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2018-02-21 DX
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「デザインシンキング」でお客様が求める真のシステムを提供

~Beyond Experience Design Center(BXDC)~

Beyond Experience Design Center(BXDC)UXデザイナー 惠島 之維さん

近ごろ、NSSOLのようなシステムインテグレーターに限らず、メーカー、コンサルティングファームなど業界の枠を超えて注目されている手法があります。「デザインシンキング」です。NSSOLでは2017年4月に、デザインシンキングのスキルを保有するメンバーを集めた専門組織Beyond Experience Design Center(BXDC)を設置しています。
入社以来デザインシンキングの推進に携わってきたシステム研究開発センター(以下、シス研)の惠島 之維さんに話を伺いました。

デザインシンキング~「人間中心」の解決策を発想

―― そもそも「デザインシンキング」とは何なのでしょう。

もともとデザイナーが新しいプロダクトを生み出す際の思考法を参考にしたことから、この名がついたといわれています。より良い製品やサービス、新しい発想、ビジネスなどを生み出すための手法であり、実現するためのスキームでもあります。

―― デザインシンキングの特徴をおしえてください。

デザイナーは何かモノを作るときに、ユーザーをよく観察して、どういう時に大変そうにしているのか、どういうことに困っているのかを見つけてユーザーに共感する。そうしたことを通してより深いユーザーのニーズを理解し、それをもとに実際にモノをつくってみて、それをユーザーに使ってもらい、また観察して更に改良していくということを繰り返していきながら完成させます。
このように「人間中心」に解決策を発想することが大きな特徴だと思います。

―― システム開発においても「人間中心」に問題を解決するということですか?

はい。システム開発というと、どうしても機能の設計が中心になりがちで、その機能に合わせて画面もつくられます。そうなると実際にシステムを使うユーザーにとって使いにくいということが結構あります。「人間中心」のシステム開発というのは、ユーザーの視点からあるべき業務フローや画面の流れを考えて開発していくことで、結果としてユーザーにとってとても使いやすいシステムなります。

図1

―― 「ユーザーの視点から」というのはよく聞きますが、従来の方法とどうちがいますか。

先ほども言ったようにデザインシンキングは、ユーザーの行動や感情までを詳細に観察することで、より深いユーザーニーズを探り、それを理解することをめざします。こうした点は今までのシステム開発にはない手法です。

―― 具体的にはどのように進めるのでしょうか。

全体プロセスは図2をみていただくとわかりやすいと思いますが、「理解・共感」「問題定義」「発想」「具現化」を納得のいく成果物を得るまで繰り返します。

図2 デザインシンキングの反復プロセス

―― 最初の「理解・共感」では具体的に何をするのでしょうか。

キーパーソンへのヒアリングとともに、ユーザーの現場に行ってユーザーの行動を観察します。この行動観察は「エスノグラフィー」と呼ばれる手法で、ユーザーの普段通りのありのままを深く理解するために行います。

―― 行動観察とシステム開発とがあまり結びつかないのですが、エスノグラフィーをする理由はなんでしょうか?

ヒアリングだけでは聞き出せない隠れたニーズを見つけるためです。
ユーザーのニーズの中で、自覚しているニーズ(顕在化ニーズ)というのは図3のように氷山の一角でしかありません。意識していないニーズ(潜在ニーズ)は自分でも気づいていないことが多いのです。人の行動の大半は無意識におこなわれていて、無意識の行動には潜在ニーズが表れやすいとされていることからエスノグラフィーを取り入れています。

図3 ユーザーの潜在ニーズに注目

―― 潜在ニーズを理解することでの効果は?

ヒアリングとエスノグラフィーを組み合わせることでユーザーの本音の全体像を捉えることができ、課題解決に役立つ気づきを得ますし、それが要件定義の品質の向上にもつながります。

―― なるほど。その後はどのようなことをするのでしょうか。

ユーザーや我々のようなデザインシンキングの専門家など6~8人程度でワークショップを開きます。
まず、リラックスした状況で「本質的な問題は何か」を本音で話し合い「問題を定義」していきます。この時、特にユーザーの感情が重要で、ネガティブな感情があるところには何か問題がある可能性があるので注意深く検討していきます。こうした過程で出てきた問題に対しての解決策をたくさん出していくのが「発想」アクティビティになります。その後、問題解決策に沿ってあるべき業務フローやUX、システムの画面イメージなどを固めて、手書きのワイヤーフレームやプロトタイピングで目に見える形にするのが「具現化」です。

本質的な課題を探し出しイノベーションをおこす革新的システムを生む

―― このサイクルを納得のいくまで回していくのですね。では、デザインシンキングを取り入れて効果のあるシステム開発案件というのはどういうものでしょうか。

近年は、新しいビジネスモデルやテクノロジー、デバイスなどが次々と出てきていますが、企業がそれを取り入れようとしても、どうシステム化したらよいのか分からない場合があると思います。
実際に私たちもお客様から「ビジネスとしての要件をはっきり伝えられない」、「どのようなシステムであるべきか提案をしてほしい」といった要望をいただきます。
このような案件の時に要件定義かその前の段階でデザインシンキングを取り入れると効果的です。

―― どういう効果が期待できるのでしょうか。

先ほど述べたように現場でよりよく機能するシステムの要件を具体化できるほかに、イノベーションをおこす革新的システムを生み出したりすることもあります。

―― デザインシンキングを取り入れると時間がかかるということはないのでしょうか。

新しい取り組みのためお客様の要件が固まりきっていないような案件では、従来の開発手法であるウォーターフォール型開発で進めていったなら、上流工程で曖昧さが残り下流工程で手戻りが増えてしまいます。また、業務改革は常に変化が伴うので、要件定義後に生じた変化を反映できるのは次の開発フェーズになってしまいますので、お客様に最適なシステムを提供できるまでに時間がかかってしまうことになります。その点、デザインシンキングは素早く改善サイクルを回していくので結果的に短時間でお客様に最適なシステムを提供できることになります。

BXDCとして研究を体系化。本格的にサービス提供開始

―― NSSOLの「デザインシンキング」への取り組みはいつ頃からですか。

Windows8が登場し、各種デバイスの操作がユーザーの感覚に重きを置かれるようになった2012年頃からです。当時、シス研では「UX(user experience)」というキーワードでなにかできそうだということで研究を始めました。2017年にはそれまでの研究を集大成してシス研内に「Beyond Experience Design Center(BXDC)」を組織しました。
BXDCは組織の名前であるとともに、私たちが独自に開発した「プロセス」「モデリング手法」「プロトタイピングフレームワーク」といったデザインシンキングをシステム開発に適用したツールの総称でもあります。このBXDCを用いて、私たちUXデザイナーがお客様といっしょにお客様の業務を変革していく支援をしています。

図4 BXDCプロセス

―― BXDCは若手が中心でチームワークも良さそうですね。

はい。とてもいいですよ。今一緒に働いている仲間がいるからこそ日々楽しく、仕事に打ち込めているのだと思います。30歳前後の若いメンバーなので、気兼ねすることもありません。ただ、自分の意見を言い合う風土なので、衝突することもあります。でもそれは、よりよいシステムやサービスを開発し、お客様や未来の暮らしをよりよくしたいという想いがあるからこそ。お互い納得すればあとはスッキリです。

―― 次回は事例の話などを聞かせてください。ありがとうございました。

BXDCホームページ

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