プロジェクト概要
背景
健康状態の定期的な確認や疾病の発見を目的に、明治安田生命保険は「みんなの健活プロジェクト」を推進している。
ソリューション
そのサービスの一つとして、顧客の健康バロメーターとなる「健活年齢」を提供。自社が保有する顧客データを基にAIモデルで疾病・死亡リスクを予測し、それらに基づいて健活年齢を算出している。
成果
独自のAIモデルを構築したことで新しいサービスの開発が容易になり、顧客に一層寄り添ったサポートを提供する体制を構築できた。このAIモデルは保険の引き受け査定などにも活用していく。
自社データ活用で健康度を指標化
「ひとに健康を、まちに元気を。」をスローガンに掲げる明治安田生命保険は、2019年に保険契約者や地域住民の健康増進を支援する「みんなの健活プロジェクト」を立ち上げた。顧客に定期的な健康診断の受診を促す保険商品の提供や健康に関する情報提供を通じて、契約者の疾病予防と健康増進につなげる取り組みである。
事務サービス企画部事務開発担当保険リスク調査グループの黒田 暁グループマネジャーは、「従来の生命保険はお客様に万が一のことがあった場合に保障するという性質のものでした。お客様に常に寄り添ってサポートしていくために、日ごろからお客様の疾病予防や健康増進に役立つ支援をしていきたいと考えています」とプロジェクトの目的を語る。
明治安田生命はこのプロジェクトで、顧客の健康バロメーターとなる「健活年齢」という新サービスを開発し、2024年4月に提供開始した。健康診断の結果や既往歴などから個々の顧客の疾病・死亡リスクを予測し、それを年齢に換算したのが健活年齢である。健活年齢が実際の年齢より若ければ、リスクが平均より低いことを示す。顧客に自身の健康状態を知ってもらうことで、疾病予防に向けた行動変容を後押しする狙いがある。
疾病・死亡リスクを評価する際、同社はこれまで外部のサービスを使って評価していた。しかし新サービスでは、自社が保有する健康診断データや疾病履歴データとAI(人工知能)を組み合わせ、個々の顧客の属性データに基づいて疾病別リスクと健活年齢を算出する「健活未来予測モデル」を内製した。

黒田 暁氏
高精度なモデルを容易に構築
このAIモデルを実装するために、明治安田生命は日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)をパートナーに選び、AIモデルの構築・運用・管理機能を持つ「DataRobot(データロボット)」を採用した。明治安田生命は2018年からDataRobotを利用しており、今回もNSSOLとのパートナーシップの下でAIモデルの開発・運用環境を構築した。明治安田システム・テクノロジー MYソリューション統括本部基盤システム開発部クラウド基盤開発室の三由 政文氏は、「NSSOLはプロジェクト管理がしっかりしているので、DataRobotの導入を安心して任せられました。問い合わせ対応もスピーディーで、とても助かりました」と振り返る。
DataRobotの使用感についても、三由氏は「非常にユーザビリティーの高いツール」と評価したうえで、次のように語る。「データを入力するだけで高精度のAIモデルを作成できるうえ、以前、RやPythonでAIモデルを構築していたときよりも高い精度を実現しています。DataRobotは、さまざまなアルゴリズムを使って複数の予測モデルを自動生成し、その中から最も精度の高いモデルを選定しているためです」。
黒田氏は、DataRobotのMLOps機能にも注目している。将来、医療技術の進歩などによってAIモデルの予測精度が劣化する可能性があるため、データの傾向の変化を長期間にわたってモニタリングし、予測精度が劣化すると判断される状況になればAIモデルを再構築する必要がある。「このようなMLOpsの仕組みを一から開発しようとしたら大変ですが、DataRobotにはその機能がすでに用意されています」。

三由 政文氏
保険の引き受け査定にもAIモデル
今回のプロジェクトにおける最も大きな成果は、「リスク予測のために独自のAIモデルを内製したこと」と黒田氏は語る。外部のサービスを使っていたときとは違って、「サービスの拡充や新規サービスの立ち上げといった、次の一手を容易に打てるようになったことが大きい。より一層お客様に寄り添うということが、AIモデルの内製化を通して一歩前進しました」(黒田氏)。
明治安田生命は今後、AIモデルをほかの業務にも展開していく考えである。既に2025年1月から、特定の生命保険商品の引き受け査定にAIモデルを応用するための取り組みも始めた。従来の医学的知見に基づく査定に加えて、AIモデルによる予測を加味することで、これまで以上に正確な査定を目指している。「AIはまだ新しい分野なので、NSSOLにはこれからも心強いパートナーとして相談に乗ってほしい」と黒田氏は期待する。
コアテクノロジー
●データサイエンス、生命保険に関する業務知見、「DataRobot」の導入・活用ノウハウ
システム概要
●カスタマイズ可能なAIアプリを開発するソリューション「DataRobot」
関連SDGs

健康寿命の延伸

地方創生の推進
「健活年齢」算出システムの構成

・NS(ロゴ)、NSSOL、NS Solutionsは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。
・その他本文及び図表内に記載の会社名及び製品名は、それぞれ各社の商標又は登録商標です。


明治安田生命保険相互会社様
本社:
東京都千代田区丸の内2-1-1
創業:
1881年
総資産:
46兆4578億円(2024年9月末現在)
保険料等収入:
1兆4747億円(2024年4月~2024年9月)
従業員数:
4万7493名(2024年9月末現在)