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2020-11-12 DX
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freeeが進める金融機関とのAPI連携プロジェクト、NSSOLとの協業チームはどう乗り越えたか?

会計や人事のクラウドサービス「freee(フリー)」を展開するfreeeが掲げるのが中堅・中小企業における業務の自動化だ。そのための重要な機能の1つが金融機関の口座と連携した仕分けや消し込みの機能である。その連携方法が、2018年の改正銀行法施行により、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)連携への切り替えが不可欠になった。移行プロジェクトを立ち上げた同社は、日鉄ソリューションズ(NSSOL)をパートナーに取り組んできた。完了間近のプロジェクトの課題や成果について、プロジェクトチームの主要メンバーが語った。

―クラウド会計サービス「freee(フリー)」は昨今、毎日のように金融機関とのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)連携を発表されています。このAPI連携はfreeeにとって、どんな意味をもつのでしょうか。

土佐 鉄平氏(以下、土佐):freee CIO(Chief Information Officer)の土佐 鉄平です。当社は中堅・中小企業の業務の自動化を支えるために、会計や人事などクラウドERP(統合基幹業務システム)を提供しています。その中核にあるのが、創業当初から提供している法人向けクラウド会計サービスの「freee」です。経費精算や請求書作成といった種々の機能を提供しています。無料版もありますが、有料契約を結んでいる顧客数は全国で22万事業所に達しています。

freee CIOの土佐 鉄平氏

企業では、お金の動きを把握するために、経理担当者が日々、費目の仕分けや記帳などを処理しています。そうした「必ずやらなくてはいけない会計作業」が少なくありません。中堅・中小企業では今も預金通帳を持って銀行に出向き記帳したりされていますが、金融機関と連携しているfreeeなら、PCやスマートフォンのボタン操作1つで完了できます。機械学習によって過去の明細履歴から該当項目を推測し、自動的に仕分けする「自動で経理」といった機能も提供しています。

この金融機関との連携について、銀行法が2018年6月に改正・施行されたことで、当社と金融機関のデータ連携方式をAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)経由に切り替えなければならなくなりました。しかも切り換えのタイムリミットは2020年5月までと、わずか2年足らず。そこで日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)に協力を依頼して、システム変更の取り組みをスタートさせました。

―データ連携方式の変更は具体的には、どのような修正が必要なのでしょう。

長幡 陽太氏(以下、長幡):freeeプロダクト基盤本部 コアエンジンチームでプロジェクトリーダーを務める長幡 陽太です。会計freeeと金融機関の連携はこれまで、スクレイピングという技術を用いていました。今回の改正銀行法は、よりセキュリティを高める目的でAPIへ移行すべしとしたものでした。

freee プロダクト基盤本部 コアエンジンチームの長幡 陽太氏

会計freeeが連携している金融機関の数は1000以上です。これら、すべてに対応できなければ、金融機関の口座からデータを取得できなくなり、「取引情報の記帳などを自動化し、会計業務を大きく効率化する」という会計freeeの一番のメリットを提供できなくなってしまいます。

加えてAPI化には、情報セキュリティの堅牢化や処理スピードの大幅な短縮といった、会計freeeの顧客にとって重要なメリットもあります。APIの取り決めに沿うことで、より確実にデータを取得できるというサービス品質の向上にもつながります。

こうした観点から社内では、法改正以前からAPIへの移行を検討していました。その意味で法改正は、それまでの検討成果を実行に移す恰好の機会になったとも言えます。

freeeのシステムの経験豊富なNSSOLとの共同開発チームを編成

―このプロジェクトのパートナーに、NSSOLを選んだ理由はどこにあったのでしょうか。

長幡:NSSOLには以前から、連携先の銀行向けサービスの開発を委託していました。そこでは、多くの金融機関との連携技術やドメイン知識などを共有していたので、今回も経験豊富なパートナーとしてともにAPI連携に取り組みたいと考えました。
何と言っても連携先の金融期間の数が圧倒的に多いだけに、外部のサポートが必要でしたし、開発後の運用を含めたパートナーが必要でした。

浅羽 義之氏(以下、浅羽):freee執行役員 プロダクト基盤事業部長の浅羽 義之です。当社では開発言語にRubyを使っています。そのため常に「Rubyをちゃんと書けて、すぐに動ける人材の確保」は重要課題です。

freee 執行役員 プロダクト基盤事業部長の浅羽 義之氏

そうしたところに、NSSOLから、「(Ruby人材の育成に力を入れている)島根県に、ある拠点を立ち上げるために大勢のRuby要員を確保している」(※)という情報が届いたのです。「それなら是非、API連携のプロジェクトも一緒に手伝ってほしい」となり依頼しました。

Rubyが重要な決め手ですが、金融面での知識や技術については、過去の業務実績から全く心配していなかったこともあります。

※)Ruby発祥の地 島根県の地元IT企業との取り組み記事
「島根県出雲市で地元のIT企業が連携して、小学校にプログラミング出前授業を開始」

自立したエンジニア同士によるチームワークでプロジェクトを推進

―NSSOL側としても、今回のプロジェクトには人選に配慮されていると聞きましたが、具体的にどのような人選をされているのでしょうか。

間所 藤孝氏(以下、間所):NSSOL 流通・サービスソリューション第一事業部 システムエンジニアリング第二部グループリーダーの間所 藤孝です。今回のプロジェクトでは、高いシステム品質が要求され、かつ日程が限られた大規模だったため、かなり“できる”人材を厳選して臨みました。

NSSOLサービスソリューション第一事業部 システムエンジニアリング第二部 グループリーダーの間所 藤孝 氏

具体的には「自らが判断して動ける人」です。いわゆるシステムエンジニアには“指示待ち”なところがありがちですが、自ら仕事を理解し、何が必要かを判断しながら、ただ勝手に進めるのではなく、常に上長や他のメンバーに確認を取りながら、行程全体の最適化に目を配れる技術者を選んでいます。

千葉 諒太郎氏(以下、千葉):NSSOL 第二部エキスパートの千葉 諒太郎です。私はこのプロジェクト発足前からfreeeの皆さんとお仕事をさせていただいているのですが、チームメンバーには、「自立したエンジニアとして仕事に臨むのだという意識を持ってほしい」と常に話していました。

NSSOL流通・サービスソリューション第一事業部 システムエンジニアリング第二部 エキスパートの千葉 諒太郎氏

一般に受注型のシステムインテグレーターでは、どうしても顧客からの指示を待ちがちです。正直、NSSOL自身にも以前は、そうした傾向に陥ることが、しばしばありました。

しかし、ここ数年はベンチャー企業などアグレッシブな顧客と共に動く中で、私たちのマインドも大きく変わってきており、今では指示待ちの人を探すのが難しくなってきています。

もちろん今回のプロジェクトでは、freeeの皆さんにNSSOLの強みを認めていただきたいというエンジニアとしての意気込みもありました。

下川 達也氏(以下、下川):NSSOL第二部エキスパートの下川 達也です。私もPMの1人としてマネジメントに携わりましたが、メンバー本人が自分で解決しようと思えるようなアドバイスを心がけました。

NSSOL流通・サービスソリューション第一事業部 システムエンジニアリング第二部 エキスパートの下川 達也氏

たとえば、何か問題が起きてメンバーから「ここがわからない」と聞かれた際は、もう少し本人が調べれば解決できそうなら「こういう視点で考えてみてはどうか」といったサジェッションを出すとかです。

もちろんPMとしては、メンバーに任せつつも不測の事態に備えて目を配っておく必要はあります。特に今回は、非常に多くの金融機関とやり取りする必要があり、期限があるだけに、時間がかかる工程を見越して先に取りかかるとか、エンジニアが手を止めずにすむように、業務全体を常に考えながら調整していました。

―両社ではチームとしてプロジェクトをどのように進捗管理されたのでしょう。

長幡:開発チームはfreeeの社員チームと、NSSOLの業務委託チームに分かれていましたが、全体の統制を取るために各種の情報は全員で共有できるようにし、2人1組のユニットをいくつも作って、それぞれが開発を進めるスタイルを採りました。

私がPMとして全体を取りまとめる立場にありましたが、規模と納期の面からは、とても1人ではすべてを見られません。NSSOLの間所さん、千葉さん、下川さんにもPMをお願いしました。彼らから現場の報告を受け、私が全体を見ながら調整しました。

作業効率を高めるために、作業は各チームに任せ、そのチェックを会計業務を熟知しているfreeeの社員が担当するようにしました。これは、NSSOLのチームメンバーに過去、当社でのシステム連携の開発経験があり、自走型で作業を進められるからこそ実行できたワークフローです。

実は私は、他の人に作業を委譲するのが、あまり得意でありません。そこを下川さんがくみ取ってくれ、現場への仕事の割り振りを担ってくれました。発注側、業務委託側という立場を超えて、必要なところを必要な動きでサポートしてみせる姿勢には、素直に尊敬を覚えたほどです。

会社の枠を超えたパートナーシップを目指してさらに成長を

―APIへの移行は2020年5月までの期限が少し延長されていますが、今後は開発から運用・保守、機能改善・追加のフェーズに移っていきます。今後の展望などをお聞かせください。

長幡:この先、NSSOLへの、さらなる委譲の可能性を感じています。メンバーが自律的だからこそ、お願いできる仕事の幅も、さらに拡がっていくのではないかという期待です。
今回のプロジェクトを通じて、NSSOLのメンバーが期待通りの成果を挙げてくれ、そこに信頼感が育ち、「この人なら次はここまでお願いしてもうまくやってくれるのではないか?」という期待のサイクルが生まれています。

一般に業務委託では、お願いできる仕事の範囲が、どうしても限られます。ですが、NSSOLとなら、コラボレーションの一部分を完全に任せる体制を作れる気がします。それが実現できれば、チームとして、もう一回り成長できると思っています。

浅羽:freeeはまだまだ成長途上にあり、トライしたいことが山のようにあります。加えて、当社サービスも含まれる、金融SaaS(Software as a _Service)の領域では、お客様からの支援要請や課題が次々に増えています。

そこをキャッチアップしていくことが当社のミッションだと思っていますが、社内だけではエンジニアのリソースは限られています。

それだけに、企業間という関係を超えて、世の中のニーズを解決する仕組みが構築できれば素晴らしいと思います。

間所:ご期待の大きさに、かつてない責任の大きさを感じます。私たちとしても、これまでの取り組みを通じて、freeeの業務に対する理解度は「どこにも負けない」と密かに自負しています。今後も、色々な課題の解決をお任せいただきたいと願っています。

土佐:当社の開発プロジェクトには、「確定申告」とか「税務調査」など金融特有の、シーズンによって納期が厳しいものがあります。それでも今回のプロジェクトほど大規模かつ納期が絶対に動かないというケースは、かなり珍しい。

その意味で、“あうん”の呼吸で任せられ、かつRubyにも熟練しているNSSOLの支援がなければ、かなり厳しい状況になっていただろうと思います。

浅羽:NSSOLは、私達と同じ方向を見ていて、一緒に進んでいってくれると信じています。これからも良い関係を続けていければ嬉しいですね。

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