NSSOL×出雲市×イーグリッドによる地方創生への挑戦
~エンジニアとともに地域が育つ「エコシステム」をつくる~
アジャイル開発などDXを実装するITエンジニアの人材確保は、業界全体の課題です。そうした中で、NSSOLは島根県出雲市様と株式会社イーグリッド様とともに、3者共同で「インキュベーションラボ」の立上げを目指しています。これは地方のITエンジニアが、首都圏の企業と協業する場を設けることで、高難度の開発案件にかかわる機会を作り、ITエンジニアを育成する仕組みをつくる試みです。この取り組みが描く未来。それはエンジニアが成長できる舞台を増やし、出雲市も活気づける「エコシステム」を生みだしていくことです。
座談会話者
写真左から
出雲市長 飯塚 俊之様
NSSOL 流通ソリューション事業本部 小島 朋夏
NSSOL 流通ソリューション事業本部 千葉 諒太郎
株式会社イーグリッド 代表取締役 小村 淳浩様
「出雲市をテックの街にしたい」
千葉 諒太郎(以下、千葉):イーグリッド様には現在、首都圏のスタートアップ企業の開発案件にご協力いただいています。首都圏では近年、プログラミング言語「Ruby」を扱える人材の確保が難しくなっています。Rubyは、Railsという強力なフレームワークと組み合わせることでWebシステムを素早く構築可能なことから、特に日本のスタートアップ企業において多く採用されてきました。そのようなエンジニア不足の背景がある中、特定の機能開発をまるごとおまかせしても差し支えなくこなすことのできる、ガバナンスのよく効いた開発体制を持つイーグリッド様のご協力を大変ありがたく思っています。
小村 淳浩(以下、小村):以前からお付き合いのあるNSSOLさんに、今回「インキュベーションラボ」の構想へのご参画を提案したのも、こうした「発注者が、プロジェクトの人材を固定できず、人材流動性に悩まれている」というIT業界の課題の解決が必要だと考えていたからです。
小島 朋夏(以下、小島):イーグリッド様が構想されている「インキュベーションラボ」とは、どういった施設なのでしょうか。
小村:「インキュベーションラボ」は、イーグリッドが中心となり、島根県や出雲市に拠点を置くIT企業が連携して、地域の課題解決を行う「場」を作るという構想です。
具体的には、NSSOLのような首都圏の企業と協業することで高難度の開発案件に関わる機会を作り、プロジェクトの実経験を通じてエンジニアの育成・底上げをしていくことを目指しています。
千葉:エンジニアの育成では、ペアプログラミングなどのOJTが効果的であると、私たちも実感があります。
加えて「どんなプロジェクトを経験できるか」も、エンジニアの成長スピードを左右します。例えば、安定フェーズに入ったプロジェクトよりも、新規プロジェクトのほうが、新しく開発を行う部分が多く、スピードも技術も求められます。加えて、高難度の案件であれば、より飛躍的な成長につながります。
「インキュベーションラボ」に、私たちNSSOLが関わることで、それらの機会を提供できると考えています。
小村:「インキュベーションラボ」を構想する上でも、地方でもエンジニアがスキルアップできる環境を得られるようにすることが重要だと考えていました。地方においては、そもそも難易度の高い開発案件に関わる機会が少ないことが現状であり、課題として感じていたからです。
千葉:私自身も地方出身なので、先端技術を採用しているプロジェクトが首都圏に偏っていることをよく理解しています。イーグリッド様の「インキュベーションラボ」の構想は、地方のエンジニアの育成・底上げにつながるものだと思っています。
地方の若い世代の「選択肢」を増やすということ
小島:こうした課題と取り組みを、行政はどう捉えているのでしょうか。
飯塚 俊之(以下、飯塚):行政としても、この取り組みを応援したいと思っています。
進学や就職を理由とする若い世代の地元離れは、出雲市にとっても他人事ではありません。大都市と比べると進学先や就職先の選択肢が多くないのが地方都市の実情で、いかに「働いてみたい」「やりがいがある」と思える仕事、職場を増やせるかが地域活性化の鍵となります。出雲市でIT産業が育てば、魅力的な仕事の選択肢が増えることにつながります。
「インキュベーションラボ」のような取り組みは、U・Iターン者の増加のみならず、出雲市の若い世代に希望を与える取り組みになるでしょうね。
小島:小村様ご自身も、Uターンで出雲市に戻り、そして起業されていますね。U・Iターン先としての出雲市の魅力は、どんなところにありますか。
小村:働く環境としては、「通勤が楽であること」「自然が多くオンとオフのメリハリを持って働けること」が、大きな魅力ですね。当社は私以外にもU・Iターン者が多いのですが、そのメンバーを中心に「釣り部」が結成されたほどで、大都市では実現できないような環境が身近にあり、ゴルフや釣りに行くにも20分ぐらいあれば現地に行けます。
あえてネガティブな要因を挙げるとしたら、「起業する上で、情報格差がある故に大規模案件に関わる機会が得づらいこと」と考えていることでしょうか。しかし、当社をはじめ出雲市のIT企業が大都市の開発案件に参画できているように、工夫次第でそうした機会は得られると思います。
千葉:ロケーションフリーな働き方が広がっていますが、特にITエンジニアはその制約が少ない業種ですからね。
飯塚:出雲市では、リノベーションした古民家や廃校をオフィスとして活用した取り組みがあります。これらのオフィスは、ありがたいことに東京の企業や地元企業にご入居いただき、現在満室となっています。今後もこうした拠点整備を進めて、さらなるU・Iターンの促進につなげていきたいと考えています。
小村:地域課題の解決には、ITの力が欠かせません。地方でこそ、企業も個人も成長し、地域課題を解決するソリューションが生まれることが必要です。そうした課題感からも、出雲市は支援に力を入れていただいていると認識しています。
エンジニアが育つと、企業が育つ。地域も育つ。
インキュベーションラボが目指す出雲の「エコシステム」
小島:出雲市長・飯塚様にお聞きします。今、小村様も言及されましたが、出雲市はIT人材育成に積極的だとお聞きしました。それにはどんな背景があるのでしょうか。
飯塚:「チーム出雲オープンビジネス協議会」という、市内IT企業21社が組織する団体があります。この協議会に精力的な活動をしていただいていることが大きかったと思います。
小村:Rubyの開発者である、まつもとゆきひろ氏が島根県在住ですが、まつもと氏を中心にIT業界の皆さんが精力的に活動していらっしゃいます。私が約18年ぶりにUターンしてきた時、こうした活発な動きに驚きましたね。
飯塚:今日、地方自治体が抱えている課題は、行政だけで解決できるものではありません。そのためには、民間企業の力が欠かせませんが、地域に「好循環」をもたらすことと、「エコシステム」が重要であると考えています。
「インキュベーションラボ」での取り組みを通してエンジニアが成長し、エンジニアが集まる。そして、さまざまな企業から挑戦的なビジネスの機会をいただき、成長したエンジニアが地元のDXに貢献してくださる、そんな好循環が巡る未来を実現したいと思います。「人材の成長」と「ビジネスの発展」は欠かせない両輪であり、こうしたエコシステムが生まれることに、出雲市としても期待しています!
千葉:NSSOLとしても、その好循環をまわしていけるよう、「インキュベーションラボ」への参画をはじめ、お力になれればと思います。
─ありがとうございました。