利きのデザイナーが参画しているという。今やデザインは企業経営の根幹に位置づけられ始めている。「デザイン経営」を提唱する一橋大学大学院教授の鷲田祐一氏と、デザイン思考に基づくアジャイル開発を手掛ける日鉄ソリューションズBeyond Experience Design Center(BXDC)UXデザイナーの斉藤康弘がデザインの力について語り合った。(文中敬称略)

鷲田 祐一氏
一橋大学
大学院経営管理研究科 教授

斉藤 康弘
日鉄ソリューションズ株式会社
技術本部システム研究開発センター 上席研究員
BXDCセンター長 UXデザイナー 経営学修士

ポイント

  • 市場を席巻するビジネスモデルはデザイン思考の経営会議から生まれた
  • デザイナーを経営会議に迎えよ 意匠法改正でデザインが重要な知財に
  • 全く足りないデザイン人材の育成に課題 既に人材がいるIT企業に市場をリードしてほしい

市場を席巻するビジネスモデルはデザイン思考の経営会議から生まれた

斉藤: デザイン思考への関心は年々高まっていますが、最近は経営の領域でもデザインが注目され始めました。経済産業省・特許庁の研究会で座長を務められ、昨年5月に「『デザイン経営』宣言」をとりまとめられた鷲田先生は、なぜデザインへの関心が高まってきたとお考えですか。

鷲田: きっかけは、やはり米アイディオ(IDEO)が提唱しているデザイン思考です。米アップルや独SAPをはじめ、アイディオが支援した企業が大成功を収め、2000年代中頃から日本でもデザイン思考が注目され始めました。
ただ、当時の日本ではデザイン思考の本質が正しく理解されていたとはいえませんでした。日本でデザインといえば「色や形」を指しますが、もともとの英語のDesignには「問題解決のためのプランニングやエンジニアリング」の意味があります。海外のデザイナーはこのような視点を持ってデザインしていることに気づいていなかったのです。
ところが最近になって、著名なグローバル企業の上層部ではデザインを積極的に議論していることが知られるようになりました。例えば一般的なマーケティングでは、顧客を消費者と呼び、いかに製品やサービスを消費してもらうかに腐心します。しかし、このやり方はもう通じなくなりました。成功企業が重視しているのは「顧客を中心に考え、自社と顧客の多様な接点において、いかにストーリー性のある良質なユーザー体験(UX)をしてもらうか」。これら顧客接点の見た目や機能、体験をデザインすることが経営そのものになっていたのです。
つまり競争力はデザインの力によって生み出され得る。この点が理解され、デザイン経営への関心が高まりました。

斉藤: システム開発にデザイン思考が取り入れられるようになった背景にも同様の変化があります。
従来のシステム開発では、人とコンピュータを含む業務システム全体の効率を高めることに注力してきたので、どちらかというと技術ありきのHowの議論になりがちでした。しかし、ここ10年くらい、事業環境の変化が大きい領域でのシステム化が増え、事業や業務の目的を達成するために「どんなシステムをつくるべきか」を定義するのが難しくなってきました。Howよりも、何をつくるか、というWhatの議論をしなければならなくなったのです。
この難題をクリアするには、対象業務やユーザーの行動をよく観察し、潜在ニーズを掘り起こすところから始めなければなりません。そこで7年前からデザイン思考を組み込んだ開発に取り組んできました。鷲田先生がおっしゃるように「人を中心に考え、潜在ニーズを引き出し、どんなUXをデザインするか」というWhatの議論を徹底的にします。外部環境の変化が速く、暗黙知が多い業種や業務には、このアプローチが必要です。

この続きは、以下のPDFをご参照ください。

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