TO THE FUTURE NSSOL STORIES TO THE FUTURE NSSOL STORIES

2019-11-26 インソーシング DX
TwitterTwitterでシェア FacebookFacebookでシェア

LINEがDX時代に求める社内システムのあるべき姿、開発パートナーのNSSOLはどう応えたか

コミュニケーションアプリ「LINE」をプラットフォームに、モバイル送金・決済サービスの「LINE Pay」やAI(人工知能)アシスタントの「Clova」など、さまざまなサービスをリリースし続けるLINE。さらなる事業拡大を見据え、社内業務システムの刷新を進めている。その刷新に開発パートナーとして参画するのが日鉄ソリューションズ(NSSOL)である。
LINEは、どんな社内IT基盤を構築しようとしており、そのためにどんな開発パートナーを求めているのか。LINEの執行役員でEnterprise ITセンターの片野 秀人センター長と、NSSOLのソリューション企画・コンサルティングセンターの當田 修之グループリーダーと産業ソリューション事業部の秋葉 尊グループリーダーが“あるべき姿”について語り合った。

―LINEは今、社内業務システムの改革に取り組んでいると聞きます。どんなIT基盤の構築を目指しているのでしょうか。

片野 秀人氏(以下、片野):LINEの執行役員でEnterprise ITセンター・センター長の片野 秀人です(写真1)。社内システム担当のほか、成長領域に特化した開発子会社であるLINE Growth Technologyの取締役も2018年から兼任しています。

LINEの執行役員でEnterprise ITセンターの片野 秀人センター長。LINE Growth Technologyの取締役を兼任

私は2009年、サービスインフラ担当としてライブドアに入社しました。その後、経営統合を経て環境の変化もあったのですが、当時の社内システムのサービスレベルが、社外向けサービスのレベルより明らかに低く、開発エンジニアとして社内IT部門に何度も改善要望を入れていました。

すると「そこまで不満があるのなら、自由にやって良いので、改善して欲しい」と、2013年からサービス開発と並行して社内システム全体を担当することになり、以後、社内システムの改善に取り組んでいます。

現在構築している社内システムの最終目標を一言でいえば、「LINEの成長スピードに、サービスを生み出す技術者が追随できるだけの仕組みを整備すること」です。

サービスレベルを80点から100点に高めるために全体を見直し

私がセンター長に就いて以来、LINEの従業員は毎年増え続け、新規事業や新会社も次々と立ち上がってきています。社内システムがサービス提供しなければならない対象は増える一方です。

そのため、まずは最低限のサービスレベルを実現したうえで、システムの追加や廃止、改善を繰り返してきました。2017年頃に何とか70〜80点レベルにまで社内システムのサービス品質を高められました。具体例を挙げれば、共通のミドルウェア環境が提供できている、各種システムを利用するためのID/パスワードが統一されている、アカウントの発行・停止がすぐにできる、といったことです。

しかし、こうしたやり方では、システムは当然、つぎはぎだらけになっていきます。事業のグローバル展開も始まり、企業規模のさらなる拡大が確実な中では、グローバルでの全社的なサービス品質をさらに高めることが困難なことは明らかです。

並行して、グループ企業や社外のパートナー企業ともリアルタイムに情報を共有しなければならないプロジェクトが増えていましたが、システムが原因で、それが難しい状況も発生してきたのです。これらの課題に対応するには、システムの根本的な見直しが必要だと判断したのです。

ただ私自身は、開発部隊も率いているため、社内システムが目指す姿は頭の中にあるのですが、具体的に開発できるだけの形に落とし込むまでの余力がありません。そこで、単なる開発だけでなく、アイデアの落とし込み段階から支援を仰ごうと考え、最も提案内容がしっくりしていたNSSOLさんに協力をお願いしました。

想いが強いだけに抽象度の高い依頼内容に

當田 修之氏(以下、當田):NSSOLのソリューション企画・コンサルティングセンターでグループリーダーを務める當田 修之です。私は、企業が実現したいことをシステムに落とし込んでいく上流工程のコンサルタントとして、複数の企業を担当しています。

NSSOLのソリューション企画・コンサルティングセンターの當田 修之グループリーダー

ただ2017年5月に片野さんが描かれているシステム像を初めて聞いた時は正直、面食らってしまいました。目指すところは何となくは分かるのですが、実に抽象度の高い“ふわっ”とした依頼だったからです。

何とか期待に応えられるよう、片野さんが発する言葉の裏の思いまでを汲み取ることに注力しました。目指すべき姿をより正確に見極めるために打ち合わせの最中は、それこそ片野さんの顔をのぞき込み、その表情から感情を読み取ろうとしたほどです。どこに力点があるのかを判断するためです。

そうして、「なぜ(Why)」「何を(What)」といったことを固めていき、当社としての考えを伝え、次の議論につなげるというキャッチボールを何度も繰り返しました。当社もいくつかのコンサルティングメニューを持っていますが、これほど型にはまらない提案をしたのは、実のところ今回が初めてです。

片野:私の頭の中では、かなり整理はできていたんですが(笑)。

先にもお話ししたように、社内システムの最終目標は「これからの成長のためにはサービス開発の生産性をより高められるよう、エンジニアが生き生きと働ける環境が必要であり、彼らが必要とする情報を最適な形で提供できること」です。そのためには、経営陣から、事業部、部門、さらには個人のレベルでも、それぞれが必要とする情報が、必要な形で提供できなければなりません。

確かに“ふわっ”とした話かもしれませんが、當田さんとの対話の中では、私が気にしている細かな点を含め、実現したいことをできる限り伝えようとしたことが“ふわっ”とした印象を強めたのかもしれません。情報伝達が不足すると後から當田さんに突っ込まれることが分かってきたからです。

こうしたアイデアのキャッチボールを通じて、対応の柔軟さや提案レベルの高さを体感できました。これがNSSOLを選んだ一番の理由です。型から外れた仕事でも対応してくれそうだという期待がありました。

エンジニアが抱く“不条理”をパートナーにも味わわせない

―開発現場ではどうだったのでしょうか。SNSなどの個人向けサービス開発では、大規模な社内システム開発とは異なり、アジャイル開発などが浸透しています。

秋葉 尊氏(以下、秋葉):NSSOL産業ソリューション事業部システムエンジニアリング第四部 第8グループリーダーの秋葉 尊です。私は2017年7月から、開発のPM(プロジェクトマネジャー)としてLINEの社内システム刷新プロジェクトに参加しています。

NSSOL産業ソリューション事業部システムエンジニアリング第四部の秋葉 尊 第8グループリーダー

私の本プロジェクトの第一印象は、片野さんの依頼には十分に対応できるだろうというものです。社内システム領域においてもアジャイル開発で取り組んだ経験が何度もあったからです。

ただ、自社だけでなくパートナー企業を含めて「エンジニアの幸せのために」という片野さんの熱量には驚かされると同時に、大変に共感しました。

片野:それは、私自身がSIer出身だからでしょう。エンジニアには誰しも、自身が目指す技術者としての理想像があります。ところがSIerのエンジニアとしては、それを実現しにくい面があるのは事実です。そのことをSIer時代の私は「不条理だ」と感じていました。

現在の私は発注側に“たまたま”座っているだけです。身内であれ社外であれ、エンジニアの誰にも「理想像を目指すことができない」といった想いを味わってほしくありません。だからこそ、エンジニアにとって“あるべき環境”作りに力を入れているのです。そうした環境があれば、多少は忙しくても過ごしやすいはずで、エンジニアとしてのモチベーションを高く保ってもらえると考えています。

秋葉:開発フェーズにおいて、我々からの提案も前向きに受け入れられるのは、エンジニアとしてはありがたい環境です。挑戦する意欲さえあれば、自身がスキルアップできる機会が得られるからです。

片野:確かに秋葉さん以外の開発メンバーからも少なからず提案がありますね。SIの現場エンジニアの多くはアイデアを持っていても一般には躊躇(ちゅうちょ)してしまい、意見を言わない人も多いので。

何かを提案できる人は、それなりのスキルを持っています。開発メンバーの人選に我々は要求を特には出していませんが、そうした人材をNSSOLさんが選んでくれているのでしょう。

リスクの事前共有が風通しの良さを生む

もう1つ、私自身の経験から言えば、エンジニアが働きやすい環境を整えるには、失敗を許容できるかどうかがカギになります。共同作業の基本は人間関係にあるだけに、失敗が認められない環境だと関係が、どうしてもギクシャクしがちです。

ただ失敗にも許容範囲がありますので、自由に動いて良い範囲を事前に明確に示すようにしました。それがエンジニアとの良好な関係、ひいてはより大きな成果につながるのです。

秋葉:片野さんとの事前のリスク共有により、より自由度の高い提案ができていると感じています。リスクの存在が分かっていれば、何か問題があれば隠すことがなくすぐに報告できるため、大きな問題になる前に対策を打てます。結果、発注側と受注側の区別なく1つのチームとして取り組め、仕事のレベルも確実に上がっています。

—現在、LINEとNSSOLが共同で開発しているシステムは、どのようなものですか。

片野:NSSOLさんに取り組んでもらっているのは、規模が大きく難度も高い「OPERA(オペラ)」プロジェクトの上流レイヤーの開発です。社内リソースの可視化に向けて、ビジネスプロセスにまで踏み込んだ仕組みになります。

秋葉:OPERAは、片野さんが先に説明された、経営陣から現場のエンジニアまでが必要とする情報をストレスなく入手できるようにするための社内基盤です。最大の特徴は、データ入力の煩わしさを徹底的に排除していることです。技術的にはアーキテクチャーからUI(ユーザーインタフェース)まで、あらゆる技術選択に我々も関わっています。

ワーカホリックになれるのは当事者意識が強いから

片野:当社は、現場の要求に素早く応えるため、社内システムもこれまではほとんど自社開発してきました。ただ、規模感も難易度も高まってきたので、LINEのスピード感に追随でき、かつ、我々が目指すところを共有できるスキルを備えた開発パートナーにはプロジェクトに加わってもらうようになってきています。

外部パートナーとの協働が増えたことで、当社が学ばせてもらっていることも少なくありません。たとえばコンサルティング領域での當田さんとの対話では、他業界での取り組みなどからヒントを得られることはしばしばですし、私の考えを、すっきりとまとめ明文化してくれたことは“ありがたい誤算”でした。

そもそも私は明文化するのが不得手ですが、当社のエンジニアは総じてスキルが高いだけにモヤモヤした点があっても開発は進んでいました。しかし、考えを明文化できないことは業務が属人化する根本原因です。風通しの良さを保つための見える化の大切さに改めて気づかされました。

秋葉さんとの開発では、アイデアのキャッチボールが楽しくて嬉しい。私の考えに対して異なるアプローチから提案が得られるからです。それが議論につながり社内システムにも新たな価値がいくつも生まれています。

いずれにしてもNSSOLさんは良い意味でワーカホリックということです(笑)。

秋葉:それは、「開発の最前線に立って社内システムのあるべき姿を最も考え、愛しているのは我々だ」という自負と責任感があるからこそです。社内システムを良くするためなら、片野さんをはじめ、LINEの経営層や経営企画の方々にも提言していくことが当社の責務だととらえています。

―両者は今後、どのようにプロジェクトを進めますか。

片野:当社メンバーの中でもOPERAに携わっているメンバーはごく限られています。そこにNSSOLさんからは何人も参加してもらっていますから、そこから、当社がどう評価しているかは分かっていただけるでしょう。

社内システムにおいては、コンプライアンスなど考慮すべき点はいくつもあります。ただ現状は、サービス品質の向上が最優先項目です。当社の誰もが、より簡単に必要な情報を入手できるよう、当社ではカバーし切れない業務領域での、さらなる提案に期待しています。

秋葉:円滑な業務の遂行にはPMから現場の開発担当者までがワンチームで臨むことが不可欠です。LINE、NSSOL、他協業先(他パートナーSIer等)という企業の枠を超えて共創し、さらなる成長を通じて、担当サービスの価値を上げ続けていくことを目指し・実現していきたいです。

當田:片野さんの要望には今後も全力を尽くして対応しますが、一方で、コンサルタントとしては、本来は存在しなくても良くなることが理想です。つまり、長期的には、我々の役割をLINEの社員の方自らが担い、あるべき姿を実現できることが最終的なゴールです。そのため仕事内容の引き継ぎをすでに進めていますが、そうした中でも切磋琢磨しながら、より良い提案ができるよう挑みます。

対談を終えて。LINEの片野 秀人氏(中央)と、NSSOLの當田 修之(右)、同秋葉 尊(左)

関連リンク