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2017-04-20 働き方改革
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日本初のプロジェクト型・小説"開発"への挑戦

~社員6人で執筆した 小説「シンギュラリティ」誕生の舞台裏~

左:「チーム2045」のリーダー西村世大郎さん(NSSOL)
右:編集をご担当いただいた 庄子 錬氏(幻冬舎メディアコンサルティング<取材当時>)

「シンギュラリティ(技術的特異点)」というキーワードをご存じでしょうか。「シンギュラリティ」とは人工知能(AI)が人類の能力を超える分岐点のことであり、一説によると2045年に訪れると言われています。

この「シンギュラリティ」をタイトルに冠した小説を、NSSOLの有志社員6人で結成した「チーム2045」が執筆し、2017年3月21日に幻冬舎より刊行しました。

今回、「チーム2045」のリーダーであり、流通・サービスソリューション事業部でプロジェクトマネージャーをつとめている西村 世大郎さんと、編集をご担当いただいたた株式会社幻冬舎メディアコンサルティング(取材当時)庄子 錬氏に、小説執筆の背景や苦労、見どころなどを語っていただきました。

(幻冬舎より発売)
定価 1,300円+税

<あらすじ>
ある日、政府直轄の特命組織に属する竹下結衣のもとに「完全なバーチャルオフィスを構築せよ」という指令が下される。開発現場との衝突、政府からのむちゃな要求、妨害をもくろむ謎の組織。
国に何が起ころうとしているのか、誰が何のために妨害するのか。現実と仮想空間を行き来する中で、次第に真実が明らかになっていく。

出版業界で初めての試み-複数人で1つの物語をつくりあげるということ

庄子:遂に小説「シンギュラリティ」が発売されましたね。一年に及ぶ制作過程では、難しい局面も多々ありましたが、担当編集者として貴重な経験ができたと感じています。6人が一つの物語をつくりあげるというプロジェクトは、出版業界としても初めての試みだと思います。改めてお伺いしたいのですが、どのようなきっかけで、西村さんはプロジェクトに参加されたのですか?

西村:もともと当社には、システムインテグレータやその仕事が世の中にあまり知られていないのではという問題意識がありました。そうした中、業界の認知度を高めようと昨年、「ブランド向上委員会」が立ち上がりました。そこでSI業界を舞台にした小説を書いてみてはどうかというアイディアが出て、執筆者を社内募集したんですね。わたしもその想いに賛同して参画してみようと思いました。

庄子:確かにシステム開発の仕事というのはイメージが湧かないですね。

西村:一般にシステム開発やITからイメージされるのは、プログラミングでしょうか。コンピュータやプログラミングというと、どこか非人間的な印象を受けると思うのですが、実はシステム開発はとても人間的な仕事なんです。多くの人々の葛藤や苦悩があり、それらを乗り越えてはじめて、システムは完成します。小説を通して、そうした人間臭いドラマも知ってほしいと思いました。

庄子:今回の小説のプロジェクトに参画されたメンバーは、営業、システムエンジニア、総務と所属部署も職種もバリエーションに富んでいらっしゃいましたが、皆さんモチベーションが高かったですよね。通常業務をこなしながらの作業とは思えないほど、時間をかけて練られたアイディアが数多く出てきて、打ち合わせが毎回楽しみでした。失礼な話ですが、素人であるはずの皆さんの文章力の高さにも驚きました。

西村:理系であるITと小説の取り合わせは一見ミスマッチに思われたかもしれませんね。ところが私たちの仕事には意外と文章力が求められるんですよ。例えば、エンジニアがシステム開発の時に作成する仕様書は、正確な日本語表現で書かれていないと、関係者の誤解を招くこともあります。

庄子:なるほど、モノを書く下地があるのですね。

ゼロベース思考で物語を考え、抜けもれなく話を組み立てる

西村:チーム発足後、最初の2か月間は、「どんなストーリーにするか」を毎週話し合っていました。いわば、アイディアを発散させていた時期です。それぞれのメンバーで出す案の方向性が違っていて、「果たしてまとまるのだろうか?」と不安に感じたことを覚えています(笑)。

庄子:「とにかく、たくさんアイディアを出してください」と、私もお願いしましたからね(笑)。固定観念に縛られることなく、自由に方向性を議論いただく中で、何を描きたいのか、大切にしたいメッセージは何かが出てくると考えていました。

西村:今思えば、各自が思いつくアイディアを出し合うことで、いつも新たな発見があり、持っている知見をお互い共有できる機会にもなりました。

庄子:舞台設定が固まって、"管理官"という物語オリジナルの職業を考えついたのも、この頃ですね。「プロジェクト遂行の請負人で、政府直属の特命組織に所属している」という設定は秀逸だ、と感じました。

西村:管理官は、システムの開発現場のプロジェクトマネージャーから連想を膨らませて、誕生したんです。プロジェクトマネージャーは、リーダーシップを発揮して、スケジュールや予算、部門間の調整などを行いながら、プロジェクトを成功に導いていきます。だからこそ、高いマネジメント能力が必要です。それを「管理官」という国家資格にすれば、IT業界だけでなく、金融や医療、建築など官民問わず、幅広い業界に登場させることができますし、リアルな開発現場の様子を伝えていけるのではないか、と考えました。

庄子:実際に物語を読んだとき、管理官を中心に人間ドラマが描かれていて、IT業界で働く醍醐味を感じました。登場人物のキャラクター作りは盛り上がりましたね。

西村:いわゆるキャラクターシートですが、主要人物の家族構成、趣味、学歴、自宅の場所、恋人の有無などの項目を表形式にして埋め込んでいきました。実際のシステム開発現場と同様、メンバー間で認識がずれないよう徹底して作りこんだので、今回小説に反映しきれていない設定も数多くあります(笑)。

庄子:認識の共有と言えば、登場人物同士の呼称について抜けもれないようマトリックス上にまとめているのを見て、「徹底しているな」と感じました。我々の業界ではまず思いつかない手法です。システム開発の方法論や考え方に触れられて、私にとっても良い機会となりました。

近づいては遠ざかる「完成」という名のゴール

庄子:半年くらいかけてプロットや、小説の題材設定を確定させ、ここから原稿の執筆がスタートしたわけですが、実際に小説を書いてみて、どのように感じましたか?

西村:率直に言うと想像以上に苦戦しましたね。システム開発では、システムの機能ごとに担当エンジニアを配置するのですが、それと同じように、場面の変わる節ごとに担当者を割り振って、執筆にとりかかりました。出てきた原稿は、見事にバラバラのテイストでした(笑)。書く上でのルールを決めても、執筆者の個性が出てしまった。この時期は毎週ミーティングを開いて新たなルール設定や認識の共有を行っていましたね。あとはどこまでIT業界の専門用語に触れるかがメンバー共通の課題だったので、庄子さんにご相談したことを覚えています。

庄子:読者と同じ、「初心者の視点」が役立って良かったです(笑)。ただ私は、専門用語を多少使っていても問題ない、と考えていました。大きな話題になったテレビドラマの『下町ロケット』でも、業界内の専門的な「バルブ」の話が出てきますが、視聴者を置き去りにはしていません。それは人間ドラマを書くための一つの"ツール"になっているからです。だからこそ、執筆メンバーとリレーションを取りながら、読者との距離感が離れすぎないように意識していましたね。

西村:おかげで、当初の目標である「人間ドラマを書く」ことに集中できました。実際の仕事で起きた「プロジェクトあるある」を出し合って、物語に反映させてリアリティを持たせるとか、場面ごとの意味を考えて展開を考えるなどして、小説も少しずつ完成に近づきました。

庄子:最後の最後に大事件がおきましたね。

西村:最終稿の締め切り一週間前になって、プロットの甘さを感じ、全5章のうち最後の1章をオールリライト、またその前の2章分を半分以上リライトする決断をしたことですね?あの時は、大きな決断をしたものの残りの時間を考えるとさすがに焦りましたけど(笑)。

庄子:私もスケジュールの見直しを覚悟しました。ですから皆さんがわずか数日でリライトを完成されたのには正直、驚きました。

西村:ご心配をおかけしました。でも、そのおかげで物語に幅と深みを出すことができましたし、最終章はより緊迫感溢れる展開に書き上げることができました。

庄子:プロジェクトを通して、チームの結束が出来上がっていたからこそ乗り越えることができましたよね。

西村:そうですね。PDCAサイクルを回した結果、メンバーの役割分担も明確になっていたので、作業のスピードと質が断然上がっていました。小説では、様々な人の思惑がぶつかり合って、システムが完成することを伝えています。私たち自身も、それと同じ道のりを辿って、この小説が完成しました。

庄子:通常業務があるので、執筆メンバーが集まれる時間は限られていたと思いますが、業務後や休日を使ってプロジェクトを進めていく姿を間近で見ながら、「プロの仕事とはこういうことか」と感銘を受けました。完成した小説は、あっと驚くような「どんでん返し」もあって、読み応えのある内容に仕上がっています。西村さんの「ここはぜひ読んでほしい」と思うポイントはどこですか?

西村:リアルな開発現場の様子や、登場人物たちの駆け引きはもちろん、技術的なところにも注目してもらえたら嬉しいです。小説を通して、ITが大きなポテンシャルを秘めた業界であるということも知ってもらいたいと思っています。「あとがき」には、プロジェクトの苦労話なども書いてあるので、そこまでぜひ読んでほしいですね(笑)。

庄子:これから第二弾の発売に向けて、新たにプロジェクトメンバーを募ると聞いています。編集者としても、一読者としても、第二作目にも期待しています。

西村:ありがとうございます。

広報・IR室 森井 友美

ITに詳しくなくても普通の読み物として読める内容ですので、たくさんの方々に読んでいただけると思います。
特に学生のみなさんには、この小説を通じてIT業界に少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです。

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