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2018-03-29 イベント
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【対談】日本最大級の学生向けハックイベントJPHACKSでNSSOL賞を受賞した入浴者見守りシステム「Lover Duck」を開発した東大生チーム×シス研エンジニア

JPHACKSの表彰式
前列4人がNSSOL賞を受賞した「Lover Duck」開発メンバー

NSSOLが協賛する「JPHACKS(ジャパンハックス)」が2017年の8~11月にかけて開催されました。参加した学生はおよそ300名。北海道、仙台などの全国6都市での予選を経て、東京で決勝ラウンドが行われました。

2017JPHACKS公式ページ

同イベントの企業賞にNSSOL賞も設けられ、システム研究開発センターの石川真也さんがその審査にあたりました。NSSOL賞に選ばれたのは東大生チームが開発した入浴中の溺死を防ぐシステム「Lover Duck(ラバーダック)」。

今回はその開発チームメンバーの一人である利光泰徳さんと石川さんの対談です。JPHACKSに参加した理由、製作秘話、参加した感想、夢などいろいろと語り合いました。

左:利光泰徳さん(東京大学工学部三年生) 右:石川真也さん(当社システム研究開発センター)

愛らしいあひるのおもちゃが入浴者を守る

石川: お会いするのは授賞式以来ですね。あの時も感じていましたが、ラバーダックの製作チームは、いい意味で学生らしくありませんでした。ソースコードから垣間見えるプログラミングスキルの高さはもちろん、プレゼンの質など、ビジネス感覚も優れていると感じました。起業しているメンバーもいるんでしたよね。

利光: はい。石川さんがおっしゃる通りで、私を除く4人のメンバーはスーパー大学生だと感じています。ベンチャー企業を設立し、スマホアプリを開発しているメンバーがいたり。即戦力のプログラマーとして企業で働いている者もいます。人工知能(AI)分野でハイレベルな研究に携わっている者もいる。

石川: 利光さんは?

利光: 私はArduino(アルデュイーノ)などの小さいコンピュータを使ってモノを作るのが好きで、今はロボット系の会社でインターンをしています。

石川: そういうハードウェアに関する技術がチームに貢献したのでしょうね。ところでラバーダックは入浴中に溺れてしまうのを防ぐシステムですよね。おもしろい視点だなと思いました。

利光: 意外と知られていませんが、入浴中に亡くなる人の数は交通事故死する人以上で、その数年間約5000人もいる。ほとんどが高齢者です。特に冬場、暖かい室内から寒い脱衣所を経て再び温かい湯船に浸かる、この一連の動作が体に負担となり、血圧は急激に上下します。その結果、意識を失い溺れてしまうようです。今でも入浴を見守るサービスはあるのですが、カメラや各種センサーを据え付ける工事をすると導入費用は安くても数十万円。100万円を超えるものもありました。

石川: なぜアヒルなんでしょう?

利光: 自分たちも画像認識は考えましたが、浴室にカメラを設置するって利用者は相当な抵抗感を感じるだろうなと思って。そうしたらアヒルが浮かんできました(笑)お風呂といえばアヒル。ハッカソンのテーマが「モノ×テック」だったこともあったと思います。

石川: 見た目が愛くるしく入浴者が嫌悪感を抱かないあひるのおもちゃを使ったのは、そういった意図からだったのですね。私が作品を見た第一印象も「かわいい」でした。

ラバーダック動画

ハードは「Arduino」。ソフトウエアは機械学習などで設計

石川: 大会では2日間で作品を仕上げなければならないルールですよね。

利光: そうです。

石川: そうした短い時間ではデザインまでなかなか手がまわらないと思います。そうした中でも見た目を大切にしたのがポイントかなと。私たちも、IoTの案件で、お客様の現場で腕時計などのウエアラブル端末をつけていただいてデータを収集するのですが、やはり身に着けて動く物だったりすると付け心地とか機能面がすごく重視されます。こういったこともあり利光さんたちがプロダクトとして仕上げてきたところを特に高く評価しました。

利光: ありがとうございます。ただそれほど難しくなかった、というのが正直なところです(笑)。あひるに搭載しているハードウェアはArduinoで、加速度センサー、Bluetoothモジュール、LEDなどを搭載しています。私のWebサイト(リンク先:https://yasu31.github.io/)にもいくつか紹介しているのですが、普段からこの手のデバイスをよく使っていましたから、特に技術的な問題はありませんでした。あえて挙げるとすれば、いかに小型化するかでしょうか。試作などで使うブレッドボードではなく、実際に使う電子基盤にはんだ付けすることでクリアしました。

石川: このLover Duckの仕組みを教えてもらえますか?アヒルは浮かべておくだけでいいのですよね?

利光: そうです。お風呂に入れるとアヒルが揺れるので、その揺れを加速度センサーで感知してX方向、Y方向、Z方向の値をそのままBluetoothでパソコンに送ってその揺れがどういうものかの分析にかけます。分析結果はパソコンからサーバに送られて、「お風呂に入りました」「溺れています」といった情報を家族などのスマホに送る仕掛けになっています。

石川: 揺れの分析は機械学習ですか?

利光: はい、AIに強いメンバーがアルゴリズムをつくりました。

石川: 精度を出すのが難しいですよね。静かにお風呂につかっていたら意識がなくなっていると勘違いされたり。

利光: そうです。そのAIに強いメンバーが予選から決勝までの二週間、毎日アヒルをお風呂に入れていろいろなデータを取って、いくつものアルゴリズムを駆使して精度を高めました。

石川: なるほど、微妙な揺れを区別できるようにするのはすごいですね。

イベントを通じて得たこと学んだこと

石川: 私はふだんWeb関連の研究に携わっているので、特にWebシステム側のコードをじっくり拝見しました。JavaScriptのモダンなフレームワークを使いこなしていたので、その選定理由などを聞きましたが、答えも明確で。開発の時間が限られた中でコミットログもしっかり書いていて、かなりのレベルにある、と感じました。

技術的なハードルは高くなかったとのことですが、イベントを通じて得たこと。学んだことはありましたか。

利光: 繰り返しになりますが、人工知能に強い者。バックエンドの技術が得意なメンバー。動画や映像などプレゼンに必要なスキルに長けている者など。メンバーそれぞれの得意分野が違っていたことが、とても勉強になりました。

実務レベルでコーディングしている仲間のプログラミングを見られたことも大きかったですね。動けばよい、という趣味レベルでのプログラミングとは違い、デプロイして使われることを意識したコーディングだったからです。

またAPIなどエコシステムの便利ツールを多く知ることができたのも収穫でした。ラバーダックの紹介ページでも使用している「GitHub(ギットハブ)」もその一つです。プログラマーのSNSと言われているだけあって、コミュニティに参加することで、他のプログラマーのコードが見ることができ、大変ためになりました。自分のコードを公開することで他の方からの意見が聞け、プログラムの視野が広がったとも感じています。

もうひとつ。これも繰り返しになりますが、大学以外のフィールドで活躍しているメンバーからの刺激も大きかったです。大学生は勉強だけしていればいい、ということはなく、興味を持ったこと、やってみたいことは、どんどんチャレンジしていくべきとの姿勢を学びました。

SIであれば隅から隅までものづくりに携われると知った

石川: ところで、NSSOLの印象を聞かせてください。そもそも当社のことは知っていましたか。

利光: 新日鐵住金さんは世界的な鉄鋼メーカーですから、そのグループ会社ということで、名前は知っていました。ただ正直なところ、どんなビジネスを手がけているかまでは知りませんでした。そもそもSIという業種が、具体的に何をしているかが分かりませんでした。

石川: SIって何をしているか分かりづらいですからね。

利光: 名前の通り何かをインテグレートしていると思っていました。言い方はあれですが、ハードウェアやソフトウエアを集めてきてセット販売するような事業を手がけていると思っていました。でも今回、賞をいただくにあたりNSSOLさんのことを調べたら違っていました。コンピュータシステムをお客様といっしょに一から考えて開発していく企業なんだと知りました。石川さんが所属している研究所(システム研究開発センター)にも興味をもちました。中でも人の動きに連動するテレイグジスタンス型ロボットの研究開発です。

テレイグジスタンス型ヒューマノイドロボット「5G FACTORYⅢ」の開発舞台裏

石川: 今ロボットの会社でインターンをしているとおっしゃってましたね。将来的な夢はロボット研究者ですか?

利光: ロボットだけでなく宇宙工学にも興味があるので、両方の勉強をしていきたいと考えています。今はアメリカのマサチューセッツ工科大学で学ぶことを目標にしています。アメリカには宇宙開発で先端を走る企業スペースXもありますし。アメリカで学び、一人前の研究者やエンジニアとなり、人類が宇宙に進出する力になれれば、と考えています。

石川: 壮大な夢ですね。ぜひ実現してください。最後に何か当社に聞きたいことなどありますか?

利光: これまでの私のものづくりは、あくまで趣味レベルでした。しかし社会で活躍するエンジニアになるには、それだけでは足りないと感じています。ふだんどのような意識で仕事に向かい、ものづくりに臨んでいるのか。そのあたりのマインドをお聞きしたいなと思っています。

石川: 会社で仕事として開発をするようになって意識が変わったところは、「コードを引き継ぎ、保守する人の視点」が加わったことだと思います。私はhifive(https://www.htmlhifive.com)という、HTML5を活用した業務Webアプリ開発のためのプラットフォームを作るチームにいますが、hifiveがターゲットにするような基幹業務システムは一度作ったら5年、10年と長きに渡って保守し続けることも珍しくありません。
hifiveを使ってシステムを開発・保守する人達が5年後、10年後に困らないように、注意深くインターフェースを設計したり、テストやドキュメントも重視して開発しています。
とはいえ、今でも仕事を進める原動力となるのは、自分のイメージが形になって動いた瞬間の達成感・ワクワク感だったりもします。その感覚は利光さんもわかると思いますが、ぜひこの先も大切にしてほしいです。

利光: はい、そうですね。今日はありがとうございました。

石川: こちらこそ。

人事本部 人事部 島田 菫

NSSOLは毎年、JPHACKSに協賛しています。毎年学生の新鮮なアイディアを楽しみにしています。

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