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NSSOLテック・コラム

DevOps

2017/01/19

ビジネスの価値を高める ~DevOpsが切り拓く次世代のシステム開発~

昨今、経営テーマの一つになっているのが「生産性の向上」です。労働人口の減少や経済のグローバル化の進展など、抜本的に働き方の変革を促す要因もあって、多くの企業が対応に迫られています。

そんな中、注目を集めているのが「DevOps」です。DevOpsとは、「開発(Dev)」と「運用(Ops)」を組み合わせた造語で、システム開発の現場で誕生しました。開発チームと運用チームが密接に連携を取り、システムの健全性とビジネスの価値をより高めていこうとする考え方で、多くのエンジニアから関心が向けられています。

こうした背景を踏まえて、当社(NSSOL)のITインフラソリューション事業本部に所属する中山貴尋さんが、書籍『DevOps導入指南 Infrastructure as Codeでチーム開発・サービス運用を効率化する』(翔泳社)を出版しました。執筆の経緯やDevOpsが持つ可能性、そしてエンジニアに及ぼす影響などをお伺いしながら、DevOpsがもたらす未来について迫っていきます。

DevOpsが変えるシステム開発の現場

まずは中山さん達が、本書を執筆した経緯について教えてください。

実を言うと、当初は別のテーマでの執筆を考えていました。現在、私は開発現場で「Ansible」というツールを活用して、仕事を進めています。Ansibleとは、システムの開発現場で使用される構成管理、作業自動化ツールです。特徴として最小限の手間でサーバ作業を自動化し、面倒なサーバ構成管理を単純化できるため、多くの開発現場で導入が進んでいます。

こうした注目度の高まりもあって、最初はAnsibleに関する書籍を執筆する予定でした。しかし内容を突き詰めていくと、Ansibleだけでは説明が不十分になる箇所が出てくることに気がつきました。ツールの力を最大限に引き出すためには、もっと働き方全般に及ぶ大きな内容にしなければいけなかったのです。そこでテーマをより大きくDevOpsに変更して仲間と書籍にまとめることにしました。

そもそもDevOpsとは、どのようなものなのでしょうか。

DevOpsとは、開発と運用が密に協調して、ビジネスの価値を高める働き方や文化を指します。2つの言葉が組み合わさった言葉で、Devは開発という意味がある「Development」を略した言葉であり、Opsは運用と訳す「Operation」の略語です。

初めてDevOpsが注目を集めたのは、2009年までさかのぼります。おそらく似た手法は当時いくつかの企業でも導入されていたものと推測しますが、Flickr社が「Velocity 2009」というイベントで「10+ Deploys Per Day: Dev and Ops Cooperation at Flickr」という発表したことにより、認知度が一気に高まりました。その後、この発表を含めて日本にも徐々にDevOpsが伝わることになり、現在では多くの開発現場で話題となっています。

なぜDevOpsの手法が必要なのでしょうか。

開発現場では、それぞれの立場の違いから、開発チームと運用チームの意見がぶつかり合うケースも珍しくはありません。開発側は新しいシステムを早くリリースしたいと思っている一方で、運用側はいかに安定的に稼働させるかに意識が向いています。仕事の方向性が違うため、どうしても主張のすれ違いが生まれてしまうのです。

また、お互いのタスクが見えないことも、円滑な意思疎通を妨げる要因となっています。その結果、意見のすり合わせに時間を取られて、プロジェクトが滞ってしまうことも少なくありません。

しかし、こうした開発チームと運用チームのすれ違いが本質的に避けられないものかというと、決してそんなことはないと考えています。お互いに同じ企業に属する仲間であり、企業全体では「ビジネス価値の向上」を目指して働いているはずです。ゴールは同じでありながら、手段の違いやコミュニケーション不足からチームのすれ違いが発生してしまうのです。

こうした状況を改善して、互いに同じゴールを目指す環境を作れるのがDevOpsです。本書でも触れている通り、DevOpsは「抽象化」や「継続的インテグレーション」などの技術的側面と、「共感」や「可視化」などの文化的側面によって形成されています。技術的なものを含め、これらが目指すところは「同じものを見て一緒に仕事をする」ことにあります。「同じゴールを見る」「同じコードを見る」、このようにしていくことで双方の理解が深まり、新しく生まれるビジネスニーズにも迅速に応えられる働き方が醸成されていきます。

組織や文化を変えて、ビジネスを変革させる

書籍の中で、特に読んでほしい章はありますか。

第1章と第6章が、特に重要だと感じています。第1章は「DevOpsを知る」というタイトルで、基礎的な知識の解説をしました。この中でも、「どのようにDevOpsが誕生したのか」を知ることは、DevOpsが効力を発揮するポイントを意識するための重要な手がかりになると思います。

第6章は「組織とチームの壁を越えるDevOps」というタイトルで、どのようにしてDevOpsを組織に導入していくかのステップを紹介しています。そもそも、DevOpsを導入するためには組織やそこで働く人の考え方を少なからず変えていかなければなりません。なぜなら、働き方の変化に合わせて文化も変えていかなければ、定着させることができないからです。トップダウンで採用しても現場に根付かずに、かけ声倒れになる可能性があります。現場レベルで一つずつ課題を解決していきながら、それぞれの会社の状況に合わせて、徐々に導入していく姿勢が欠かせません。

組織文化を変えることは、そんなに重要なのでしょうか。

実を言うと、DevOpsは短期的に見た場合、失敗が起こりやすくなったり、現場の負荷が高くなったりすることがあります。これまでの仕事のやり方を変えるため、過渡期においては上手くリレーションが取れないなど、「産みの苦しみ」を味わうシーンが出てくる可能性があるのです。もしDevOpsを銀の弾か何かだと思っているとすれば、その時点で定着を諦めてしまう人がいるかもしれません。

だからこそ、まずは組織文化そのものを変えなければいけません。失敗に対する前向きな姿勢や相手を尊重する気持ち、信頼関係、非難をしない姿勢などがあってはじめて新しいものを定着させることができます。その上で先に述べたような技術的な抽象化や自動化、共通化にチャレンジしていくことが、DevOpsの最適な導入プロセスとなります。

組織で一斉に取り入れられない場合は、どうすればいいでしょうか。

確かに、プロジェクトごとにメンバーが変わる現場など、導入が難しいケースもあるでしょう。しかし、本書の第2章にも項目を設けましたが、DevOpsは少ないメンバーでもその第一歩を踏み出すことも可能です。まずは自分の仕事に対して様々なツールを試しつつ、メンバーへの共有などを通じて徐々にその輪を広げていくことができます。

一旦、そうした考え方やツールを取り入れる流れができれば、さらに多くのメンバーが興味を持ち始めるようになることでしょう。DevOpsが本当の価値を生み出し始めるには、組織文化を変えなければならないため、現場の雰囲気を見ないで一気に導入しようとするなどやり方を間違えてしまうと大きな抵抗にあう可能性があります。しかし、個人からチーム、そして組織へと段階を踏んで、メンバーが効果を実感しながら少しずつ導入していくことも効果的なアプローチだと考えています。

日本のIT業界を変えるインパクト

DevOpsが上手く機能すれば、どのような効果を期待できるのでしょうか。

DevOpsの導入によって開発や運用を含めた組織全体の生産性が上がり、ビジネスの価値をより高めていくことが可能になるでしょう。日本のIT業界は長時間労働が慢性化している傾向がありますが、DevOpsを導入することで、そうした状況も改善できるかもしれません。

現在、実際にDevOpsを取り入れることができている企業は10%にも満たないと言われています。導入を検討している企業が一定数ある一方で、そもそもDevOpsというものを知らないという企業はまだまだ多いという調査結果があります。DevOpsの導入以前に、そもそもDevOpsが何であるのかという周知を含め、定着させるまで一筋縄ではいきません。しかし、導入が成功した後は目先の業務改善にとどまらず、新しいチャレンジへの可能性を含め、経営にも大きなインパクトを与えることができるでしょう。PDCAサイクルを回しながら、少しずつ改善を重ね、より多くの現場で生産性の高い働き方が定着していけばいいと思っています。

中山さんご自身の今後のビジョンについて、教えてください。

企業が取り扱うシステムによっては、DevOpsと相性の良さそうな企業がある一方、その逆に一見相性がよくなさそうな企業もあります。しかし、DevOpsとはその名が示す通り、「開発と運用が密に連携してビジネスの価値を高める」ことが何よりの目的であり、それはどこの企業においても確実に価値のあるものです。様々な業種において開発から運用までを一手に引き受ける当社の一員だからこそ、より多くのIT現場にDevOpsのいいところを注ぎ、私達の仕事をより価値のあるものに高めていきたいです。

本書の出版をきっかけとして、社内の方から声をかけてもらう機会も増えました。今後、共同で勉強会を開催するなどして、DevOpsのより良い在り方を一緒に考えていきながら、当社のサービスのブラッシュアップにも繋げていきたいと思っています。