プロジェクト概要
背景
マブチモーターは「経営計画2030」の一環として、2023年から生成AIによる間接業務の生産性改善に取り組んでいる。
ソリューション
セキュリティーに優れた「exaBase 生成AI」を選定し、NSSOLの支援のもとで生成AIのトライアルを実施。同社の業務にどう活用すべきかを徹底的に検証し、2024年10月に全社展開した。
成果
生成AIは幅広い業務で使用され、最初の3カ月だけでも約9500時間※(年換算約3万8000時間)の業務削減効果を生み出した。今後は機械学習の導入も含め、AIの活用を一層進める計画だ。
綿密なトライアルを経て全社導入へ
自動車や家電、医療機器などの幅広い分野で小型モーターを製造・販売するマブチモーターは、ITを活用した経営基盤の強化と間接業務の効率化に取り組んでいる。特に施策の一つである生成AIによる業務の効率化を強力に推進中だ。
2023年に生成AIの導入を検討し始めた当時、マブチモーターは生成AIの革新性に関心を持ちつつも、生成AIのハルシネーションや情報漏洩に対するリスクも感じており、その制約の中で「生成AIが当社の業務に役立つだろうか」という懸念が社内にあったという。しかし同社は、生成AIの導入パートナーとして日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)を選び、「トライアル期間を設定して、懸念点をNSSOLと一つひとつ解決しながら生成AIの全社導入につなげていきました」とIT本部情報システム部アソシエイトの岩岡 藤子氏は振り返る。
生成AIのトライアルは、社内から募った有志約130人で実施した。各部門におけるユースケースや課題を洗い出し、生成AIの有用性をアンケートなどでしっかりと検証していった。
情報漏洩のリスクについては、法人向け生成AIサービス「exaBase 生成AI」を採用することで解消した。この生成AI サービスは「入力した情報が学習に利用されず、社内であっても部門ごとにアクセスできる情報を制限できる」(岩岡氏)というセキュリティー機能が評価された。
生成AIのユースケースは多彩
トライアルを経てマブチモーターは、2024年10月にexaBase 生成AIの全社運用を開始した。
その用途は幅広い。人事・総務本部マブチラーニングインスティテュート アソシエイトの東 陽平氏は「社内研修用の動画を海外拠点向けに翻訳する業務をexaBase 生成AIで大幅に効率化しました」と明かす。従来は手作業で英語に翻訳していたが、生成AIで翻訳した原稿を人がチェックする形に変更し、動画の字幕を読みやすい文字数に収める作業も生成AIで自動化した。「1、2カ月必要だった作業が、早ければ5日程度で完了します。現在は中国語の翻訳にも着手しました」(同)。
技術管理部アソシエイトの白井 俊成氏は、海外の特許調査をする際に生成AIの翻訳機能を活用しているという。「自社技術が他社の特許に触れないよう、調査1件当たり1000~2000件の特許を調べていますが、英語、ドイツ語、中国語などで書かれた海外の特許を精査する必要があるうえ、特許の文章構造が非常に複雑なため、一般的な翻訳ツールではうまく翻訳できないことが少なくありません。そういう難しい文章をexaBase 生成AIに翻訳させると、文脈に沿った解釈を示してくれます。海外の特許調査にかかる翻訳の作業時間は、体感的に半分から3分の1になりました」。
表計算ソフトの関数作成が容易に
生成AIは、表計算ソフトの関数やVBAコードの生成にも活用されている。その効率の良さについて、購買・生産管理本部設備調達室アカウントエグゼクティブの水戸 香奈氏はこう語る。「国内外の製造拠点で使われる消耗品のコストを表計算ソフトで分析するとき、年間35万件に達するデータの粒度をそろえ、多様な切り口で分析するために、半日くらいかけて関数を作成していました。しかし、exaBase 生成AIなら、やりたいことを入力すると関数やVBAコードをすぐに作成できます。とても強力なツールだと感じました」。
生成AIの導入効果は非常に大きく、2024年10月からの全社展開から3カ月で9500時間を超える業務削減効果が得られた。生成AIを含む全社での業務削減効果の合計は約1万5000時間だったので、業務削減効果の63%を生成AIの活用で達成したことになる。生成AIの利用度が低い部門への普及活動をさらに進め、生成AIの高度な利用を全社で共有することで、今以上に高い水準での業務削減効果の獲得を目指している。
マブチモーターは今後、AIの高度活用を進めていく考えだ。生成AIでは主に業務の省力化を志向していたが、これに機械学習を加え、業務の付加価値を高めていく。この新しい取り組みに対して岩岡氏は、「豊富な技術力と経験を持つITパートナーとして、NSSOLには引き続き支援してほしい」と期待する。

岩岡 藤子氏

東 陽平氏

水戸 香奈氏

白井 俊成氏
コアテクノロジー
●生成AIに関する知見、生成AIサービス「exaBase 生成AI」の導入・活用ノウハウ
システム概要
●法人向け生成AIサービス「exaBase 生成AI」
exaBase 生成AIは株式会社Exa Enterprise AIが開発・提供しています。
関連SDGs

ITによる業務効率化とペーパーレス化を推進

エネルギー効率の良いプロダクトの開発と提供を目指す
マブチモーターにおける生成AIの導入プロセス


- ※ 対象となるユーザーの3カ月の総労働時間は約38万4000時間であり、それに対しての削減効果時間が9500時間(約2.5%)です。
・NS(ロゴ)、NSSOL、NS Solutionsは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。
・その他本文及び図表内に記載の会社名及び製品名は、それぞれ各社の商標又は登録商標です。


マブチモーター株式会社様
本社:
千葉県松戸市松飛台430番地
資本金:
207億481万円(2024年12月31日現在)
売上高:
連結1962億1200万円(2024年12月期)
グループ従業員数:
1万8032名(2024年12月31日現在)