データ資産のカタログ化とクラウド利用でサイロ化したデータの統合・活用を実現

日本製鉄株式会社様

プロジェクト概要

背景

ルーツが異なる製鉄所毎にそれぞれ独自にシステムを運用する中、全社的なデータ活用推進・統合がDX推進の大きな課題となっていた。

ソリューション

NSSOLの統合データマネジメントプラットフォーム「DATAOPTERYX」によるデータ資産のカタログ化、クラウドデータプラットフォームへのデータの収集蓄積。

成果

解析・分析用データ収集に要する時間を8割削減。妥当性の検証を始めとするデータ活用に必要とされてきた工数を大幅削減。

レガシーデータの活用によりDX推進を図る

日本製鉄株式会社は、「総合力世界No1の鉄鋼メーカー」を目指し成長し続けることを念頭に、中長期経営計画の4つの柱の一つとして「デジタルトランスフォーメーション戦略の推進」を掲げ、世界鉄鋼業におけるデジタル先進企業を目指している。

デジタル改革推進部 部長代理(情報システム部兼務)の杉山 真義氏は同社のDX推進の狙いの一つをこう説明する。

「当社は1960年代、70年代からデータの可能性にいち早く着目し、データ蓄積・活用を推進してきました。しかし、多くのデータは各製鉄所側にあり、詳細データの多くは製鉄所内での活用にとどまっていました。我々はシステムに蓄積されてきたデータを、データドリブンな意思決定のための貴重な資産と考えており、当社のDXを実現するためには、製鉄所のデータを含む“データ資産”にだれもが『つながり』『あやつる』ことができる環境を構築する必要がありました」

しかし、その実現には大きな課題もあった。同社の沿革からもうかがえる通り、製造データを管理するシステムの構築・運用はそれぞれの製鉄所で実施してきた歴史があり、データ定義なども個別管理し、発展してきたため、データ連携が難しい状況にあった。課題の具体例についてデジタル改革推進部 上席主幹の佐々木 智之氏はこう説明する。

「研究所や製鉄所のスタッフが、データ分析に必要なデータを収集し解析しようとする場合、データ定義・意味合いについて各製鉄所のシステム管理者に確認することが必要でした。担当者が変わると、データ定義・意味合いについて再度、問合せ・確認していました。また、各製鉄所から収集したデータは、多くの場合、本社側でサマリーとして整理した上で、経営層をはじめとした意思決定部門に渡されていました。そのため、情報伝達の時間がかかることに加え、例えば意思決定者が元データを確認したい場合にデータを遡ることができず、あらためてデータ収集を依頼する必要がありました。こうした時間と工数のロスを解消することで意思決定の迅速化、課題解決力の向上につなげることができます」

デジタル改革推進部 部長代理 情報システム部 部長代理兼務 杉山 真義氏
デジタル改革推進部 部長代理 情報システム部 部長代理兼務
杉山 真義氏

DX推進に向け、データプラットフォーム構築に着手

2020年4月にDX推進の要として創設されたデジタル改革推進部がその解決のために取り組んだのが新たな統合データプラットフォーム(NS-Lib)の構築だった。目標として掲げたのは大きく以下の2点。

一つは、権限のある人は誰もが安全・安心にデータへアクセスができること。もう一つが収集したデータの定義を知り、正しく利活用できること。新プラットフォームの開発パートナーには、同社のものづくりを知悉する日鉄ソリューションズ(NSSOL)が選ばれた。

入念な検討の上で採用されたのは、課題であった既存システムのデータ資産をメタデータでカタログ化した上で、クラウド上のデータプラットフォームに集約するソリューションだった。カタログ化にエンタープライズ企業のデータ統合において豊富な実績を持つTalend Cloud/Talend Cloud Data Catalog、クラウドデータプラットフォームにスモールスタートが可能であるとともにさまざまなデータ共有が可能なSnowflakeを採用・構成している、NSSOLが提供する統合データマネジメントプラットフォームが、今回の日本製鉄株式会社のNS-Libの中核機能として採用された。

「新プラットフォーム構築において最も苦労すると予想されたのが、データのカタログ化のプロセスでした。データのカタログ化はデータの意味合い(定義)とデータ所在地を登録する作業ですが、本ソリューションの場合、登録した定義に類似するデータを自動抽出・紐付けする機能を備えていることや、従前のデータベースとも連携できることで、工数を大幅に省力化することが可能です。本ソリューションについてはその点を高く評価しています」(佐々木氏)

デジタル改革推進部 上席主幹 佐々木 智之氏
デジタル改革推進部 上席主幹
佐々木 智之氏

プロトタイプでコンセンサスを醸成

統合データプラットフォーム構築に関するプロジェクトは2021年3月にスタートしたが、社内にはその実現を疑問視する声も少なくなかったという。

「総論としては賛成するものの、特にデータ連携・データの利活用の実現を疑問視する声は多かったですね。コンセンサスを得る上では、データ統合の意義を再認識してもらうことが重要と考え、NSSOLさんには相当な努力をしてもらい、本番プラットフォーム構築に先立ちプロトタイプを作成しています。百聞は一見にしかずではありませんが、やはりデータを直接つなげて可視化するインパクトは大きく、各種案件の推進速度が加速しました」(佐々木氏)

新プラットフォームの機能の一つとして、社内に遍在するデータをSnowflakeのデータレイクに蓄積し、データにもとづく意思決定や業務・生産プロセスの改善に活用するというものがある。一方で、全面的なクラウド移行は想定していない点も注目したいポイントの一つだ。

「IoTセンシングの普及もあり、収集データ量は増加し続けていますが、常時そのすべてを使うわけではありません。現段階では、ネットワークに負荷をかけてまで全てのデータをクラウドにあげて集約する必要はないと考えています。我々は、オンプレに多くのデータベースを有しており、Snowflakeのようなクラウドの置き場とオンプレのデータ置き場の両方を確保し、データ利用方法などに応じたデータ蓄積環境を用意することが大切だと考えています。Talendは、クラウド、オンプレの両方のデータベースに対応しており、そういう意味で、TalendとSnowflakeを組み合わせた統合データマネジメントプラットフォームは、当社と親和性が高いソリューションであったのも、大きなポイントでした」(杉山氏)

人材育成に注力し、真の意味でのDXを推進

今回構築した、NS-Libと名付けられた新プラットフォームが本格稼働したのは2022年5月のこと。その目標の一つは、これまで数週間必要としてきた解析・分析用データ収集時間の8割削減である。「データ資産をどう活用するかはこれからの話ですが、すでに6週間かかっていた業務が1週間に短縮されたという事例も現れています。また課題の一つでもあった、各製鉄所で運用するシステム管理者しかできなかったデータ定義の登録・管理作業もデータ利用者へ移行するという取り組みを行っています」(佐々木氏)

ちなみにNS-LibのLibには、ライブラリの意味に加え、自由(liberty)にデータにつながれるという開発側の思いも込められている。その実現において求められるもう一つの課題がデジタル人材の育成である。

「すでにお話しした通り、当社は早くからデータの重要性に着目し活用を進めてきましたが、高度なデータ分析・活用は、実際には研究部門や技術部門など、一部のデータ分析スキルが高い人材に限られていました。日鉄DXでは「データを基軸に業務課題を抽出し、解決できる人材」をDX人材と定義し、2030年までに1万1千人強在籍する総合職社員全員をDX人材化することを目標としています。また、その中でDX推進の中核を担うデータサイエンティストについては2,000名強の育成を目標としており、部署を問わず、総合職社員の約2割の社員が高度なデータ分析・活用スキルをもつことにより、NS-Libを最大限活用し、社員一人一人の時間の価値を高め、当社の事業競争力を向上することを期待しています」(杉山氏)

コアテクノロジー

  • ●エンタープライズでのデータ利活用ノウハウ
  • ●顧客DX戦略に即した、データマネジメント施策実現

    • クラウドベースのデータレイク構築スキル
    • データ資産のカタログ化スキル
    • クラウドベースのシステム連携スキル

システム概要

  • ●統合データマネジメントプラットフォーム「DATAOPTERYX」

    • データガバナンスソリューション「Talend Cloud/TalendCloud Data Catalog」
    • クラウドデータプラットフォーム「Snowflake」

日本製鉄株式会社様

本社: 東京都千代田区丸の内二丁目6番1号(丸の内パークビルディング)
創立: 1950年4月1日
資本金: 4,195億円
売上高: 6兆8088億円(2022年3月期)
従業員数: 106,528名(2022年3月31日現在)

※ユーザー事例の記事内容は掲載当時のものとなっております。

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