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2019-01-17 DX
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NTTドコモ様とNSSOLが共創。「デザインシンキング+スクラム開発」でAIを活用したエージェントサービスを提供開始

左からUXデザイナー 惠島 之維さん、UXデザイナー 武藤 真弘さん、スクラムマスター 伊藤 晃さん

株式会社NTTドコモ様(以下 ドコモ様)は2018年5月、スマートフォン向けのAIエージェントサービス「my daiz」の提供をスタートさせました。同サービスではさまざまなアプリケーションを利用できますが、そのひとつに記憶を見える化する「memory u」があります。

「memory u」を開発する際に求められたことは優れたUXデザインであることと、企画からリリースまで半年というスピード開発でした。ドコモ様はNSSOLが提案した「デザインシンキング」とアジャイル開発のひとつの手法である「スクラム開発」を採用し予定通り「memory u」を公開しました。ドコモ様から高い評価をいただいたNSSOLのデザインシンキングとスクラム開発はどのように進められたのでしょうか。

デザインシンキングの専門組織Beyond Experience Design Center(BXDC)のUXデザイナー惠島 之維さんと武藤 真弘さん、スクラム開発でスクラムマスターを務めたテレコムソリューション事業部 伊藤 晃さんに話を聞きました。

「おもしろそう、やってみたい!」から始まったプロジェクト

―― 今回開発した「memory u」とはどういうサービスでしょうか

伊藤:身近な人にちょっとしたお願い事をしたときに、自分も相手もつい忘れてしまうことってよくあると思います。そのちょっとしたお願い事を思い出させてくれるのが「memory u」です。相手に催促するのはなんとなく気が引けるようなお願い事を、自分の代わりに「memory u」のエージェントであるseabaくんがリマインドしたり、催促してくれたりします。

武藤:例えば、飲み会の会費精算とか。なかなか払ってくれない人にseabaくんが言ってくれたら自分もストレスにならないし、相手も「あ、忘れてた。ごめん」みたいにあまり気まずくならなくて済むと思うんです。

伊藤:フレンドリーなseabaくんに催促されても嫌な印象にはならないですから。

―― 伊藤さんはテレコムソリューション事業部所属で以前からドコモ様とはお付き合いがあったと思いますが、この話を最初にドコモ様からいただいたときはどう思いましたか。

伊藤:「おもしろそう、やってみたい!」というのが率直な感想です(笑)。私たちがふだん取り組んでいる仕事の多くは、大企業向けの業務システムの構築ですよね。一方、今回のプロジェクトはコンシューマ向けのサービスでしたし、ドコモ様のAIを活用したエージェントサービスという旬なキーワードにも惹かれました。

スクラムマスター 伊藤 晃さん(テレコムソリューション事業部)

デザインスプリントを毎日3時間×1週間×2回

―― ドコモ様はデザインスプリントの経験があったのでしょうか?

武藤:いえ、ドコモ様のメンバーはデザインスプリントが初めてとのことだったので、最初の打ち合わせの時に、その場で3時間程度のミニスプリントをしました。このミニスプリントは導入時に行っているもので、「理想のサイフをつくってみよう」をテーマにしています。これでデザインスプリントの全体の流れを把握してもらって、アイディアの出し方や、気を付ける点を練習してもらいました。

惠島:デザインスプリントはアイディアを具現化したものを1週間以内に想定ユーザーに見せて反応をもらうのが一連の流れです。今回はデザインスプリントを毎日3~4時間を1週間続けておこないました。最終的にはこのサイクルを2回繰り返しました。

―― 毎日3時間を1週間は大変ですね。

武藤:もともとデザインスプリントはスタートアップとか、そのプロダクトに社運を賭けているような人たちが使う手法なので、基本的には1週間毎日8時間行うんです。ただ8時間やらなければならないというルールがあるわけではないので、今回は議論しなければならないところを引っこ抜いて3時間に凝縮させました。

―― なるほど。どんなことを話し合ったのですか?

武藤:「memory u」のカギはUXなので、どんなUXであればユーザーに喜んでもらえるかを徹底的に議論しました。

惠島:例えば、最初にこのサービスを使うターゲットユーザーはどういう人かという「ペルソナ」を定義するのですが、そのペルソナはどういう機能があれば喜ぶだろうかとか、ペルソナが「はっとする」ような利用シーンとは何か、などをみんなで意見を出し合います。こうした議論をたくさんの絵を描いてイメージを具体的に、かつみんなで共通認識をもてるようにしながら進めました。

伊藤:ドコモ様のメンバーから「これほど脳みそが疲れた経験はない」(笑)と言われるくらい濃厚に議論を重ねました。また、限られた時間でモックアップをつくってユーザーにレビューを受けなければならないので、「絶対に今日中にこのタスクを終わらせる」といった共通認識がメンバー間の結束を強くしました。

UXデザイナー 武藤 真弘さん(BXDC)

―― なるほど。メンバーはどのような構成だったのですか?

伊藤:ドコモ様が5名とNSSOLは我々3人。ドコモ様からプロダクトオーナーを1名決めていただき、プロダクトオーナーに全ての決定権が与えられます。ワークショップでのファシリテータやコーチング、ティーチングは主に武藤が担当しました。

―― チームの雰囲気はよさそうですね?

武藤:とてもよかったです。

惠島:最初のチームビルディングの時にも工夫があるんです。

武藤:メンバー全員にあだ名をつけて呼び合うんです。

―― あだ名ですか?

武藤:はい。フラットな関係で、みんな対等に意見を言い合えるように、です。専門用語でいう「心理的安全性」をつくるために上下関係を意識させないような取り組みです。

伊藤:ドコモ様には担当部長や課長の方もいらっしゃったので、あだ名で呼び合うことには難しさもありましたが、上司と部下、お客様とベンダの立場を超えてお互いに意見を言いあえるすごくいい雰囲気をつくることができました。

―― 議論してモックアップをつくって実際にユーザーにインタビューするとのことですが、ユーザーとはどのような方ですか?

伊藤:ペルソナに当てはまりそうな人です。

―― 今回のペルソナの定義は?

伊藤:30歳代、家族がいて、時々頼みごとを忘れたり・・・など。

―― そうした条件にあてはまる方を探してインタビューするのですね。

伊藤:はい。モックアップを実際にユーザーに触ってもらってどこが魅力的に感じたかとか、どこが感じなかったかとかを聞くのですが、自分で勝手に頭の中だけでこんなのがいいんじゃないかと考えているよりは、ユーザーに聞くほうが断然、建設的だと思いました。

UXデザイナー 惠島 之維さん(BXDC)

使う人がどれだけ幸せになれるか。それだけを考える。

―― インタビューのあとはすぐにスクラム開発に移行するのですか?

伊藤:デザインスプリントから学んだことからいろいろと仮説のマッピングを変えていったりする。この仮説は合っていた、これは検証したとか。そういうのを何回か繰り返していくとこういう機能が必要だといった優先度がついてきます。

武藤:それが十分にたまったら開発に移ることにしていますが、正直、いつ終わりにすればいいかは難しいところ。いつデザインスプリントを終了して開発に切り替えるかは結構、難しい。やっている途中でこれ開発に進めるのかなと不安になったりしました。

惠島:でも、最初にデザインスプリントは2回までって決めて、実際に2回でよかったよね。

―― スクラム開発はどのように行うのですか

伊藤:ドコモ様からはプロダクトオーナー、NSSOLからは我々に加えて開発チームがメンバーとして開発にあたりました。スプリント始まりや終わりの時にプロダクトオーナーのレビューをうけたり、どれに取り組むかを決めていただいたり。とくにプロダクトオーナーがこだわったのが、デザインのアイディアを絵に落とし込むときでした。画面デザインをターゲットユーザー層に合ったものをこちらが用意して提示するのですが、なかなかOKがでませんでした。

―― それはどうしてですか?

惠島:世界観の共有がなかなかできなかった。プロダクトオーナーからは「記憶ってなくなっちゃう」そういうはかなさを出してほしいと要望をいただいて。それを擦りわせるのに何度もやりとりしました。

伊藤:この時、惠島はプロダクトオーナーからの要求に対して、「それはUXに反する。もちろんデザイン上はできるが、UX上はよくない」と反論するというバトルもありました。

武藤:私たちは、使う人がどれだけ幸せになれるかと、お客様、今回はドコモ様ですが、そのお客様の喜び度合いを重視します。そのためにはお客様とのバトルも厭いません。せっかくつくるサービスなのにリリースしたら使われなかったというのが嫌なので。

惠島:UXデザイナーはユーザーのことしか考えませんから。

―― カッコいいですね!


つらかったけれどもう一度やりたい。ユーザーのためにつくっていることが楽しいから。

―― プロジェクトは予定通りに進みましたか?

伊藤:はい。2017年の12月末から始まって、2018年の年明け1月からデザインスプリントに入って、実装して5月には開発が完了しました。そして7月2日にリリースできました。予定通りです。このプロジェクトはかつてないほど一体感があったと思っています。学ぶことも多かったし私としてはいい経験になりました。

武藤:ぼくは正直言ってつらかったです(笑)。デザインスプリントのカスタマイズは僕が考えて、ファシリテイトも、みなさんの議論を引っ張って時間通りに終わらせたり。そもそも時間が足りない中で成果を出し1週間をまとめきるというのが責務だった。時間が押して、やる必要があったことができなくて、明日に持ち越しになってしまう。そうなると明日やる分何を削ろうか。これが毎日、その日ごとにおきて。

惠島:夕方にデザインスプリントが終わってメチャクチャ疲れている状態でまた作戦会議を開いて考えなきゃいけなかったよね。

武藤:メンバーのみなさんが、1週間で何も学びがなかったら僕の責任だと思っていました。それが辛かった。

―― もう一回やれと言われたらやりますか?

武藤:はい、是非やりたいです!(笑)

―― それはよかった(笑)どこがよかったのでしょうか?

武藤:とにかくユーザーのために作っていることが楽しいです。発注者・受注者の関係ではなくて、ひとつのチームとしていいものをつくろうということができる。そこがよかったです。

惠島:このようなユーザー重視の開発手法を、今後はNSSOLが従来行っている、エンタープライズ向けシステムの開発でも広めていきたいと思っています。

NTTドコモ様よりコメントをいただきました。

株式会社NTTドコモ
サービスデザイン部 主査
兼岡 弘幸様

今回、私がプロダクトオーナーを務めましたが、NSSOLのみなさんのリードで楽しく気持ちよくプロジェクトを進めることができたことがとても印象的です。NSSOLからは提案をたくさんもらいましたが、どれもユーザーにとっての、よりよいサービスをつくるための提案でした。まさに一緒に「memory u」をつくりあげたと思っています。「memory u」のブラッシュアップの話もでています。次もまたNSSOLのこのチームと組んで進められたらいいなと思っています。

株式会社NTTドコモ
サービスデザイン部 主査
原 美咲様

デザインスプリントでは、NSSOLのチームビルディングのおかげで、最初から誰とでも対等に意見を言い合える雰囲気をつくってくれました。スプリント中は時間に追われて大変でしたが、サービスをいちからつくり出せたことからは多くの学びがあり、自分自身が成長できる貴重な機会だったと思います。みんなでつくりあげた「memory u」に対しては今でも深い愛情を感じています。振り返ってみても本当に楽しいプロジェクトでした。

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