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2015-11-12 サステナビリティ
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クリスマスの夜はジャズの魔法にかけられて

NSSOL協賛「紀尾井クリスマスコンサート」

今年、新日鉄住金ソリューションズが協賛するコンサートは、「紀尾井クリスマスコンサート2015」。今回は紀尾井ホール設立20周年を記念したジャズコンサートです。「サッチモ」の愛称で親しまれるルイ・アームストロングの曲を中心にジャズの原点であるニューオーリンズ・ジャズの魅力をたっぷりお届け致します。

「本物の音」や「伝統」を大切にする紀尾井ホールでサッチモの世界は私たちにどんな魔法をかけてくれるのでしょうか?

紀尾井ホールを運営する公益財団法人新日鉄住金文化財団 制作部長・山口真一さんとチーフマネージャー・稲辺三幸さんにお話を伺いました。

「本物の音」を聴くために造られた音楽ホール

公益財団法人新日鉄住金文化財団
制作部長 山口真一様

公益財団法人新日鉄住金文化財団
チーフマネージャー 稲辺三幸様

―― 本日は紀尾井ホールで初めての開催となるジャズコンサートのお話を伺っていきたいと思います。

山口さん:御社には毎年、紀尾井ホールの主催コンサートにご協賛いただきましてありがとうございます。おっしゃるように今年は「ジャズ」です。

―― では、まず最初に、紀尾井ホールについて教えて下さい

山口さん:紀尾井ホールは、旧新日鉄(現 新日鐵住金)の創立20周年記念事業として1995年に四ツ谷にあった旧新日鉄所有の紀尾井寮跡地に建設された音楽専用ホールです。おかげさまで、質の高いクラシック専用の中ホールと邦楽専用の小ホールをあわせ持つユニークな存在として国内外から高い評価を受けております。また、ホール付きオーケストラである「紀尾井シンフォニエッタ東京」も運営しています。

―― それぞれのホールにはこだわりがあるとか?

山口さん:本格的なホールが上下に積み重なった建築物は珍しく、高度な技術が凝縮されており、またホールの生命である音響に細心の注意が注がれています。
まず、中ホールは音楽ホールの原点と言われる『ウィーン楽友協会ホール』のシューボックス型(直方体)を採用し、開館当時国内にはあまりなかった800席の中規模ホールとしました。このホールでは音が豊かに共鳴するので観客と舞台がひとつになれるのではと思います。

稲辺さん:お客様との一体感があるのが特徴なんですよ。

シューボックス型の中ホール

山口さん:小ホールは250人席の邦楽専門ホールですが、このような専門ホールも国立劇場以外にはありません。そして、このホールは邦楽の演奏に適した「音が響かない」構造となっています。

―― 音が響かない?

山口さん:石造りの建物や教会など音が響く空間の中で発展してきたクラシック音楽に対し、木造建築の中で演奏された邦楽は、音が響かない環境で発展してきたという特徴があります。江戸時代に庶民が住んでいたのは木造の長屋、壁を仕切っているのはふすまや障子でした。武家屋敷にしても庭と一体のような造りになっていました。従って、小ホールは舞台形式や吸音材、屏風の位置などに工夫を凝らし、また階下の中ホールからの音も遮断する構造になっています。

邦楽専門の小ホール

―― どうしてそこまで本物志向だったのですか?

山口さん:それは、新日鉄住金という会社が、戦後間もない頃から「旧フジセイテツコンサート(後の新日鉄コンサート)」を通じて音楽支援を続けてきた歴史があって、紀尾井ホールが「旧新日本製鉄」創立20周年記念事業に相応しい象徴的な事業として計画されたからでしょう。最近、建設までに5年かけて検討してきた準備資料に目を通したのですが、その志の高さに感銘を受けました。

初めてのジャズ企画であればその源流から。だからニューオーリンズを選んだ

―― クラシック専用ホールとして有名な紀尾井ホールでのジャズ公演は、かなりチャレンジングな企画だったのでは?

山口さん:基本的にはクラシック専用ホールというコンセプトですので普段はクラシックの公演ばかりです。しかし、今年は開館20周年なので、今まで取り上げていなかったジャンルをやろうということになり、18世紀初頭の「バロックオペラ」に加え、クリスマスコンサートで20世紀初頭の「ジャズ」を取り上げることにしました。どちらも伝統というホールの文脈には沿ってはいるかなと思っています。

―― ニューオーリンズ・ジャズも伝統的な音楽ということですか?

山口さん:ジャズの歴史は短いのでそういうことになると思います。荒々しいリズムやスイング感、黒人たちの心の叫びといったジャズの原形が今でもニューオーリンズ・ジャズにあると教えられ、自分も一度だけこの発祥の地に行ったことがあります。クラシックの殿堂だったカーネギーホールで初めてジャズが演奏されたように、紀尾井ホールでも是非ジャズを響かせたいと考えていました。

稲辺さん:実は、このニューオーリンズ・ジャズは10年ぐらいで世界中に広まったというすごい伝播力を持っている音楽だそうです。今回のコンサートでは、「ジャズってなんなの?」「なぜこんなに広がったの?」「いろいろな音楽に影響を与えるのはどうして?」などに焦点を当て、ジャズの面白さに迫ろうと思っています。

悲しさも楽しさに変えた、「大きな口」のジャズの巨人

―― サッチモについて教えてください

山口さん:サッチモはニューオーリンズの貧民街で育ち、ある晩ふざけて通りで銃を放ったことから感化院に送られ、そこで「ラッパ係」を命じられたのがトランペットとの出会いだそうです。よく知られているように「サッチモ」というのは愛称で、彼の大きな口を「サッチ ア マウス!(なんて口だ!)」と言ったというのが有力な由来となっています。アドリブソロ、ブレーク、スキャットなどの現在ジャズの基本となる数々の技法を生み出し、『ワット・ア・ワンダフルワールド』や『聖者の行進』を始め数多くの名曲を世界に広めました。

―― ワット・ア・ワンダフルワールド! 素晴らしい曲ですよね!

稲辺さん:胸にジーンときますよね、彼独のリズム感とか、声とか......
ちなみにサッチモは1901年生まれですが、この年に日本では新日鉄住金の前身である官営八幡製鉄所が操業しています。そして、日本が高度経済成長を遂げた1971年に亡くなっています。こうした時代の接点にもなにか親近感と興味を持ちます。

―― サッチモは日本では人気が高いですよね。

山口さん:日本人は数々の名曲やあの声や表情でサッチモ好きが多いですね。しかしながら、アメリカでは「サッチモは本当にジャズの巨人なのか」という議論が長らくあったようです。もちろん初期のジャズプレイヤーの中ではサッチモは抜群にうまくて、彼がニューオーリンズ・ジャズの伝達者というのは間違いないところなのですが、激動の20世紀と言われる時代のなかで急速に発展、枝分かれしていったジャズの流れのなかでは、例えばジャズは黒人が生み出した芸術だととらえる人々から見ると、エンターテイナーとなったサッチモは白人や大衆に迎合したように映ったのかも知れませんね。
しかしながら、サッチモは、「音楽は楽しいもの。悲しいことさえ楽しく表現してしまおうじゃないか」という風にすべてを超越していたのではないでしょうか。アメリカでも最近ようやく「やっぱりサッチモは凄かった」という認識がムーヴメントとして戻って来ているそうです。

冬の寒空の下、心が温まるコンサートに

稲辺さん:コンサート当日は、ロビーにレコードジャケットや楽器などサッチモゆかりの貴重品を展示し、ニューオーリンズ・ジャズの雰囲気をお伝えできたらと思っています。バーコーナーにはバーボンも少しだけ用意します。

―― コンサートはどのような内容になるでしょうか?

山口さん:前半は、ニューオーリンズ・ジャズとサッチモに関する映像やトークで1900年代前半の雰囲気をお伝えしようと思っています。演奏にはニューオーリンズ・ジャズらしいプログラムを織り込みます。1910~15年ごろの古いフィルム映像も本邦初公開する予定です。
お話しいただく瀬川昌久さんは御歳91歳のジャズ評論家。ニューヨークで銀行員をしていた時にジャズに出会った方で、その頃はジャズがまだ伝播中だった頃です。自分が見てきたジャズの歴史やサッチモの巨人性などを語ってくれます。司会は長年ジャズを愛好されておられるフリーアナウンサーの露木茂さんです。

山口さん:後半は、日本におけるニューオーリンズ・ジャズの伝道師的存在である『外山喜雄とデキシーセインツ』から始まります。外山さんご夫妻は若かりし頃ニューオーリンズでジャズ武者修行をされ、実際サッチモに会われ、毎年本場のニューオーリンズに呼ばれています。
ピアニストの前田憲男さんも日本のジャズ界の大御所です。前田さんには、サッチモが世界に広めた曲やクリスマスにふさわしい曲を弾いていただく予定です。
それからもうひとり、白石信(まこと)さん、この方は知る人ぞ知るスティールギターの演奏家です。外山さんとのセッションがあります。

稲辺さん:このように、音楽だけでなく、トークや映像もある、とても豪華なイベントになっています。最後は会場みんなで盛り上がってクリスマスの幸福感を一緒に感じることができればいいなと思ってます。

そしてコンサートが終わって一歩外へ出ますよね。そこには喧噪のない静かな四ツ谷の街並みが広がっています。冬の寒風が吹きすさぶなか、何故か音楽で心がぽかぽかとあったかい・・・、私どもはそのようなクリスマスコンサートをご提供したいと思っています。

紀尾井クリスマスコンサート

12月19日(土)16:00開演
※公演チケットは販売予定枚数を終了しております。ご了承ください。

曲目

・ジ・エンターテイナー
・ハイソサエティー
・セントルイスブルース
・ワット・ア・ワンダフルワールド
・バラ色の人生
・聖者の行進 他

出演者(紀尾井クリスマスコンサート2015パンフレットより)

出演者

・外山喜雄とデキシーセインツ
・前田憲男(ピアノ)
・白石 信(スティール・ギター)
・瀬川昌久(ジャズ評論家)
・露木 茂(司会)

紀尾井ホール

新日本製鐵株式会社(現・新日鐵住金株式会社)の創立20周年の記念事業として建設され、1995年4月2日にオープン。半世紀にわたる新日鉄コンサートや、新日鉄住金音楽賞などを通じて積み重ねてきた経験を生かし、音楽家と音楽愛好家を支援するとともに、紀尾井ホールでも「紀尾井シンフォニエッタ東京」を持ち、定期演奏会を開いている。ふたつの特色ある音楽専用ホールは、その質の高さが国内外で高く評価され、これまでに多くのアーティストによる演奏会が開催されてきた。年間来場者数は約15万人。
住所:東京都千代田区紀尾井町6番5号

リンク

紀尾井ホール クリスマスコンサートホームページ
紀尾井ホールホームページ

広報・IR室 プロフェッショナル 鹿島 亜紀彦

当社では公益財団法人新日鉄住金文化財団への支援を通じて、音楽文化の振興と発展に寄与しています。2011年以来、毎年協賛コンサートを実施し、みなさまに好評をいただいています。今年の「紀尾井ホール」と「ジャズ」の意外な組み合わせを、私も楽しみにしています。

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