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2016-11-17 アウトソーシング サステナビリティ
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対談:NSSOLの都市型データセンターで、年平均PUE1.33を達成

~地球温暖化対策への貢献を果たす~

クラウド時代のお客様のビジネスをフルサポートする目的で、2012年に開設したNSSOLの「第5データセンター(以下5DC)」。安全・堅牢性、万全のセキュリティ、高密度対応に加えて、徹底した省エネにより、地球環境への配慮を追求した次世代型のデータセンターです。

その5DCでは、データセンターの評価指標のひとつであるPUE(Power Usage Effectiveness)を2015年度に年平均で1.33を記録しました。

世間一般にはまだあまり知られていないこのPUEとはなんなのでしょうか。またPUE1.33が持つ意味とはなんでしょうか。

今回は、5DCの空調設備の施工をご担当いただいた三機工業(株)野口氏をお迎えした対談です。

福永 真二
NSSLCサービス株式会社DCサービスセンターファシリティ企画管理部長
NSSOLの子会社であるNSSLCサービスにて、全国5カ所にあるNSSOLデータセンター全体のファシリティの企画・設計・工事管理を担当。5DCの建設時には設計時よりたずさわっている。

野口 哲氏
三機工業株式会社 常任理事 建築設備事業本部技術統括副本部長。
1925年会社設立以降、空調・冷熱技術開発に取り組み、実績を重ねる。現在は、エンジニアリングで社会に貢献する「総合エンジニアリング企業」として社会への貢献を目指す。
データセンターにおいては、各種案件におけるノウハウを蓄積し、環境性能に優れたデータセンターの整備を手がける。
三機工業株式会社Webサイト

そもそもPUEとは?

福永:PUEとは、データセンターの電力効率を示す指標で、"PUE=データセンターの消費電力÷データセンター内IT機器消費電力"で求められる値で、この値が小さい程、電力効率がいいデータセンターであることを示しています。

野口:簡単に言えばコンピュータの発熱を、いかに電力を使わずに効率よく冷やしているか、ということですね。

福永:そうですね。コンピュータはどうしても発熱を伴いますが、その熱をそのままにしておくとコンピュータにダメージを与えてしまいます。データセンターはコンピュータが密集しており、しかも24時間365日稼働しています。その発熱を冷やすために、コンピュータルームをずっと冷却し続けなければなりません。その冷却費をどう抑えるかという課題があります。

野口:PUEは環境問題の側面から注目されている指標で、その値が低いほど成績がいいということになります。

データセンター内部(イメージ)

福永:PUEという言葉が出てきたのは10年くらい前でしたよね?

野口:そうですね。2000年に入ってインターネットが普及して、インターネットデータセンター(iDC)が世界中で整備されました。ちょうどその頃、米国で環境保護庁がレポートを出したのを機にグーグルやヤフー、マイクロソフトがデータセンターの省エネ施策を発表しだして、そこで使われ始めたのがPUEという言葉です。

福永:日本でも、東京都が環境問題対策として、CO2排出削減を目的とした「地球温暖化対策計画書制度」、「総量削減義務制度」に乗り出したのがその頃で、5DC建設においても重要なポイントになりましたよね。

野口:省エネを歴史的な側面からお話しすると、1990年代までのメインフレームと呼ばれるコンピュータが主流の時代は電算センターと呼ばれる建物にコンピュータを置いていました。当時のコンピュータは非常に高価で建物よりも高かった。しかも10年、20年使い続けるのが当たり前という時代だったので、コンピュータを保護するために冷却するのも手厚く慎重でした。

福永:冷却代も相当かかったでしょうね。

野口:それが、2000年前後になってサーバの時代になると、性能の高い製品が次々に登場してくるし、10年経たないうちに情報処理量に格段に差が出るなど、これまでのメインフレームを長い間使い続けるという意識がなくなっていきました。そのため、それまでの手厚い冷却は必要ないということで、大胆な省エネができるようになりました。

NSSOLの5DCの出したPUE1.33以下の評価は?

福永:この間、PUEという点ではどういう変遷があったのでしょうか。

野口:第一期のデータセンターの建設ラッシュが1990年から95年にかけてありました。まだメインフレームが主体のデータセンターでしたが、その時のコンピュータの消費電力量と冷却に必要な消費電力量がほぼ同じか、あるいは冷却の方が多かった。比率でいうと1:1~1:1.5くらいですね。従って、この時のPUEは2.0~2.5になります。

福永:そうですね。

野口:その後、サーバの時代になると、そこそこ省エネの設備を入れればPUE1.7まで下げられるようになりました。現在は、エネルギー単価が高い中、法令改正や企業の環境への意識の高まりを受けて、各データセンターでは必死に省エネに取り組んでいます。その中でも省エネをやりつくしたデータセンターがようやくPUE1.4ギリギリのところまで出せるようになったというのが現状ですね。

福永:データセンターは、北海道など東京からかなり離れたところにある「地方型」、東京近郊にある「郊外型」、都内にある「都市型」に分けられますが、都市型のPUEを下げるのが大変なんですよね。

野口:そうです。寒冷地だと、もともと寒いのでいい結果が出やすいのですが、お客様にニーズが高いのは圧倒的に都市型です。しかし都市型でPUE1.4をクリアするのは並大抵ではないです。

都市型だとPUEを低くすることが難しいワケ

当社 第5データセンター外観

福永:確かに都市型でPUE1.4というのは聞いたことがないですね。

野口:そうです。5DCは都市型であるにもかかわらず開設当初からPUE1.4を達成し、その後も下げ続けているというのは非常に稀なケースだと思います。 先日、鹿児島で開催された「空気調和・衛生工学会大会」で、当社の事例として5DCがPUE1.33を達成した論文を発表させていただきましたが、参加者のみなさんの関心も高くたくさんの方が聴講にいらっしゃっていました。

福永:都市型でPUEを下げるのが難しいのは、立地に起因するのですよね。

野口:そうですね。米国のデータセンターは、外気を直接入れたり、地下水を使ったり自然エネルギーを利用してPUE値を下げています。それをそのまま日本の都市型に適応できるかというと、それが難しい。外気を直接利用するには、できるだけたくさんの空気を取り込むためのスペースが必要となります。都内の狭い敷地内に建設する場合は、それは難しい。では、地下水はどうかというと掘ることができませんからね。

福永:だから5DCでは、従来の冷却方式を大胆に変えること、コンピュータ以外の発熱をできるだけ抑えるということにポイントを絞って対策しましたね。

野口:そうです。データセンターの空調方式は、家庭用エアコンと同じ「空冷式」を採用する例もありますが、5DCの場合、冷凍機でつくった冷水を循環させて空調する「水冷式(中央熱源冷却方式)」を採用しました。空冷式より効率的ですし、冬は導管の水を外気で冷やす冷却塔を使うフリークーリング方式を併用できるので、通年での冷凍機の電力使用量を極限まで落とせます。

ビルの屋根に設置している冷却塔(イメージ)

福永:フリークーリングについては、年間の日照時間や気温の変化、使用形態などの条件を設定して、冷却能力・電力量を厳密にシミュレーションし、制御方法の信頼性を確認して「これならいける!」と判断しました。

野口:コンピュータ以外の発熱を抑えるという点では、冷却負荷となる冷風を送風するファンのモータの発熱量を下げる工夫をすることで、冷却負荷を下げることができました。

福永:温風と冷風が混ざらないように、冷風を閉じ込めて、確実に冷風がサーバに届くような工夫をしたりしましたね。

野口:そこまでやらないと実現できない高いハードルでした。

福永:当初、野口さんからPUE1.5を切るのは難しいと言われましたけど(笑)。でも、どうしてもPUE1.4を達成したいという思いで、お互いに技術の限界に挑戦しましたね。

NSSOLがPUE1.4にこだわったワケ

福永:PUE1.4にこだわったのは、ビジネス面において、データセンターとしての差別化を図りたいということも、もちろんありました。ただ、それだけだとモチベーションがここまで持たなかったのではないかと思います。じゃあ、他に何かというと、環境への取り組みに対する意識であるとか、PUE値を下げるための技術的な好奇心であるとか、そういったことだと思っています。

野口:技術的なことでいうと、我々が省エネルギーのための仕組みについてお客様に説明さしあげる時、ご理解いただくのに非常に時間がかかるのですが、御社の場合、最初の打ち合わせから自動制御のような専門的な話が出て、しかも、こちらがドキっとするくらいの、深い知識に裏付けされた質問もあって驚いたのを覚えています。

福永:確かに、発注者側で、しかもSIerである当社がそこまで知らなくてもいいのでは、という設備の技術的な話を毎回、侃侃諤諤と議論をたたかわせていましたよね。それは、もともと製鉄所で圧延の自動制御技術だとか巨大な換気扇の省エネだとかにたずさわっていたメンバーが参画していたからでしょう。性分として技術的な追及をせずにはいられなかったのだと思います(笑)

野口:そんな雰囲気でしたので、私たちもとことんまで突き詰めることができました。これほど省エネに対する知識や思い入れは、御社の親会社である新日鉄住金さんが長年、環境問題に取り組んできたことに由来するのでしょうか?

福永:そうですね。新日鉄住金は環境問題について、社会的な使命を持って取り組んできています。なかなか自分たちでは気づきませんが、そのDNAを受け継いでいるのかもしれません。現在、経済産業省が掲げるZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)では、日本のエネルギー消費量の大きな割合を占めているオフィスビルの省力化を推し進めていますし、私たちもこうした取り組みに貢献していきたいと思っています。
三機工業さんには、これからも継続してサポートしていただき、一緒に先進的な成果を生み出していきたいと思っています。よろしくお願いします。

野口:こちらこそ。

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