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2018-12-07 サステナビリティ イベント
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子ども向けプログラミング教育に対する熱い思いでつながった異色のコラボ IoTとプログラミングを同時に学べる子ども向け学習教材

「IoTできれいな花を咲かせよう!」

NSSOLグループ企業である日鉄日立システムエンジニアリング(以下、NHS)、栃木県立栃木工業高校、そしてNSSOL。3者の共通点は、子ども向けのプログラミング教育に情熱を傾けていること。それぞれが小中学校への出前授業を行い学校現場で役に立つプログラミング教育を実践しています。

この3者がコラボして生まれたコンテンツが「IoTできれいな花を咲かせよう!」です。企業と工業高校というこの異色のコラボレーションがなぜ実現したのでしょうか。

国内最大級のサイエンスコミュニケーションイベント「サイエンスアゴラ2018」(11月9日~11日開催、主催:国立研究開発法人 科学技術振興機構)で3者合同で開催したワークショップを取材しました。

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左から 早乙女 亜弥さん(栃木工業高校3年)、石川 大悟さん(栃木工業高校3年)、萬谷 靖夫さん(NHS)、今野 奈穂子さん(NSSOL)

子ども向けのプログラミング教育への思い~道具としてプログラミングを利用する

今回の企画をリードした萬谷さんは、数年前から子どもたち向けのプログラミング学習について考えると同時に学習教材をつくってきました。

「私がプログラミングの学習教材に興味を持つようになったのは、自分の子供が就学したときからです。2020年から小学校でのプログラミング学習が必須になるのは歓迎することですが、いざ教材を見てみると、私たちがふだん仕事で行っている内容とは、少しずれているのではないか。率直に言えば、最適なものがないと感じたんです。単にコードを書くだけの教材ではなく、特に我々SEやプログラマーにとって最も大切な、プログラミング的思考も学べるツールをつくりたいと思いました。それで仕事の合間を見つけて、自分でつくりはじめました。」

そんな萬谷さんのこれまでの作品はプログラミングでロボットを動かす「Jammy! Programming.KIDS」。この時に使うカトラリーカードで「プログラミング的思考」を学ぶことができます。

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萬谷さんの考案した「Jammy! Programming.KIDS」

一方、NSSOLのプログラミング学習ツール「K3Tunnel(ケイサントンネル)」の開発経緯も、萬谷さんの想いに近いものです。K3Tunnelの開発者である今野さんは、次のように話してくれました

「2020年は私の子供も、まだ小学生です。どんなことをするのかと、子供向けのプログラミング教材を眺めたりしていました。ゲームやアニメーションを作ったり、ロボットを動かしたり、どれもこれも楽しそうだなと思う一方で、"計算したりデータを扱う道具"という原点回帰したものがあってもいいんじゃないかなと思ったんです。そこで、グラフ出力や計算結果表示を簡単にできるアプリケーションを開発し、学習コンテンツとともに提供することにしたのです。小学生が「問題解決にプログラミングを使う」具体例を体験できるよう、プログラミングする前の論理的思考にもフォーカスをあてた学習コンテンツの開発に力をいれています。」

思いを同じくする二人は、いつか、お互いの得意分野を活かして共同で教材製作をしようと話をしていました。それが形となったのが「IoTできれいな花を咲かせよう!」です。

IoTの技術を利用しきれいな花を咲かせる

まずはかんたんに、「IoTできれいな花を咲かせよう!」を紹介します。目的は、コンテンツのタイトルそのままです。IoTの技術を利用し、きれいな花を咲かせること。そのフローの中で、IoTやプログラミングが学べる内容となっています。

私たちが花を育てる際、一般的には水や光といった植物の成長にはなくてはならない要素と、気温や湿度などの環境に気を使いながら育てます。この「人間」が気を使う部分を、センサーで計測し、その測定したデータをWi-Fiを使ってクラウドサーバーに蓄積。集めたデータを分析することで最適な生育環境を実現しよう、というものです。

見た目は電子工作キットそのものですが、センサーで情報を得、その情報を正しく受け取るためのプログラムを制作する。さらにはWi-Fiでデータをクラウド環境につなぎ、蓄積されたデータを分析・検証するという一連のフローは、私たちがふだん仕事として取り組んでいるIoTのシステムと、基本的には変わりません。

この教材の発案者である萬谷さんは、開発経緯を次のように話してくれました。
「もののインターネット化、IoTは、これからますます一般化するでしょう。つまりプログラミングを学ぶ子どもたちが大人になったとき、同領域に関する知識や技術を身につけていれば、それこそ業界に携わる私たちとしては嬉しい、と思ったんです。そこでIoTとプログラミングを同時に学べる教材を開発することにしました。」

萬谷さんはIoTの仕組みを開発するにあたり、いろいろと調べていくうちにインターネット検索で見つけたある工業高校のコンテンツに注目し、取り寄せた実機に一目惚れします。それが栃木工業高校の「こどもパソコン『SkyBerryJAM』(スカイベリージャム)」です。

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栃木工業高校で製作したSkyBerryJAM
SkyBerryJAMのホームページはこちらからご覧いただけます

この「SkyBerryJAM」は、子ども向けパソコン「IchigoJam(イチゴジャム)」を参考に同校が開発し、一般商品化されているプログラミング学習教材です。萬谷さんが開発した「Jammy! Programming.KIDS」も「IchigoJam(イチゴジャム)」をベースとしているため、親近感がわきすぐに栃木工業高校に連絡を入れて自分の想いを伝えました。

「一緒に、開発しませんか!」と。

栃木工業高校では既にこの教材を使い、栃木県内の小学校で「プログラミング出前講座」を年に数回行っていることもあり、萬谷さんの話に共感すると話はトントン拍子に進んでいきました。そして、そこに今野さんも加わり、いよいよ本格的にコンテンツの制作が進められていきました。

役割分担は次の通りです。環境データをセンサーで計測し、その情報をWi-Fiでクラウドに飛ばすハードウェアの部分は栃木工業高校の情報技術科と電算機部の生徒さんが担当しました。市販のサービスをカスタマイズしてWi-Fiで飛ばしたデータをクラウドに蓄積する仕組みをつくったのはNHSの萬谷さんです。そして蓄積されたデータを使って、日照時間の変化から次の日に朝顔のつぼみが開く時間をプログラミングで計算できるコンテンツをNSSOLの今野さんが開発しました。

「IoTできれいな花を咲かせよう!」完成の図

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気温・湿度・照度などのデータを取得し、クラウドでデータを蓄積

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そのデータを活用して朝顔が開花する時間をプログラミングで計算(K3Tunnelサイトより)

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プログラミングで出した答え

「K3Tunnel」朝顔のつぼみが開く時間を計算しようはこちらでご覧いただけます

もともとNHSがサイエンスアゴラに「Jammy! Programming.KIDS」を出展する予定になっていたところに、「IoTできれいな花を咲かせよう!」のワークショップの場も設けてもらうことができました。

高校生ががんばり、サイエンスアゴラ出展1週間前に完成

ハードウェアは、同校開発の「SkyBerryJAM」基板の上に、IoTに必要な液晶、センサー類、無線関連の機能を備えた新たな基板を載せる形「シールド型」で製作。名前は、IoTこども百葉箱「IoTPod」(アイオーティ・ポッド)、商品化も意識しロゴマークも制作しました。この「IoTPod」の製作に携わった早乙女さんは、製作時の苦労を次のように話してくれました。

「スペックに見合ったセンサーや端子を探すところからはじめました。精度があまりに高すぎると繊細になるため、壊れやすくなってしまうという問題がありました。また価格も高くなってしまいます。そこで先生や仲間と相談しながら、値段、スペックが適当な部品を何度か実装し、どれがベストか探っていきました。」

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栃木工業高校が製作した「こども百葉箱IoTPod」

実際、萬谷さんのところに届いた試作機を見ると、その都度パーツの構成が変わっていたそうです。

「高校生がやっていることは、プロのハードウエアエンジニアのそれと変わらないですよ」と、萬谷さんは高校生の仕事ぶりを称賛。ただ、適する部品が決まった後も苦労は続いたそうです。

「IoTPodで扱う部品は、『SkyBerryJAM』でふだん使っている部品とは異なり、初めて扱うものばかりでした。特にセンサー系のICは高温に弱いので、はんだ付けの際は素早く行うなど、気をつける必要がありました」(早乙女さん)

製作や調整など、同校情報技術科や電算機部のみなさんが、夏休みや授業が終わった後、夕方部活動の時間などを使い、毎日がんばって行ったそうです。

そしてついに「IoTできれいな花を咲かせよう!」は完成。サイエンスアゴラの出展まであと1週間、というタイミングでした。

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石川さん(左)、早乙女さん(右)は取材にもしっかり対応してくれました。

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「IoTできれいな花を咲かせよう!」のワークショップの様子

サイエンスアゴラではこの「IoTできれいな花を咲かせよう!」のワークショップを開催し、子どもたちにIoTの体験の場を提供しました。石川さん、早乙女さんももちろん講師です。

栃木工業高校では小学校への出前授業を年間で何度も行っていますが、今回のように企業とコラボしたイベントへの出展は初めてでした。石川さんは「少し緊張しました」とのことですが、初めてサイエンスアゴラに参加したことについては、「東京に行けるということで、それだけでもう嬉しかったです(笑)」と高校生らしい感想を語ってくれました。

水槽や教室の環境を最適にするコンテンツに発展させたい

最後に、今後の抱負を聞きました。

「IoTPodは、気圧、水温、湿度も測ることができます。つまりこれら他のセンサーを活用すれば花の育成だけでなく、水槽の管理も可能なツールに発展するのです。教室内の環境を勉強に最適に保つことも実現可能でしょう。
Wi-Fiを別の回線に変えたり、電力を抑える仕様にしたりと超えなければならないハードルはいくつかあります。でも一つひとつクリアしていって、実際に使えるコンテンツに成長させていければと思っています」(萬谷さん)

2020年そして来年も栃木工業高校、NHS、そしてNSSOLと。それぞれが協力してコンテンツを作り出したいと意気込みを話してくれました。

今後の活躍を楽しみにしています。

学校関係者の皆様、「IoTできれいな花を咲かせよう!」にご興味、ご関心があればぜひ、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

(参考)
日鉄日立システムエンジニアリング
栃木県立栃木工業高校

広報・IR室 エキスパート 奥村 康子

企画段階から紹介したくてしかたなかったこのコンテンツ、IoTとプログラミング学習がセットになっていて、今の時代に即していると思います。学校の教材にマッチすると思いますので「試したい」と思われたらぜひ、お問い合わせください。

栃木工業高校の先生方、生徒の皆さん。取材にご協力いただきましてありがとうございました。みなさんの今後のご活躍をお祈りしています。

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